シンガポールでの就職完全ガイド〜ビザ取得・就職・キャリアアップのポイント〜

シンガポールは国際的なビジネスハブとして躍進を続け、就職や転職、キャリアアップの絶好の機会を提供しています。 本記事では現地ビジネス事情や労働制度、スキルアップ戦略まで幅広く解説していきます。
シンガポールのビジネス環境

シンガポールはアジアを代表する経済・金融のハブとして、国際的な競争力や安定性が高く、外資系企業の進出も活況です。 金融業界の成長やIT・製造、サービス分野も盛んで、多国籍企業の本社が集中しています。労働市場の柔軟性や雇用安定性も魅力です。
就労ビザの種類と概要
シンガポールで働くには、目的や職種に応じた各種就労ビザが必須です。代表的なビザは以下の8種類です。
| ①Employment Pass(EP) ②S Pass ③Training Employment Pass(TEP) ④Personalised Employment Pass(PEP) ⑤Work Holiday Pass(under Work Holiday Programme) ⑥Entre Pass ⑦Tech. Pass ⑧Overseas Networks & Experience Pass(通称ONE Pass) |
シンガポールのビザガイド
以下は8種類の就労ビザの特徴をまとめたものになります。ご自身に該当するものを見極め、申請の準備を行ってください。ビザの詳細・申請方法は公式サイトで詳しく解説されています。進出や転職を考える際はシンガポール人材開発省(MOM)のWEBサイトを必ず確認しましょう。
一般的にはEmployment PassやS Passによる就労が多いです。
| ①Employment Pass(EP) |
| 専門職や管理職向けのビザです。新規申請の条件として、最低月額固定給が一般業種S$5,600(金融はS$6,200)必要となります。そのほか、年齢・学歴やCOMPASSの給与加点も考慮されます。 |
| ②S Pass |
| 中技能熟練労働者向けのビザです。新規申請の条件として、最低月額固定給が一般業種S$3,300(金融はS$3,800)必要となります。更新は2026年9月から適用されます。 |
| ③Training Employment Pass(TEP) |
| 実務研修生向けで、最低月額固定給はS$3,000です。 |
| ④Personalised Employment Pass(PEP) |
| 高所得者や外国人専門家向けのビザです。最低月額固定給はS$22,500、EPより柔軟な就労が可能とされていますが、再就労時はEPやS Pass取得が必要です。 |
| ⑤Work Holiday Pass(Work Holiday Programme) |
| 18〜25歳の学生向けビザで、最大約6か月の就労・休暇が可能です。シンガポールでの就労体験がしたい方にもおすすめです。 |
| ⑥Entre Pass |
| 現地で革新技術や新規ビジネスを展開する外国人起業家向けです。 |
| ⑦Tech. Pass |
| 大手や急成長テック企業の創業者・リーダー・技術専門家向けのビザです。申請には、直近1年の月額給でS$22,500が必要となります。シンガポール開発庁(EDB)を経由することで個人申請も可能です。 |
| ⑧Overseas Networks & Expertise Pass(通称ONE Pass) |
| 2023年から導入された比較的新しいビザです。ビジネスや芸術・科学など多分野で優れた業績を持つ人向けとなっています。申請には、直近1年間の月額給S$30,000が必要で、起業と就労を同時に行える高い柔軟性があります。 |
労働法について
シンガポールの労働法は雇用主と労働者双方の権利保護、最低賃金制度、福利厚生の指針を定めています。日本の労働法とシンガポールの雇用法は大きく異なるので、雇用や就労を希望する場合はしっかりと頭に入れておく必要があります。
まず、シンガポールでは労働法制により、外国投資を誘致するために、従業員よりも会社側に有利になるよう設計されています。以下の点がシンガポールの労働法で特徴的といえるでしょう:
| ▪解雇に正当事由が不要で予告期間が守られれば理由なく解雇できる ▪労働時間や休暇、残業手当などの権利・条件が適用される範囲が限定された従業員のみとなっている ▪最低賃金法がなく、賃金は労使間の契約で決まる ▪就業規則の法的拘束力が個別労働契約より弱く、労働契約内容が優先される |
ただし、2024年には労働者保護や柔軟な勤務体制促進のために、父親育児休暇の拡充や職場公正化法の制定など、いくつかの改正が行われました。
シンガポールで働く

駐在員と現地採用では待遇や仕事内容が大きく異なります。駐在員は本社指令で現地法人に赴任、福利厚生や給与が高い傾向です。 一方、ローカル採用は現地企業と直接雇用契約を結び、職場文化への理解が重要となります。
駐在員として働く
駐在とは、日本の企業からシンガポールの支社や協力企業へ転勤する形で一定期間働くことを指します。駐在員として働く場合、日本企業の基準に基づく給与と待遇が適用されるほか、住居提供や教育費補助、海外赴任手当などの福利厚生が充実している場合が多いです。
駐在員となるには本社からの赴任指令と就労ビザが必要です。
ローカル採用で働く
ローカル採用とは、シンガポールの企業や日系・外資の現地法人が直接雇用する形態で、現地の労働法に基づき給与が支払われます。日本からの支援は基本的にありませんが、シンガポールの企業文化やビジネス環境に深く関わり、自分で滞在期間を決められる自由があります。
ローカル採用では駐在員と比べてあらゆる面で自由度が高いですが、現地文化や就労習慣に適応する力が求められます。また、現地採用の場合の就労ビザには厳格な要件が設けられているため、これらを満たすほどの充分なスペックが要求されます。
シンガポールで働くメリット
シンガポールは給与水準が高く、急成長する企業が多いのが特徴です。国際競争力ランキングでも高評価を得ています。 金融・IT分野は安定した成長が続いており、キャリアアップのチャンスが豊富です。
給与面:
シンガポールは、アジアの中でも高水準の給与が期待できる国です。2025年5月時点で、シンガポールのフルタイム労働者の月収中央値はS$5,500で、前年から約6%上昇しています。シンガポールはアジアの中でも高水準の給与体系を有し、今後も経済成長に伴って給与水準のさらなる上昇が期待されています。
日本人の就労者に関していえば、EPで少なくとも月額給与がS$5,600、S PassでS$3,300必要とされています。特にEP保持者の給与額は現地の給与中央値とほぼ同水準であり、最低でもこの金額は稼いでいることを示しています。
日本の月収中央値は最新のデータで351万円となっているため、S Passの中技能熟練労働者でもそれより100万円以上も上回っている計算になります。
安定と成長:
シンガポールは法制度の安定性と規制緩和により企業活動が活発化しており、これが高度なITインフラと物流体制によって支えられ、安定の成長サイクルを形成しています。また、インフラ面でも世界トップクラスの物流と通信環境が整っています。
さらに、近年では成長企業の台頭が目覚ましく、物流・輸送、製造、製薬、ITなど多岐の分野が急成長しています。それを象徴するかのように、スイスの国際経営開発研究所(IMD)による2024年版国際競争力ランキングでは、シンガポールは見事1位に輝いています。
金融分野の安定成長:
シンガポールの金融業界では、デジタル化やフィンテック推進政策、AIの導入を試みることで、グローバルな資金調達の効率化や高度な研究開発が促進されています。ビジネス面での多様な変化による面白さだけでなく、魅力的な投資環境でもあります。
上記の点から、シンガポールはアジアの中でも重要なビジネスハブと位置付けられており、国際的な評価ランキングでも高い地位を維持しています。
このほかにも、スタートアップ企業の税優遇制度や英語が公用語として通じることなど、キャリアアップへの道のりを大きくサポートする制度も充実しています。
スキルアップ

シンガポールの国際ビジネスの現場では英語スキルが不可欠です。ビジネス英語メールや会議での表現力を磨くためには、現地の学習方法が有効です。 またMBA取得は外資系企業で評価が高く、昇進や転職にも役立ちます。 最新情報の収集も日常的な習慣として重要です。
英語力
シンガポールのビジネスシーンでは英語力が不可欠。役立つ英語学習法は以下の5つが挙げられます。以下を意識することで、確実にキャリアアップだけでなく、スキルアップの道のりも開けてくるでしょう。
| ▪何のために英語を学ぶのかをはっきりさせ、今のレベルにあった効果的・効率的な学習を計画すること ▪自分の担当業務や専門分野に合わせた単語やフレーズを中心に学習し、実務でのインプットとアウトプットを増やすこと ▪客観的な評価を得るため、TOEICなどの英語能力試験でスコア向上に向けた勉強をすること ▪「シングリッシュ」のアクセントに慣れること ▪英文メールの書き方を覚え、フォーマルで正しい文法や定型文を意識すること |
MBA
MBAの取得は国際職場でのリーダーシップや昇進に直結し、自己投資として有効です。シンガポールのMBAプログラムはアジアでのビジネス展開やグローバルリーダー育成を意識したカリキュラムを提供していることから、現地の企業への就職が有利になるケースが多いです。
NUSやNTUのビジネススクールは、ASEANの多国籍企業や地方企業、各研究機関と強い連携を持っており、就職サポートやキャリア支援にも力を入れています。特にNUSは2023年度には9割の卒業生が3か月以内に求人オファーを受けるなど就職支援が充実しています。
オンラインMBAも近年人気です。場所を選ばず自分のペースで学べ、経済的負担が軽減される事が大きな利点として挙げられます。また、仕事や家庭と両立しやすく、急な出張や転勤にも柔軟に対応できます。フルタイムでのMBA取得が難しい人にとって非常に適したプログラムと言えるでしょう。
情報収集
シンガポールでの就職やキャリアアップを希望するなら、日々ビジネスパーソン向けのニュースに触れることが重要です。ASEAN各国の最新トレンド・業界動向を日々アップデートし続けることがキャリア形成のカギとなります。
シンガポールのニュースメディア(アプリや新聞含)は、英語や中国語の物が多いですが、Business Insiderのような日本語版のニュースサイトもあり、他のメディアと同様に、シンガポールだけでなく、世界中の最新情報を入手することができます。
人気企業・就職先

シンガポールにはアジアを代表する優良企業が多数あり、グローバル人材の採用を積極化しています。 企業の選択肢は金融系、IT系、医療、サービス系に至るまで幅広く、就職サイトで詳細情報を比較できます。
優良企業
シンガポールの多くの企業が、ITや技術開発で世界をリードし、積極的にグローバル展開を行っています。大半が持続可能性に取り組み、環境への配慮を重視している点が投資価値の向上につながっています。
デジタルバンキングの先駆的存在ともいえるDBSbank、海洋・建設・インフラ整備を一斉に手掛ける大企業Keppel Corporation、最新AI技術導入で画期的な運航サービスを導入するSingapore Airlinesは、まさに優良企業の代表的な存在です。
シンガポールで充実したキャリアアップを目指すために
シンガポールの競争力あるビジネス環境では、柔軟な雇用制度と充実した福利厚生、グローバル人材への高い需要という強みがあります。ただし、シンガポールでのキャリアアップには継続的な学習や人脈形成が欠かせず、積極的な情報収集も不可欠です。
シンガポールは国際ビジネスパーソンにとって非常にチャレンジングな環境のため、様々なプロセスを経て充実したキャリアアップを目指すことができるでしょう。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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