シンガポールで起業する 起業方法やメリット・デメリットまで解説
起業を考えた時に、ビジネスの拠点に思い描く国はどこでしょうか?シンガポールには世界中から起業家が集まります。ビジネスがしやすく、起業しやすい国として世界ランキングの上位に位置するシンガポールで起業するメリット・デメリットをみていきましょう。
シンガポールに起業家が集まる理由
シンガポールは、ビジネスに最適な環境が整っています。シンガポールは、アジア諸国やオセアニアへのアクセスが良い場所にあり、販売販路の拡大やグローバル展開がしやすいと考えられています。
中心部からほど近いハブ空港のチャンギ国際空港は、アジア主要都市や中東への物流拠点として活用できることで世界から注目を集めています。 シンガポール政府も経済・労働力政策を通して、ビジネスを促進する環境の創出に取り組んでいます。
ビジネスのしやすさランキング
U.S. News and World Reportが発表した「Open for business(Business friendly countries that are ready to investment)」ではシンガポールは7位と、アジアではトップにランクインしています。日本は少し遅れをとって37位となっています。
「Open for business(Business friendly countries that are ready to investment)」は、「官僚的でない(Not Bureaucratic)」、「汚職のない(Not Corrupt)」、「有利な税制環境(Favorable tax environment)」などの評価指標で決定されています。評価指標のうち、「官僚的でない(Not Bureaucratic) 」と「汚職のない(Not Corrupt) 」が高いスコアになっています。
国 | ビジネスのしやすさランキング |
スイス | 1 |
ルクセンブルグ | 2 |
フィンランド | 3 |
スウェーデン | 4 |
ノルウェイ | 5 |
デンマーク | 6 |
シンガポール | 7 |
・ ・ ・ | ・ ・ ・ |
日本 | 37 |
参考:U.S. News and World Report2023
起業のしやすさランキング
U.S. News and World Reportが発表している「Entrepreneurship」ランキングでも、シンガポールは日本、中国、そして韓国に続き、10位にランクインしています。日本は他の主要国と比較しても、社会における起業家の地位が低いことやリスク回避志向が強いことが指摘されがちですが2023年は3位にランクインしています。
「Entrepreneurship」の評価指標は、「起業家精神(Entrepreneurial)」、「革新性(Innovative)」、「整備されたデジタル・インフラ(Well-developed digital infrastructure)」などです。特に「起業家精神(Entrepreneurial)」と「革新性(Innovative)」で高いスコアを獲得しています。
国 | 起業のしやすさランキング |
アメリカ | 1 |
ドイツ | 2 |
日本 | 3 |
イギリス | 4 |
カナダ | 5 |
スイス | 6 |
韓国 | 7 |
中国 | 8 |
スウェーデン | 9 |
シンガポール | 10 |
参考:U.S. News and World Report2023
経済成長率の高さ
シンガポールは世界トップクラスのインフラ開発が進んでおり、法制度もしっかりしていて、治安も良好です。また、教育水準が高く自然災害が少ないことが、経済活動を行う上で強みとなっています。
シンガポール 基礎的経済指標
項目 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
実質GDP成長率 | 8.8(%) | 3.65(%) | 1.04(%) |
名目GDP総額 | 423.8($10億) | 466.8($10億) | 497.3($10億) |
一人当たりの名目GDP | 77,710($) | 82,807($) | 87,884($) |
2022年日本の実質GDP成長率は1.04%、名目GDP総額423.7($10億)、一人当たりの名目GDP33,853($)です。
シンガポールで起業するメリット
世界の大手企業からスタートアップ企業まで、シンガポールは最適なビジネスの場として選ばれ続けています。では選ばれる理由を起業するメリットとしてみていきましょう。
法人設立方法がシンプル
会社を設立する際、シンガポールではビジネスの規制と手続きが、とても簡素なものになっています。手続きが電子化されていることにより、シンガポールに入国する前からビジネスを迅速に始めることができます。
また、現地法人の設立に必要な最低資本金は定められておらず、S$1でも可能です。会社登記のオンライン申請・承認にかかる所要日数は、 東南アジアの平均より17倍速い通常約1.5営業日とされています。
※参考:EDB(シンガポール経済開発庁)
法人税率の低さ
シンガポールは法人税が17%であり、日本の法人税実効税率30%前後(住民税等を含む)と比べて低くなっています。
個人所得税は、2023年賦課年度(=2022年の所得)まではS$320,000以上の課税所得に課せられる最高税率は22%ですが、2024年賦課年度(=2023年の所得)からはS$500,000以上の課税所得につき23%、S$1,000,000を超える課税所得につき24%と高所得者の最高税率が引き上げられました。ただ、日本の最高税率55%であることと比べると半分以下の税率となり、税率の低さが実感できます。
富裕層の多いシンガポールでは、資金調達のしやすさも魅力です。特定の業種を除き、ほとんどの業種で外資100%の出資が可能なため、投資家は起業家に投資しやすい環境となっています。
税金や資金という金銭面の手厚いサポートが、シンガポールでの起業を後押ししているとも言えるでしょう。
優秀な人材
シンガポールの公用語は英語、マレー語、中国語、タミル語です。ほとんどのシンガポール人は英語と複数の言語をネイティブレベルで操ることができるとされています。
このため、海外企業との交渉や従業員の雇用などの業務をとても効率的かつ円滑に進めることができると考えられています。
また、シンガポールの教育レベルは、アジアでトップクラスです。複数の言語を操るだけでなく、プログラミングなどさまざまなスキルを持つ優秀な人材は、起業したばかりの時期や事業拡大の際に、大きな戦力になるでしょう。
シンガポールで起業するデメリット
シンガポールで起業するデメリットを3つご紹介します。あらかじめデメリットを知り、シンガポールでのビジネス成功につなげましょう。
物価が高い
世界の物価や治安についてまとめている「NUMBEO」によると、シンガポールで一家4人暮らしの家賃を含まない一カ月あたりの生活費は、約S$5,491(約58万6,000円)とされています。シンガポールは国土の狭さから住宅が密集し、家賃もとても高いと言われています。
2023年12月(記事作成時)現在の「NUMBEO」によると、総合的にシンガポールでの暮らしは、東京と比べ約39.6%高く、家賃に関しては東京の約155.2%高くなります。
この結果から、シェアオフィスやサービスオフィスの活用を視野に入れていくのも良いでしょう。また、近年、家で仕事をするいわゆる在宅勤務も浸透しています。
賃貸だけではなく、時代の流れに沿ったシェアオフィスの活用は、シンガポールで長くビジネスを続けるために必要かもしれません。
ビザ取得の厳格化
シンガポール政府は、海外からの起業家に負けない優秀なシンガポール人を育て、雇用を守るという方針を打ち出しました。さらに新型コロナがシンガポール経済にも大きな影響を及ぼし、シンガポール政府は国民の雇用を優先する姿勢を一層強めています。結果、就労ビザの取得要件は大幅に厳格化されました。
2023年9月より「Complementarity Assessment Framework=COMPASS」と呼ばれる、就労ビザの新たな評価制度が導入されました。個人の給与水準やスキル、また勤務先企業の国籍の多様性やローカル人材の割合それぞれがポイント制で評価されます。
ポイントに満たなければ就労ビザの申請ができず、企業の外国人人材確保に影響を及ぼしています。シンガポールで起業や雇用を考えるならば、制度改正への迅速な対応や、政府の方針に基づいた対策がシンガポールでのビジネスを続けていくために必要です。
就労ビザの詳細は下記、関連記事を参考にしてみてください。
競合他社の多さ
シンガポールには数多くの海外企業が既に存在しています。シンガポールの面積は、約720平方キロメートルと東京23区とほぼ同じです。人口は約563万人(2022年)、日系企業数(JETRO海外進出日系企業実態調査における調査対象企業数)は1084社(2022年12月現在)と数多くの企業がシンガポールに進出しています。
シンガポールで起業するのであれば、競合他社と差別化できるビジネス戦略をきちんと明確にすることが必須です。
シンガポールで起業する方法は?
シンガポールではほとんどの日系企業が現地法人という形態をとっており、今回はその現地法人を起業する方法をご説明します。シンガポール政府が外国企業の誘致に積極的なこともあり、手続きはシンプルです。
1.規制業種や事業のライセンスの有無を確認する 2.資本金の準備(S$1から設立が可能ですが、就労ビザや駐在員派遣を考えるとS$10万以上の資本金が一般的です) 3.コンサルティング会社、法律事務所、会計事務所など起業する分野に詳しい専門業者の選定 4.会社設立時の重要事項を決定する 重要事項とは:会社名、事業内容、会社住所(シンガポール)、株主、取締役(シンガポール居住者)など 5.会社名を会計企業規制庁(ACRA)に申請・取得 会社名の申請費用:S$15 6.居住取締役と秘書役の選任 7.定款の作成(ACRAへの登録要) 8.会社の設立申請 登録費用:S$300 9.法人銀行口座の開設 10.就労ビザ申請 11.オフィスの決定や採用計画など |
※上記手続きは法人設立の専門業者や会社の状況によりケースバイケースであり、一般的なケースを記載しています。
シンガポールで起業するメリットを最大限に活かす
柔軟に変化をしながら成長し続けるシンガポールは、デメリットを加味しても世界中の起業家を魅了する、パワーのある国です。
世界屈指のビジネスインフラや合理的な税制システムが整ったシンガポールで、起業を希望する人が後を絶たないのは当然の流れと言えるでしょう。
一昔前までは終身雇用が当たり前だった日本でも、働き方に少しづつ変化が起きています。転職、副業、在宅、起業など、働き方はどんどん自由になっています。起業前にシンガポールをよく学び、シンガポールでの起業のメリットを最大限に活かしましょう。
監修:CPAコンシェルジュ様のご紹介
CPA Concierge Pte Ltdは、2014年から日系企業のシンガポール進出、日本人起業家や富裕層のシンガポール移住、法人設立、ビザ申請、会計税務をサポートしています。これまで400件を超えるご相談に対応してきました。
シンガポールの永住権、お子様の学校、個人の銀行口座、人材採用時の注意点、MOM対策、他の士業事務所との連携、他の業者の紹介や調査、といった、士業事務所では通常は受けてくれない(しかしどこに相談してよいか分からない)お悩みも可能な限り何でもお受けしています。
基本的にすべてのクライアントに日本人スタッフ(日本語ネイティブ並みの非日本人含む)を配置しており、シンガポールでのビジネスが初めての企業でも安心して日本語でご相談いただける体制となっています。
<企業情報>
CPA Concierge Pte Ltd 住所:2 Kallang Avenue, #07-25 S339407 最寄駅:EW11 Lavender駅、DT23 Bendemeer駅 営業時間:月~金 8:00~17:00 Webサイト 詳しい会社情報はこちらもご覧ください |
萱場 玄氏
会計事務所CPAコンシェルジュ(CPA CONCIERGE PTE LTD)創業者。
公認会計士(日本)、税理士(日本)、プロフェッショナルカンパニーセクレタリー(シンガポール)、Xero公認アドバイザー、経営心理士。
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●金額は2023年12月15日の為替相場(S$1=106円)で換算表示
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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