シンガポールのビザ~ビザ取得のコツや申請方法などをご紹介~【最新 2024年】
外国人がビザを取得することは、多くの国でハードルが高いものといわれています。シンガポールも例外ではないようです。ここでは、シンガポールのビザの特徴やビザを取得するためのコツ、申請方法などをご紹介します。ぜひ、参考にしてください。
シンガポールのビザの種類は主に8種類
シンガポールで日本人が関わるビザは次の8種類です。以下に8種類の就労ビザの特徴を一覧にまとめました。
①Employment Pass(EP)
②S Pass
③Training Employment Pass(TEP)
④Personalised Employment Pass(PEP)
⑤Work Holiday Pass(under Work Holiday Programme)
⑥Entre Pass
⑦Tech. Pass (2021年1月より導入)
⑧Overseas Networks & Expertise Pass(通称ONE Pass)
ひとつずつご紹介します。
①Employment Pass(EP) 対象者:専門職・管理職・経営者 最低月額固定給:S$5000(日本円で約55万円) (2025年1月からはS$5,600(日本円で約61万円)) ※金融業界の場合はS$5,500(2025年1月からはS$6,200) ※年齢、学歴により最低月額固定給は異なる ※最低月額固定給に加えてCOMPASSのC1(給与加点)を要考慮 ②S Pass(中技能熟練労働者) 対象者:中技能熟練労働者 最低月額固定給:S$3,150(日本円で約35万円) ※2025年9月からS$3,300に引き上げ ※更新は2024年9月からS$3,150、2026年9月からS$3,300に引き上げ ※年齢、学歴により最低月額固定給は異なる ③Training Employment Pass(TEP) 対象者:実務に関連する研修生 最低月額固定給:S$3000(日本円で約33万円) ④Personalised Employment Pass(PEP) 対象者:高所得(S$22,500以上の月額固定給)の外国人専門家 備考:①のEmployment Pass よりも所得条件が厳しいかわりに勤務先について柔軟性があります。 ⑤Work Holiday Pass(under Work Holiday Programme) 対象者:18才から25才までの学生 備考:ワークホリデープログラムの規定に基づき、約6カ月就労したり休暇として過ごすことができます。 ※日本人でも、日本以外の教育機関での学歴の場合は申請できないことがあります。 ⑥Entre Pass 対象者:シンガポールでビジネスを始めようとしている起業家や革新技術を持っていたりベンチャー事業を起こそうとしている外国人起業家向け。 ⑦Tech. Pass (2021年1月より導入) 対象者:大手や急成長したテクノロジー企業の創業者、リーダー、技術専門家向け。 備考:シンガポール開発庁が管轄し、個人単位で申請が可能です。 初回発行から2年間有効。 ⑧Overseas Networks & Expertise Pass(通称ONE Pass)(2023年1月より導入) 対象者:高所得者(S$30,000以上の月額固定給)の外国人もしくは芸術・文化・スポーツ・科学技術・研究・学問の分野で優れた業績を上げている人向け。 |
表中の① Employment Pass と②のS Passを申請する際に企業側にも注意するべきことがあり、最低14日間求人広告をMyCareersFuture(MCF)へ掲載する必要があります。
近年、シンガポールでは国を上げて「シンガポール・コア」というスローガンのもと、外国人(駐在予定の社員)については専門的なスキルがある人材のみを厳選して雇用すべきという方針です。中でも、Fair Consideration Framework(公平な選考に関するフレームワーク)と呼ばれる人材募集や採用選考に関するルールは厳格で、外国人を採用する際、シンガポール人を少なくとも平等に採用選考しなければならないとされています。
このため、シンガポールで外国人を採用する場合は、外国人選考やEP申請の前に、最低14日間、シンガポール人も対象に含めた求人広告をMyCareersFuture(MCF)に掲示することが必要です。掲載期間中、シンガポール人から応募があった場合、少なくとも当該シンガポール人を採用検討する必要があり、募集要項に合致した人材であれば理論上は採用する必要があるということになります。掲載期間14日間を経てなお条件に見合う人材からの応募がない場合にはじめて、駐在員やその他外国人の採用選考を始められます。
求人広告義務は一定の場合に免除されますが、掲載義務があるのにもかかわらず掲載しなかったり、シンガポール人に対して「不公平」や「差別的」だと当局によって判断された場合は、外国人の就労ビザ発給・更新の停止や、企業代表者の禁固刑といった厳しい罰が与えられることもあります。
以下、各就労ビザごとの外国人滞在者数の推移です。
2019年までは順調に増えていたものの、2020年、2021年は新型コロナウイルスの影響もあり外国人労働者は減少しています。しかしながら2022年以降は回復傾向にあります。
Foreign workforce numbers
シンガポールのビザ申請手順(EP・S pass)
就労ビザの主な申請手順についてご紹介します。
フロー | 対象者 | 備考 |
オンラインにて 申請 | 雇用主もしくは雇用エージェント | 審査期間は通常5~10営業日程度。 これからシンガポール法人等を設立する場合は、法人設立含め、2~3カ月みておくとよいでしょう。 |
In-Principle Approval letter 取得 | 雇用主もしくは雇用エージェント | IPA letterの有効期限はEPの場合6カ月、S-passの場合60日間です。 |
健康診断 | 申請者本人 | IPAレターに健康診断の必要有無が書かれています。 必要書類:パスポートとIPA letterに付随してある健康診断票 費用:S$約50 |
Notification Letter 発行 | 雇用主もしくは雇用エージェント | 健康診断が免除された場合、または結果が問題なかった場合、ビザの有効化手続きを行い、Notification Letterを発行します。 <主な必要書類> ・健康診断の結果 ・観光ビザで入国している場合、その詳細(IMM27という出入国カードの番号) ・署名済みのIPA Letter |
写真・指紋登録 | 申請者 | 完全予約制となっており、Notification Letter発行からEPの場合は2週間以内、S passの場合は1週間以内に予約を入れる必要があります。 <主な必要な書類> ・Appointment Letter ・Notification Letter ・パスポート |
ビザカードの取得 | 就労先企業 | 写真・指紋の登録日から5営業日前後でカードが郵送されます。 |
* 2024年3月1日より、すべてのパス保有者に対してCOVID-19のワクチン接種要件は不要になりました。詳細はこちらから。
*申請状況の確認はこちらのページから可能です。
シンガポールでビザに必要な書類(EP・S pass)
就労ビザに必要な書類について触れていきます。
2024年現在基本的に申請はオンラインで行いますので、必要書類をアップロードできるように事前にデータをご自身のデバイスに保存しておくといいでしょう。取得したいビザの種類によって違いがありますが一般的なEmployment Pass、S pass については下記の通りです。
・パスポートのコピー ・英文の最終学歴証明書 ・学歴の認証証明書(学歴による) |
※情報は常に更新されていくので就労ビザを申請する場合は、政府機関の公式サイトをご確認ください。
COMPASS
COMPASSとは、2024年9月から適用が開始されたEP申請のための要件をいいます。基本基準である個人の属性(給与・資格)、企業の属性(社員の多様性・ローカルの雇用支援)や追加加点基準を合計して40ポイント以上の点数がなければ原則としてEP申請ができない仕組みとなっています。COMPASS導入によりEP申請自体が難しくなり、客観的にスキルの高い(所得や学歴の高い)外国人労働者への選別がさらに進み、外国人の採用が厳しくなったことによるローカル人材への雇用シフトが期待されています
シンガポールでビザを取得するコツは?
シンガポールで就労ビザを取得するためのコツについて解説します。
MOM(シンガポール人材開発省)の意図を把握する
シンガポールの就労ビザの審査は、MOMが行います。そのため、MOMが求めていることを把握することが就労ビザ取得のコツとなります。MOMが申請内容を見て、少しでも懸念点があると許可を出さないことがあるため、可能な範囲で落ちる要素を消していくことが大切です。
また、EPについては2023年9月(更新は2024年9月)から新たにCOMPASSと呼ばれるポイント制度が導入されています。この制度により、従来はEP申請できていた外国人がEPをそもそも申請できなくなるといったケースが増え、結果、これまでは審査を通過しにくかった外国人が(申請さえできれば)審査を通過しやすくなるといった変化も予想されます。ただし、シンガポールが全体として外国人在住者を増やしたい時期なのかそうでないのかといった方針によっても審査の難易度が左右されるといえます。
シンガポールで日本人を採用するメリット
シンガポールで日本人を採用するメリットにはどのようなものがあるのかをご紹介します。
シンガポールと日本とのパイプ役に
シンガポールで日本人を雇用するメリットとして日本とシンガポールの架け橋役になるということがあります。例えば、日系企業で拠点が現地にある場合、現地の文化をよく理解し、日本文化も理解している日本人が間に入ることでスムーズなコミュニケーションを行えることが挙げられます。また日本のサービスを売りにしている企業、飲食店、美容サロンなどのお客さんの多くが日本人である場合、架け橋役として活躍できるでしょう。
しかし、シンガポールで雇用する立場から見ると給与の基準や就労ビザの取得が厳しくなっていることも事実です。また、新型コロナウイルス対策以降、リモート勤務の体制が整った企業も多いため、シンガポールでビザを出すことなく、ベトナム、マレーシアなどの近隣諸国や、日本からのリモートでシンガポールの駐在員業務を行う会社が増えていく可能性があるといえるでしょう。
海外企業がシンガポール進出に必要なこと
シンガポール政府は、外国企業を誘致することに積極的です。ただし雇用に関しては、外国人よりもシンガポール人の雇用を優先する(少なくとも平等に機会を与える)ように各種制度が整備されています。逆にいうと、シンガポール人を積極採用する企業には、積極的なサポートを行っています。
シンガポール政府が(日系企業を含む)外資系企業を誘致する目的として、シンガポール人の教育や、納税や雇用を通じてシンガポールの発展に寄与する、といったことが挙げられます。したがって、外資系企業がシンガポール人を雇用することなく自国からの駐在員だけで企業を運営する場合、自国からの人材の就労ビザの取得が困難になる傾向があります。
シンガポールの就労ビザ取得には客観的な視点が重要
シンガポールの就労ビザを申請する場合、就労ビザを審査するMOMが考えていることを把握し、申請準備を進めていくことが大切です。また、制度として変更がなくとも、ビザ審査が厳しくなったり緩くなったりと、トレンドは常に変わります。
コンサルタントは長年の経験とノウハウを持っており、就労ビザの申請をよりよく行うためのアドバイスも行っています。就労ビザの申請で悩んでいる場合は、一度相談することをおすすめします。
監修:CPAコンシェルジュ様のご紹介
CPA Concierge Pte Ltdは、2014年から日系企業のシンガポール進出、日本人起業家や富裕層のシンガポール移住、法人設立、ビザ申請、会計税務をサポートしています。これまで400件を超えるご相談に対応してきました。
シンガポールの永住権、お子様の学校、個人の銀行口座、人材採用時の注意点、MOM対策、他の士業事務所との連携、他の業者の紹介や調査、といった、士業事務所では通常は受けてくれない(しかしどこに相談してよいか分からない)お悩みも可能な限り何でもお受けしています。
基本的にすべてのクライアントに日本人スタッフ(日本語ネイティブ並みの非日本人含む)を配置しており、シンガポールでのビジネスが初めての企業でも安心して日本語でご相談いただける体制となっています。
CPA CONCIERGE PTE LTD(シーピーエー コンシェルジュ) 住所:2 Kallang Avenue, #07-25 S339407 最寄駅:EW11 Lavender駅、DT23 Bendemeer駅 営業時間:月~金 8:00-17:00 WEBサイト 企業情報の詳細・お問い合わせはこちら |
萱場 玄氏
会計事務所CPAコンシェルジュ(CPA CONCIERGE PTE LTD)創業者。
公認会計士(日本)、税理士(日本)、プロフェッショナルカンパニーセクレタリー(シンガポール)、Xero公認アドバイザー、経営心理士。
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●金額は2024年9月中旬現在の為替相場(S$=109円)で換算表示
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