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シンガポールの就労ビザの特徴と取得のコツをご紹介【2025年】

外国人が就労ビザを取得することは、多くの国でハードルが高いものといわれています。シンガポールも例外ではないようです。ここでは、シンガポールの就労ビザの特徴と就労ビザを取得するためのコツをご紹介します。ぜひ、参考にしてください。

就労ビザの種類は主に8つ

日本人が関わる主なビザは次の8種類です。以下に8種類の就労ビザの特徴を一覧にまとめました。

①Employment Pass(EP)
②S Pass
③Training Employment Pass(TEP)
④Personalised Employment Pass(PEP)
⑤Work Holiday Pass(under Work Holiday Programme)
⑥Entre Pass
⑦Tech. Pass (2021年1月より導入)
⑧Overseas Networks & Experience Pass(通称ONE Pass)(2023年1月より導入)

ひとつずつご紹介します。

①Employment Pass(EP)
対象者:専門職・管理職・経営者
最低月額固定給:S$5,600(日本円で約63万円)
※金融業界の場合はS$6,200
※更新は2025年1月から12月の間のみS$5,000、それ以降はS$5,600
※年齢、学歴により最低月額固定給は異なる
※最低月額固定給に加えてCOMPASSのC1(給与加点)を要考慮
②S Pass(中技能熟練労働者)
対象者:中技能熟練労働者
最低月額固定給:S$3,150(日本円で約35万円)
※金融業界の場合はS$3,650
※新規申請は2025年9月からS$3,300(金融はS$3,800)に引き上げ
※更新は2026年9月からS$3,300(金融はS$3,800)に引き上げ
※年齢、学歴により最低月額固定給は異なる
③Training Employment Pass(TEP)
対象者:実務に関連する研修生
最低月額固定給:S$3,000(日本円で約34万円)
※更新は不可
④Personalised Employment Pass(PEP)
対象者:高所得者や外国人専門家
最低月額固定給:S$22,500(日本円で約255万円)
備考:①のEmployment Passよりも就労の面で柔軟性があります。
※更新は不可、再度就労する場合はEPやS Passの取得が必要
⑤Work Holiday Pass(under Work Holiday Programme)
対象者:18才から25才までの学生
備考:ワークホリデープログラムの規定に基づき、約6か月就労したり休暇として過ごすことができます。
※日本人でも、日本以外の教育機関での学歴の場合は申請できないことがあります。
※更新は不可
⑥Entre Pass
対象者:シンガポールでビジネスを始めようとしている起業家や革新技術を持っていたりベンチャー事業を起こそうとしている外国人起業家向け。
※更新は特定の基準を満たすことで可能
⑦Tech. Pass (2021年1月より導入)
対象者:大手や急成長したテクノロジー企業の創業者、リーダー、技術専門家向け。
最低月額固定給:直近1年間でS$22,500(日本円で約255万円)
備考:シンガポール開発庁(EDB)が管轄し、個人単位で申請が可能です。
※初回発行から2年間有効。更新は特定の基準を満たすことで可能。
⑧Overseas Networks & Expertise Pass(通称ONE Pass)(2023年1月より導入)
対象者:ビジネス・芸術・文化・スポーツ・科学技術・研究・学問の分野で優れた業績を上げている人向け。
最低月額固定給:直近1年間でS$30,000(日本円で約341万円)
備考:起業と就労を同時に行えるなど、柔軟性が高いです。 
※更新は特定の基準を満たすことで可能

表中の① Employment Pass と②のS Passを申請する際に企業側にも注意するべきことがあり、最低14日間求人広告をMyCareersFuture(MCF)へ掲載する必要があります。

近年、シンガポールでは国を上げて「シンガポール・コア」というスローガンのもと、外国人(駐在予定の社員)については専門的なスキルがある人材のみを厳選して雇用すべきという方針です。

中でも、Fair Consideration Framework(公平な選考に関するフレームワーク)と呼ばれる人材募集や採用選考に関するルールは厳格で、外国人を採用する際、シンガポール人を少なくとも平等に採用選考しなければならないとされています。

このため、シンガポールで外国人を採用する場合は、外国人選考やEP申請の前に、最低14日間、シンガポール人も対象に含めた求人広告をMyCareersFuture(MCF)に掲示することが必要です。

掲載期間中、シンガポール人から応募があった場合、少なくとも当該シンガポール人を採用検討する必要があり、募集要項に合致した人材であれば理論上は採用する必要があるということになります。掲載期間14日間を経てなお条件に見合う人材からの応募がない場合にはじめて、駐在員やその他外国人の採用選考を始められます。

求人広告義務は一定の場合に免除されますが、掲載義務の放棄や不正があると判断された場合は、外国人の就労ビザ発給・更新の停止や、企業代表者の禁固刑といった厳しい罰が与えられることもあります。

各就労ビザごとの外国人滞在者数

以下、各就労ビザごとの外国人滞在者数の推移です。

2020年と2021年は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によって外国人労働者の総数は減少していますが、2022年以降は渡航/入国規制の緩和によってその数は大きく回復しました。2023年と2024年では、コロナ禍前の水準には完全に戻っていないものの、外国人来訪者数が大幅に増加したことに伴い、就労ビザ所持者の数も増えたとみられます(全来訪者数の1割前後に相当)。

Pass typeDec 2019Dec 2020Dec 2021Dec 2022Dec 2023Dec 2024
Employment Pass (EP)193,700177,100161,700187,300205,400202,100
S Pass200,000174,000161,800177,900178,500178,200
Work Permit (Total)999,000848,200849,7001,033,5001,113,0001,165,900
Work Permit (MDW)261,800247,400246,300268,500286,300301,600
Work Permit (CMP sectors)370,100311,100318,500415,000441,100456,800
Other work passes234,70032,20027,20025,40028,50030,400
Total foreign workforce1,427,4001,231,5001,200,4001,424,2001,525,5001,576,500
Total foreign workforce(excluding MDWs)1,165,600984,100954,1001,155,7001,239,2001,274,900
Total foreign workforce(excluding MDWs and Work Permits in CMP sectors)795,500673,000635,700740,700798,000818,100
(出典:Foreign workforce numbers

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就労ビザの申請手順(EP・S pass)

就労ビザの主な申請手順についてご紹介します。

フロー対象者備考
オンラインにて申請雇用主もしくは雇用エージェント審査期間は通常5~10営業日程度。これからシンガポール法人等を設立する場合は、法人設立含め、2~3か月みておくとよいでしょう。
In-Principle Approval letter取得雇用主もしくは雇用エージェントIPA letterの有効期限はEPの場合6か月、S-passの場合60日間です。
健康診断申請者本人IPA letterに健康診断の必要有無が書かれています(通常は不要)。
<必要書類>パスポートとIPA letterに付随してある健康診断票
<費用>約S$50
Notification Letter 発行雇用主もしくは雇用エージェント健康診断が免除された場合、または結果が問題なかった場合、ビザの有効化手続きを行い、Notification Letterを発行します。
<主な必要書類>
・健康診断の結果
・観光ビザで入国している場合、その詳細(SG Arrivalを提出し、実際に入国した直後に交付される入国番号)
・署名済みのIPA Letter
写真・指紋登録申請者完全予約制となっており、Notification Letter発行からEPの場合は2週間以内、S passの場合は1週間以内に予約を入れる必要があります。
<主な必要書類>
・Appointment letter
・Notification letter
・パスポート
ビザカード取得ザ正式取得就労先企業写真・指紋の登録日から5~10営業日前後でカードが郵送されます。

2024年3月1日よりワクチン接種は不要になりましたが、就労ビザ取得の際には、COVID-19への感染リスクと重症化を防ぐため、現在もワクチン接種が推奨されています。

就労ビザに必要な書類(EP・S pass)

就労ビザに必要な書類について触れていきます。

2025年現在、基本的に申請はオンラインで行いますので、必要書類をアップロードできるように事前にデータをご自身のデバイスに保存しておくといいでしょう。取得したいビザの種類によって違いがありますが一般的なEmployment Pass、S pass については下記の通りです。

▪パスポートのコピー
▪英文の最終学歴証明書
▪学歴の認証証明書(学歴による)

※情報は常に更新されていくので就労ビザを申請する場合は、政府機関の公式サイトをご確認ください。

就労ビザを取得するポイント

シンガポールで就労ビザを取得するためのポイントについて解説します。

MOM(シンガポール人材開発省)の意図を把握

シンガポールの就労ビザの審査は、MOMが行います。そのため、MOMが求めていることを把握することが就労ビザ取得のポイントとなります。MOMが申請内容を見て、少しでも懸念点があると許可を出さないことがあるため、可能な範囲で落ちる要素を消していくことが大切です。

また、EPについては2023年9月(更新は2024年9月)から新たにCOMPASSと呼ばれるポイント制度が導入されています。この制度により、従来はEP申請できていた外国人がEPをそもそも申請できなくなるといったケースが増え、結果、これまでは審査を通過しにくかった外国人が(申請さえできれば)審査を通過しやすくなるといった傾向があるように見受けられます。

ただし、シンガポールが全体として外国人在住者を増やしたい時期なのかそうでないのかといった方針によっても審査の難易度が左右されるため、今後もこの傾向が続くかは不透明といえます。

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シンガポールで日本人を採用するメリット

シンガポールで日本人を採用するメリットにはどのようなものがあるのかをご紹介します。

シンガポールと日本とのパイプ役に

シンガポールで日本人を雇用するメリットとして日本とシンガポールの架け橋役になるということがあります。

例えば、日系企業で拠点が現地にある場合、シンガポールと日本の文化の両方を理解している日本人が間に入ることでスムーズなコミュニケーションを行えることが挙げられます。また日本のサービスを売りにしている企業、飲食店、美容サロンなどのお客さんの多くが日本人である場合、架け橋役として活躍できるでしょう。

さらに、専門知識や高い技術力を有する場合などは、国の要の産業でもあるITや金融、製造分野でも活躍の余地がありそうです。特にIT分野に関しては、近年、情報通信技術(ICT)に関連する日系企業の新規設立が増えているため、ICT関連サービスの拡大に伴ってエンジニアの需要も高まると予想されます。

しかし、シンガポールで雇用する立場から見ると給与の基準や就労ビザの取得が厳しくなって、役員や技術職員の獲得が困難になっていることも事実です。

ただ、パンデミック対策以降、リモート勤務の体制が整った企業も多いため、シンガポールの日系企業の一部業務を日本で行うケースが増えているといいます。

一般的に、シンガポールを拠点にする企業と越境リモートワークをする場合にはビザは必要ないとされていますが、シンガポールの法律に準拠するため、日本からのリモートワークを希望する場合には、MOMまたはICA(入国管理局)に問い合わせて詳細を確認する必要があります。

海外企業がシンガポール進出に必要なこと

シンガポール政府は、外国企業を誘致することに積極的です。ただし雇用に関しては、前述のFair Consideration Frameworkが尊重されています。むしろ、シンガポール人を積極採用する企業には、積極的なサポートを行っています。

シンガポール政府が(日系企業を含む)外資系企業を誘致する目的として、シンガポール人の教育や、納税や雇用を通じてシンガポールの発展に寄与する、といったことが挙げられます。したがって、外資系企業がシンガポール人を雇用することなく自国からの駐在員だけで企業を運営する場合、自国からの人材の就労ビザの取得が困難になる傾向があります。

他方で、今後は人材面だけではなく、設備投資や技術面も留意する必要があるでしょう。デジタル発展やイノベーションを重要視するシンガポールでは、関連の分野で付加価値の高い事業を提供する事が求められます。高精度で、国際競争力の高い製造やサービスを維持できるかどうか、進出に先立って慎重に見極めることが肝要です。

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シンガポールの就労ビザ取得には客観的な視点が重要

シンガポールの就労ビザを申請する場合、就労ビザを審査するMOMが考えていることを把握し、申請準備を進めていくことが大切です。また、制度として変更がなくとも、ビザ審査が厳しくなったり緩くなったりと、トレンドは常に変わります。

コンサルタントは長年の経験とノウハウを持っており、就労ビザの申請をよりよく行うためのアドバイスも行っています。就労ビザの申請で悩んでいる場合は、一度相談することをおすすめします。

監修:CPAコンシェルジュ様のご紹介

CPA Concierge Pte Ltdは、2014年から日系企業のシンガポール進出、日本人起業家や富裕層のシンガポール移住、法人設立、ビザ申請、会計税務をサポートしています。これまで500件を超えるご相談に対応してきました。

シンガポールの永住権、お子様の学校、個人の銀行口座、人材採用時の注意点、MOM対策、他の士業事務所との連携、他の業者の紹介や調査、といった、士業事務所では通常は受けてくれない(しかしどこに相談してよいか分からない)お悩みも可能な限り何でもお受けしています。

基本的にすべてのクライアントに日本人スタッフ(日本語ネイティブ並みの非日本人含む)を配置しており、シンガポールでのビジネスが初めての企業でも安心して日本語でご相談いただける体制となっています。

CPA CONCIERGE PTE LTD(シーピーエー コンシェルジュ)
住所:2 Kallang Avenue, #07-25 S339407
最寄駅:EW11 Lavender駅、DT23 Bendemeer駅
営業時間:月~金 8:00-17:00
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萱場 玄氏

会計事務所CPAコンシェルジュ(CPA CONCIERGE PTE LTD)創業者。

公認会計士(日本)、税理士(日本)、プロフェッショナルカンパニーセクレタリー(シンガポール)、Xero公認アドバイザー、経営心理士。

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