シンガポール移住 7つの方法と条件~メリット・デメリット・職探しを徹底解説~

日本からの移住先で近年人気が高まっているのがシンガポールと言われていますが、実際に移住するとなったら、皆さんは具体的なイメージを持つことができるでしょうか。今回は、シンガポール移住に際して、方法や条件、メリットとデメリット、生活について、仕事の探し方についても探ってみます。
シンガポール移住が注目されている理由

人口約564万人(2022年6月現在)、国土の面積は約720㎢と、東京23区とほぼ同じ広さのシンガポールは、国際金融都市として、また東南アジア経済のハブとして、年々注目が高まっています。
世界銀行によれば、シンガポールにおける、2021年の一人あたりのGDPは、約US$7.3万(約9,335万円)となっており、同年の日本の数値である約US$3.9万(約499万円)よりもはるかに高いことが分かります。
決して広いとは言えない国土ですが、経済の発展をし続けるシンガポールは、日本からの移住先としても近年人気が高まっています。その主な理由をいくつかご紹介しましょう。
まずは「日本と比較して税金が安いこと」です。日本では、個人で収入を得た場合は、まずは所得税を納め、さらに居住する自治体に対して住民税を納めることになります。2つ合わせた最高税率は55%となっているのに対して、シンガポールには、住民税がないため、所得税のみを納めることになります。
税制としては、日本と同じ累進課税方式ですが、シンガポールでは、個人の所得税の最大税率は22%(2022年の税制改正で、2023年度からは24%に引き上げられる予定)であり、日本と比べてかなり安いことが分かります。
次に「一年中温暖な気候で過ごしやすいこと」が挙げられます。赤道付近に位置するシンガポールは、高温多湿の気候が一年にわたり続き、日本の夏のような気候のまま一年を過ごすことができます。
日本には四季があることで、美しい風景を楽しむことができますが、例えば高齢になってくると、寒暖差のある日本の気候が体には少々辛くなることも考えられます。気候が一定しているシンガポールは、リタイア後の暮らしにも向いているかもしれません。
また「セレブや有名人の移住先に選択されることが多いこと」も挙げられます。税制の優遇をはじめ、シンガポールは国をあげて教育に注力しており、英語も公用語であることから、子どものグローバルな教育環境を期待して、シンガポールに移住を検討する方も増えているようです。
世界大学評価機関である、イギリスの「Quacquarelli Symonds」(クアクアレリ・シモンズ:QS)は2022年11月に「QSアジア大学ランキング2023」を発表。前年に1位だった「シンガポール国立大学(NUS)」は2位となりましたが、いかに高い評価を受けているかが分かります。
また、日本とシンガポールの時差は1時間であり、シンガポール国内に居住する日本人の数も約37,000人(2019年10月現在)と増加傾向ですが、近年、日本で有名な飲食店や各種サービス業の支店が続々とシンガポールでオープンしており、こうした点もシンガポールでの暮らしやすさにつながると言えます。
シンガポールに移住する7つの方法

日本からシンガポールに移住する方が増えてきている理由を見てきましたが、それでは実際にシンガポールに移住するにはどのような方法が考えられるでしょうか?7つの方法をご紹介しましょう。
シンガポールの会社で働く
シンガポールには日系企業をはじめ、世界各国の企業が集まっており、特定のスキルを持つ方や、日本でのキャリアを活かして、シンガポールで挑戦してみたい方にとっては、魅力ある会社が見つかるかもしれません。日本語で閲覧可能な求人サイトが数多くあるほか、転職エージェントなどに登録してみることもおすすめします。
なお、シンガポールの現地会社で働く際には「S Pass」と呼ばれるビザの取得が必要です。「S Pass」は、熟練労働者向けの就労ビザで、月額でS$3,000以上(金融部門はS$3,500)の給与を得ていることが申請の条件となります。
シンガポール人材開発省(MOM)のサイトでは、ご自身のキャリアや現在の給与額が、Sパスの申請基準を満たすかどうか調べることができるオンラインツール「Employment / S Pass Self-Assessment Tool (SAT)」が提供されています。気になる方はぜひチェックしてみてください。
シンガポールで起業する
シンガポールで新たなビジネスを起業したい方は「Entre Pass」というビザに申請ができます。大学卒業の学歴や月額の最低給与額の条件などはありませんが、起業家、イノベーター、投資家ごとに満たすべき条件があるので、事業計画書の提出などハードルは高めです。また、カフェやバー、ナイトクラブ、マッサージ店の開業などは本ビザの申請対象にはなりません。
また「Tech Pass」は、シンガポール経済開発庁(EDB)が発行するパスで、大手や急成長を遂げているテクノロジー企業の創業者、リーダー、技術専門家を世界中から誘致する目的で発行され、個人単位で申請できます。2021年1月に申請が始まったばかりの新しい制度ですが、該当する方にとっては魅力的なパスと言えます。
シンガポールで学生になる
シンガポールの全日制の学校に入学する方は「Student Pass」に申請ができます。ただし、政府認定の教育機関や学校で学生になる場合のみ申請可能なので、事前に確認が必要です。
シンガポールでワーホリする
4年生大学に在学中、または18歳から25歳までの方は「Work Holiday Pass」の取得を申請できます。本ビザがあれば、最長6カ月間シンガポールに滞在でき、就労も可能です。
キャリアがまだない学生や、まずは国内のビジネス環境を見てから就職先をじっくり考えたいという方は、ワーホリをしてみるのもよいかもしれません。
シンガポールで働く家族がいる
シンガポールで働く外国人就労者に帯同する家族にも申請可能なビザがあります。それは「Dependant’s Pass」と呼ばれ、法律上の婚姻関係にある配偶者および未婚である21歳以下の子どもが申請できるものです。
ただし、就労者は「Employment Pass」または「S Pass」を保持し、単一の月額給与として、毎月S$6,000を得ていることが条件となります。
「Dependant’s Pass」を持っている場合、シンガポール国内での就労は可能です。
永住権を取得する永住権
「Permanent Residence:PR」が取得できれば、就労ビザの取得も不要で、文字通り、無期限でシンガポールに滞在することが可能です。
申請可能な人の条件として、シンガポール国民または永住権(PR)保持者の配偶者または21歳以下の子ども、シンガポール国民の両親、就労ビザの保持者、投資家などがありますが、申請しても通らないこともあるようで、日本人がシンガポール国民やPR保持者と結婚する以外は、永住権の取得はハードルが高そうです。
長期滞在ビザを取得する
最長2年の滞在が認められる長期滞在ビザ「LTVP(Long-Term Visit Pass)」は、「Employment Pass」または「S Pass」を保持し、単一の月額給与として、毎月S$6,000を得ている人の家族が申請できます。また、月額の最低給与額がS$12,000ある人の両親が申請可能など、対象となる人の条件がいくつかあります。
シンガポール移住のメリット・デメリット

どんな国でも、生活する上で良いことばかりではありませんが、シンガポールに移住した場合のメリットとデメリットとはどんなことが考えられるでしょうか。
まずはメリットですが、次の4つが挙げられます。
・「治安の良さ」 ・「高水準のインフラ整備」 ・「多民族国家のグローバルな環境」 ・「ハイレベルな教育・医療」 |
「治安の良さ」は、2020年、米国ギャラップ社が毎年行う法秩序指数調査において、シンガポールは「世界一安全な国」として7年連続で1位となっていることからも証明されています。
また「高水準のインフラ整備」とは、国土が東京23区とほぼ同じシンガポールは、実は東京以上にインフラが整備されています。例えば、MRTと呼ばれる地下鉄やバスなどの交通網は、国内に張り巡らされており、料金も安価で、移動の不自由を感じることはありません。
また、チャンギ国際空港は24時間稼働しており、ハブ空港として世界200都市に就航し、シンガポールから近隣諸国へのアクセスも整備されています。
そして「多民族国家のグローバルな環境」とは、文字どおり、シンガポールは多民族が共生しながら成り立っており、英語のほかに、中国語、マレー語、タミール語が公用語として使われるなど、多様な価値観の中で暮らすことになります。
そのため、日本では経験できないグローバルな環境に身を置くことができ、視野が広がり、子どもの教育環境としても有益なものになることでしょう。
最後に「ハイレベルの教育・医療」ですが、いずれもシンガポールが注力しているもので、優秀な人材の受け入れと確保に務めています。
教育においては、例えば、OECD加盟国の15歳の生徒を対象に行なわれる「国際学習到達度調査(PISA)」で、シンガポールは、2018年に数学的リテラシー部門で世界2位となるなど、世界的にも高い水準の教育が行われていることが分かります。
また、医療に関しては、日本のように保険制度はなく、自由診療のため、内容によっては診療費が高くなることも考えられますが、病院の数も充実しています。日系のクリニックも多くあるため、安心して医療を受けることができます。
一方で、デメリットは何でしょうか?次の3つが挙げられます。
・「物価の高さ」 ・「狭い国土と人口密集」 ・「国のルールの厳しさ」 |
物価の高い都市と言われるシンガポールですが、「NUMBEO」のサイトによれば、4人家族の1カ月の生活費は約50万円(住居賃貸料を除く)とのことで、1人暮らしでは1カ月の生活費は約14万円(住居賃貸料を除く)だそうです。また家賃の相場も、東京よりも高いと言われています。
交通費や外食費など安く抑えられる経費もありますが、総じて物価が高いことはデメリットのひとつかもしれません。
また「狭い国土と人口密集」によってもたらされる不動産価格の高騰や、物価高がある反面、東京23区内とほぼ同じ国土でコンパクトに動けることは、メリットとも言えるため、デメリットと両面を持っています。
最後に「国のルールの厳しさ」ですが、日常生活の細かいルールが多く、知らなかったことで罰則を受けることもあります。例えば国旗に関するルールや、チューインガムの持ち込み禁止など、日本では経験のないルールに遭遇することもあり、少し息が詰まる時もあるかもしれません。
資産運用編
株式会社日本格付研究所によると、シンガポールは「外貨建長期発行」と「自国通貨建長期発行」の項目において、いずれも「AAA」の格付を受けています。
また、スイスのビジネススクールである国際経営開発研究所(IMD)が2022年6月に発表した「世界競争力ランキング2022」では、シンガポールが3位となりました。2021年の5位から返り咲いた結果となり、IMDの評価指標のうち「経済パフォーマンス」では2位、「政府の効率性」では4位と、世界におけるシンガポールの国家力の強さが証明されました。
こうした国の信頼度の高さに加え、シンガポールでは、外貨の金融商品に対する規制がないため、日本では購入できないような金融商品や保険商品が豊富にあります。
また、シンガポールに居住する人が、金融商品や不動産を購入し、その売買によって得た利益、いわゆるキャピタルゲインに対しては、基本的には非課税となります。資産運用を目的とした移住を希望する方にとっては、シンガポールはメリットの多い国と言えます。
節税編
シンガポールでは、株などの金融商品や不動産の購入で得た利益に対しては基本的には非課税のほか、住民税や贈与税もありません。また、以前は、日本の相続税にあたる「Estate Duty」がありましたが、2008年に廃止となっており、この点も日本とは状況が異なります。
一方、日本の消費税にあたるものがシンガポールでは、GST(Goods &Service Tax)と呼ばれ、移住後の暮らしでは日々支払うことになります。2022年2月に政府の発表があり、従来の7%が、2023年1月から8%、2024年1月からは9%の2段階で引き上げることになっており、少し注意が必要です。
また移住後は、日本と同じように、累進課税方式で、シンガポールでも所得税を納める必要があります。ただし、最高税率は22%であり、日本のように「所得税と住民税」がセットになり、最高で55%の税率になることに比べると、低い税率になっていることが分かります。
今後のシンガポールの政策には注視が必要ですが、節税を目的とした移住先としてはシンガポールはよい候補になると言えるでしょう。
シンガポールの現地採用・仕事の見つけ方

シンガポール移住に際しては、どんな仕事に就くかについても気になるところです。日本の企業に勤めながら、シンガポール赴任のチャンスを待つ方法もありますが、シンガポール現地で仕事を探すにはどのような方法があるでしょうか。
より近道と言われるのは、シンガポールの日系企業に就職することです。日本語がネイティブなので、企業側にとっても即戦力として期待できます。また日本で培ったキャリアも活かせる可能性が高いでしょう。さらに、英語や中国語などの語学ができることは、シンガポールで働く上で有利になります。
まずは、現地でどんな求人が出ているか、オンラインの求人サイトを参照したり、キャリアが既にある方は、専門の転職エージェントに登録してみるのもよいでしょう。希望する就職先と、ご自身のキャリアにギャップがないかなど、より客観的にマッチングを図ってもらうことが期待できます。
もしキャリアがまだない新卒の方や、申請条件に当てはまりそうな方は、ワーキングホリデーなども活用しながら、シンガポールでの仕事をじっくりと探し、現地採用に向けてチャレンジする方法も考えられます。
シンガポール人材開発省(MOM)によれば、シンガポールの平均年収は約590万円(約US$46,000)です。この水準はOECD(経済協力開発機構)が公表する世界ランキングに換算すると世界24位相当、アジアでは韓国に次ぐ2位というポジションです。(加盟国平均は約760万円(約US$51,600))
また業種別における月収の上位は、1位が金融・保険業(S$6,200)、2位が行政・教育(S$5,417)、3位は情報通信業(S$5,311)の順となっており、知的労働が上位を占めています。
ビザ取得

シンガポールで働くためには就労ビザの取得が必要になりますが、下記は日本人がシンガポールで働くために必要な主なビザの種類になります。
ビザの種類 | 概要 | 対象 | 最低給与額 | ビザ有効期間 |
EP (Employment Pass) | 通称EP。最も一般的な就労ビザ | 専門職・管理職・経営者 | S$5,000・金融部門はS$5,500 | 新規は最長2年、更新は最長3年 |
S Pass | 熟練労働者向けの就労ビザ | 熟練労働者 | S$3,000・金融部門はS$3,500 | 最長2年 |
PEP(Personalized Employment Pass) | 高額所得者が取得できるビザ | 高額所得者や外国人専門家 | 年間S$144,000 | 3年 |
Entre Pass | 起業家ビザ | 外国人起業家 | なし | ・新規は1年間 ・更新1回目は1年間 ・更新2回目以降は2年間 |
出典:シンガポール人材開発省
近年、シンガポールにおいて、就労ビザ取得の条件がより厳しくなっており、移住も難しいのではないかと思われるかもしれません。ただ、シンガポール国内で人材不足になっている分野もあり、ご自身のキャリアがシンガポールで役立つ可能性も大いにあります。
就労ビザに関する情報は変更も多く、日頃から情報収集を行い、時には専門家のアドバイスを受けることも大切かもしれません。移住を希望する方は、ビザ取得の壁に負けることなく、早めに対策を始めてみてはいかがでしょうか?
魅力あふれるシンガポール移住

今回は、シンガポールに移住するための方法や条件、メリットとデメリット、暮らしや仕事の探し方などについて見てきました。物価が高く、ビザ取得の壁も年々高くなっていると言われるシンガポールですが、ご自身のキャリアがシンガポールで求められる可能性は決してゼロではありません。
シンガポールへの移住に興味があったら、まずは情報収集を始めてみましょう。
●為替レートは、127.88円=US$1, S$1=US$0.76(2023年1月15日時点)で算出
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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