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【2025年】シンガポールの物価解説~主要都市との比較&物価とビジネスの関係~

2023年に引き続き、2024年も変わらず「最も物価の高い都市トップ10」の上位(第2位)に選出されたシンガポール。魅力的な旅先として世界中から多くの人びとが観光に訪れる国でもあります。

そんなシンガポールの最新の物価事情を、日本との経済的関係も交えて詳しく見ていきましょう。

シンガポールの物価・費用の事情

シンガポール貿易産業省(MTI)によると、2024年のシンガポールのGDP成長率は4.0%で、予測に反して2023年の1.1%を大きく上回りました。内訳としては、特に情報・通信と金融・保険(GDP成長率4.8%)、卸売り・小売りと運輸・倉庫業(4.7%)、建設(4.8%)が全体のGDP成長に貢献をしていますが、飲食含む産業全体の成長率が昨年と比べて大きく上がっていることにも注目すべきです。

政府の2025年度の成長率の見通しは「1.0〜3.0%」と、昨年と比べて大きな変化はありません。ただし、さまざまな外的要因、特に米国による関税引き上げの影響を懸念しています。各国への関税引き上げ政策によって自国でも貿易摩擦が生じれば、影響を受ける立場であるとの見方を強調しています。

また、物価を語る上でもう一つ重要な為替レート。シンガポールの為替レートはS$1=約111.2円(2025.4.2現在)。シンガポール通貨金融庁(MAS)は輸入のインフレ率の抑制を行い、国内のコスト圧力を抑制させ中期的な物価の安定を確保するため、2021年10月より5度にわたって金融引き締めを行っています。食品の約90%以上を輸入に頼っているなど、輸入品が多く、経済的にも世界経済の影響を受けやすいシンガポールにとって海外のインフレは物価に直接影響を及ぼします。

2025年1月、MASは2024年度の高い経済成長率にもかかわらず、2020年3月以来4年10か月ぶりに金融緩和を実施することを発表しました。これはGDP成長率のペースが前年比で緩やかになることや、世界各国の貿易政策の方向転換など外部要因から誘発されるリスクを懸念し、中期的に物価の安定を図るためとされています。

なお、2024年の総合消費者物価指数(CPI)は平均で2.4%と、2023年の4.8%から低下しています。潮流を読んだ金融政策の効果やインフレ鈍化がここにきて表面化してきた可能性があります。

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それではシンガポールの物価を項目別にみていきましょう。

賃金

2024年度のシンガポール在住者でフルタイムで雇用されている人々の総月収の中央値は*S$5,500(約61万円)と、2023年度のS$5,197(約57万円)から約5%上昇しました。

かねてから国民の生活水準をあげることを国策としているシンガポール。国民のスキルアップ制度などを取り入れ、高収入の職業につけるサポートを行っています。そのような政府の雇用・失業対策も手伝い、過去10年間シンガポールの平均収入は上がり続けています。

*CPF=日本の厚生年金のようなものを含みます

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家賃

シンガポール国内の住宅事情は常に需給バランスが崩れており、住宅価格は購入、賃貸共に高騰している状況が続いています。しかし、2023年12月の住宅価格は前年同月比の6.84%の上昇を見せていますが、2022年第4四半期の29.8%上昇と比較すると、この時点でピーク越えとの見方もできます。

そこから2024年の上昇率は高い前年と比べて第1四半期から4.8%(28%減)と大きく低下。途中上昇はあるものの、第3四半期には前四半期から再び4.44%(26%減)という上昇率に落ち着いています。当初のシンガポール通過金融庁(MAS)による「住宅賃料上昇の鎮静化」の予想が顕在化した形といえます。

シンガポール国民のほとんどが住む、住宅開発庁(HDB=Housing Development Board)が運営している高層マンションの賃料は、HDB3ベッドルームでS$2,500〜S$3,200(約27万円〜35万円)/月となっています。また、より広い居住空間があるエクゼクティブ は3ベッドルームでS$3,400〜S$4,000(約37万円〜44万円)/月と高額になります。

*参考:シンガポール政府機関「Housing & Development Board(住宅開発庁)」による2024年第4四半期の統計

ライフライン(水道光熱費)

シンガポールの政府系企業「SPグループ(SP Group)」傘下のSPサービス(SP SERVICES)では水道光熱費関連アカウントを一括管理しています。SPサービスが発表した、2024年3月〜2025年2月の月平均水道光熱費は以下の通り。ガス代の有無にかかわらず、2024年6月〜2025年2月にかけて全体的に価格が高騰しています。

ガス代を含むライフライン費用
*価格はS$、小数点(¢)以下切り捨て

 2024年3月2024年4月2024年5月2024年6月2024年7月2024年8月2024年9月2024年10月2024年11月2024年12月2025年1月2025年2月
HDB3ベッドルーム120132128124121129128123123117114112
HDB
エクゼクティブ 
168184180172168178180172172163157159

ガス代を含まないライフライン費用
*価格はS$、小数点(¢)以下切り捨て

2024年3月2024年4月2024年5月2024年6月2024年7月2024年8月2024年9月2024年10月2024年11月2024年12月2025年1月2025年2月
HDB3ベッドルーム107118115112109116115111111105102100
HDBエクゼクティブ149163161155151160161153154146140140

交通費

シンガポールでは国土が狭く、交通渋滞などの緩和の目的で自家用購入費用が非常に高くつきます。その代わり、公共交通機関は2022年に2.9%の値上げがあったものの安く設定されています。交通費の安さは、シンガポールの居住者だけではなく、観光に訪れる旅行者にも大きなメリットとなっています。

●MRT(地下鉄)/バスの費用:
大人料金 3.2kmまではカード払S$1.19(約132円)、現金払S$1.90(約211円)、最大料金40.2km以上ではカード払S$2.47(約274円)、現金払S$3.00(約333円)
 
●タクシー費用:
Flag-down fare/ Standard Taxi:S$4.40〜S$5.00(約489円〜555円)、Premium Taxi:S$5.00〜S$5.50 (約555円〜611円)が基本料金となり、この基本料金に距離・時間制運賃、割増料金、予約料金などが加算されます。

飲食費

日系デパートISETANなどの高級デパートからローカルで安価なウェットマーケット(生鮮品市場)まで食材を購入する場所はさまざまです。今回はコスト面では中間程度のColdStrageやFairpriceといった、ローカルスーパーの価格を記載(2025.4.2現在)します。

●お米(岩手ひとめぼれ日本米):S$32.5(約3,600円)/5kg
●鶏肉(オーガニック、胸肉):S$5.90(約656円)/ 250g
●キャベツ(Gold Round Cabbage):S$3.25(約361円)/ 1玉
●りんご(トルコ産ガラ):S$5.99(約666円)/ 900g
●牛乳(Farmhouse Milk ブランド)S$3.73(約414円)/ 946ml

外食費

世界に名だたるミシュラン獲得のお店から屋台のホーカーまで。外食する場所によってその費用も大きく変わってきます。ここでは一般的なカフェとホーカーでの食費例を記載します。一般的に物価が高いと言われるシンガポールですが、高いも安いも食事をとるところ次第というのは、在住者、旅行者の間では周知の事実です。

カフェメニュー(例)
●エッグベネディクト:S$25(約2,780円)
●ワッフル、パンケーキ:S$24〜S$29(約2,668〜3,224円)
●シーザーサラダ:S$24(約2,668円)
●ピザ、パスタ:S$21〜S$34(約2,335〜3,780円)
●ラテ、コーヒー:S$5.5〜S$7.5(約611〜834円)
*参考:Nassim Hill Bakery Bistro Bar、メニュー(2025.4.2現在)

さらに税金9%(2025.4現在)、サービス料が10%がかかる場合があります。

ホーカー(例)
●醤油チキンライス:S$7.0(約770円)
●チキンヌードル:S$8.4(約930円)
●コンビネーションプレート:S$16.8(約1,860円)
(醤油チキン、チャーシュー、ローストポーク、ポークリブから2品選択の場合)
●揚げ餃子:S$7.0(約770円)
●大豆もやし:S$6.0(約660円)
*参考:Hawker Chan、2025.4のメニュー

他国との比較

シンガポールの物価を他国の主要都市と比較した表です。(%の数字はシンガポール対比率です)
*NUMBEO物価比較より
*2025.4現在
*価格はS$、一部の項目を除き、小数点以下(¢)は切り捨てで表示しています。

シンガポール東京ニューヨークロンドンパリ北京サンパウロアブダビ
都市部のアパートメント賃貸(3ベッドルーム)/月7,8313,720 
+110%
11,406 
-31%
7,249
+8%
4,418
+77%
2,750 
+184%
1,674
+367%
4,006
+95%
都市部のアパートメント購入(Sqm毎)29,60713,293
+122%
24,160
+22%
27,512
+7%
18,207
+62%
19,515
+51%
3,240
+813%
7,808
+279%
プライベートプリスクール(幼稚園)全日制一人分/月額1,528687
+122%
4,258
-64%
3,127
-51%
1,048 +45% 908
+68 %
689
+121%
864
+76%
映画料金/席1517
-11 %
26
-42 %
26
-42%
19
-21%
11
+36%
10
+50%
18
−16%
ガソリン/L2.871.63
+76%
1.29
+122%
2.52
+13%
2.80
+2%
1.47
+95%
1.34
+114%
1.04
+175%

シンガポールと日本の経済的関係

シンガポールは日本とは親密な関係にあります。1995年には租税協定が結ばれ、2002年11月には日本初となる経済連携協力「日本・シンガポール新時代経済連携協定」(いわゆる自由貿易協定)が発効しました。これは貿易・投資のみならず、金融、情報通信、人材育成といった分野を含む包括的な二国間の経済連携を図ることを意図した内容になっています。

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シンガポールの物価が日本に与える影響

貿易

日本はシンガポールにとってアメリカ、EU、中国、ASEANに次ぐ主要な貿易相手国となっています。日本からシンガポールへの主な輸出品は、半導体等電子部品 、船舶類 、石油製品 など。そしてシンガポールから日本への主な輸入品は、半導体等製造装置 、光学機器 、有機化合物などが挙げられます。

シンガポールの物価が高騰することにより原材料の価格もあがり、同時にシンガポールから日本への輸入品の価格も上昇します。そのため、シンガポールからの輸入品を利用する日本企業の生産コストが上がり消費者価格も高騰し、日本経済に影響を与える状況となっています。

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投資

一方で、日本の直接投資先はASEANの中ではシンガポールがトップ。シンガポールには多くの日系企業が進出しています。

現在日本法人の進出は4,558社(2024年3月時点)に及び、シンガポールに在留する邦人数は32,565名(2024年10月時点)です。主に東南アジアのハブ拠点として事業展開を目的として多様な業種がメリットを享受しています。シンガポールにとっても日系企業の誘致は、技術の共同研究を行うなどのメリットがあります。

ただし、日系企業がシンガポールに投資する際のここ数年の問題点として、シンガポールでの人件費の高騰、ビザや就労許可取得の困難、煩雑さ、土地や事務所スペースの不足、地価や賃料の上昇、従業員の離職率の高さが挙げられています。

また、シンガポールはアジアで最大の対日投資国でもあります。コロナ禍以降の観光回復を狙ったホテルやリゾート施設の買収、物流施設への投資などを行っています。

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シンガポールの外資導入への姿勢

シンガポール政府は知識集約型経済構造の確立を目指し、先端技術部門、高付加価値産業部門、研究開発部門、ビジネスハブ機能の強化を政策として計画的に行っています。国際的な競争力を高めるためにも海外企業の導入には積極的で、法人税を低くするなど投資優遇措置を行っています。また、研究開発、企業の国際化、中小企業の生産性向上・能力開発、起業を促進するための助成金制度や投資制度など、進出企業へのサポートも積極的です。

しかし一方で外国人がシンガポールで働くために必要なEP(Employment Pass)取得においては、2023年9月からは従来よりも厳格化された「COMPASS」制度が導入された結果、人件費が高騰するなど人材面での外国人の確保は難化傾向にあります。今後、シンガポール日系企業には雇用形態のフレキシブル化や現地採用といった多様化が課題となるでしょう。

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どうなる?今後のシンガポール物価

2025年のシンガポールの物価上昇の動向は、2024年後半に続いて鈍化する見通しですが、世界情勢の変化により見通しが難しいのが現状です。しかし、シンガポール政府は国内で発生しているインフレを重く受け止め、インフレ率の低下対策と物価の安定政策を慎重に行っています。
物価の高騰は国民の生活に影響することはもちろん、シンガポールを投資先とする企業の経済活動、ようやく復活しつつある観光産業や旅行者にも大きな影響を及ぼします。これまでも数多くの難題を乗り越えてきたシンガポール政府の手腕に期待し、動向を見守りましょう。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
●金額は2025年4月2日現在の為替相場(S$1=111.2円)


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