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【物流業界】シンガポール動向レポート!物流業界を徹底分析

シンガポールの物流業界は、地理的優位性やテクノロジー導入による効率性により、物流パフォーマンス指標では常にアジアのトップ層に位置しています。そんなシンガポールの物流業界の特徴を、詳しくみてみましょう。

アジアの物流拠点としてのハブ シンガポール

シンガポールのLPI(物流パフォーマンス指標)

参考:THE WORLD BANK

*LPI(物流パフォーマンス指標)はコロナ禍で2020年は出ていません。評価は5段階評価です。

世界銀行が2年に1度まとめるLPI(物流パフォーマンス指標)は、効率性の高い国々はいずれも政府と民間や学術界と緊密な協力関係を築き、運輸サービスやインフラ、物流の改善や開発にあたっていることを読み取ることができます。

最新版の2018年では、ドイツが連続首位、日本は2016年12位から5位へとランクアップ、シンガポールは5位から7位とランクダウンしましたが、日本、シンガポール共にアジア諸国の中では首位と2位をマークする形となっています。

シンガポールの税関は10分以内に電子許可申請の90%を処理し、物理的な貨物の90%を8分以内に処理していると言われています。これは、2016年度のLPIの「通関手続きの効率度」項目では世界1位の処理力となっています。

周辺国との連携によるサプライチェーンの成長

コロナウィルスによるパンデミックの中で、世界中のサプライチェーンが原材料調達の遅延などにより、打撃を受けました。しかし、シンガポールはその渦中に早急に打開策を見出し、急激に回復、そして成長を遂げています。その打開策の一つが、2021年2月3日に発表された東南アジア製造アライアンス(Southeast Asia Manufacturing Alliance:通称SMA)の立ち上げです。

これはシンガポールに拠点を置く企業が、周辺国(インドネシアやベトナム、マレーシアなど)の工業団地運営会社と協定を結び、製造拠点の展開やアクセスを可能にするというものです。利点としては、供給元の製造工場を複数持つことで、ロックダウンなどの非常時の供給遅延を解消することができます。

また、周辺国への進出の際、政府のサポートを受けられる利点もあります。政府側は生産性の効率化を狙い、次世代製造技術の導入を推進しており、シンガポール経済開発庁(EDB)やシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)、南洋理工大学(NTU)、企業が中心となって開発と実践を行っています。

このように、シンガポールはロジスティクスとサプライチェーン事業を支えるため、革新的な活動を実施し、新たなサプライチェーンソリューションを提案し続けています。

シンガポールの物流の種類〜空路〜

航空輸送産業について

アジアのハブ空路としてのさらなる発展を遂げるべく、シンガポール政府は積極的なサポートを行っています。

シンガポール民間航空庁(Civil Aviation Authority of Singapore )が2017年に発表した航空輸送産業変革マップ(The Air Transport Industry Transformation Map)では、2015年から2020年にかけて実質付加価値16%の成長を達成し、年率3~4%の生産性向上を目指すとしています。

さらに、2025年までにこの分野で8,000人以上の新規雇用を創出する目標を掲げています。

具体的には下記4つの推進カテゴリーがあります。

①イノベーション
・航空業界が直面する緊急の課題を解決するために、新しい技術やプロセスの実験を行う企業をサポート。
・自動手荷物スキャンステーション、自動セルフサービス乗客処理などが検討されており、導入、商業化、輸出準備のサポートも行います。

②生産性向上
・業務プロセスの再設計や新しいビジネス手法の推奨など、生産性向上のためのさまざまな取り組みが行われています。
・機内食センターでは自律走行車(AGV)を導入し、食料品店とミールトレーラインの間で食料品を運ぶことに成功し、準備時間を40%近く短縮しました。
・無人配送車とAGVの使用は、現在、他の空港のプロセスでも検討されています。

③雇用とスキル
・航空業界の成長に対応するため、能力や技術を向上させる教育の機会を学生たちに与えています。
・生産性をあげることにより、雇用を改善し、個々の従業員のスキルを向上させることも目指しています。

④企業
・地元企業を成長させ、海外進出を促進することを目的としています。
・ドローンの開発により、チャンギ空港周辺の無人飛行機を監視するシステムなどを検討しています。

チャンギ空港第5ターミナルプロジェクト

また、コロナウィルスの影響により、中断されていたチャンギ空港の第5ターミナルプロジェクトが再開されました。現在は年間旅客対応能力8,500万人の4つの旅客ターミナルと、7つの貨物ターミナルからなる航空貨物センターが備わっています。

第5ターミナルが完成するとさらに年間約5,000万人の旅客の移動に対応可能となり、シンガポールが航空業界において、長期的に成長する能力を確保することとなります。広さは現在のチャンギ空港とほぼ同面積の1,080haです。

すでにアジア最大の貨物空港として名高いチャンギ空港ですが、このプロジェクトによりシンガポール国民はさらに恩恵を受けることができるようになりそうです。

シンガポールの物流〜陸路〜

陸上輸送産業について

シンガポールの陸路の課題の一つとしてあげられるのが、信頼性の高い公共交通システムの構築です。世界でも最も人口密度の高い国の一つとされているシンガポール。陸運産業変革マップ(Land Transport Industry Transformation Map)により、バスや鉄道サービスを向上させ、人々の通勤時間を短縮することを目標としています。

また、2030年までに最大8,000人の雇用をこの業界にもたらすことも目標として掲げています。画期的な案として、ドライバーのいない自動運転車両の導入により、道路の交通パターンを変化させることや、鉄道や道路作業を機械化することにより作業員の安全を確保することなどが挙げられます。

また、MRT(シンガポールの地下鉄)を約360km延長することにより、国内の10世帯のうち8世帯が駅まで徒歩10分以内でアクセスできるようにするプロジェクトも進行中です。

このような人口密度の高い国の交通網プロジェクトは、同様に人口が増加しているインドや中国の交通問題の解決の糸口にもなり、多様なビジネスチャンスがあるでしょう。

小売業などの配送サービスの増加

コロナ禍を通して、シンガポールの人々が自宅で過ごすようになり、ニーズが高まったサービスが日用品などのデリバリーです。人々はなるべく配送料をおさえ、スピーディーに近くの店舗から商品を取り寄せる傾向が強まりました。

これに伴い、ローカル小売業が必要としているビジネスパートナーは信頼のおける配送業者です。配送に関する消費者のストレスを減らし、小売業の事業を拡大させることがシンガポール国内でも課題となってきています。

シンガポールの物流〜航路〜

海運産業について

シンガポールの航路もまた、世界有数の国際的なハブ港です。船舶の入港は毎年13万隻、また、シンガポール海域には常時約1,000隻の船舶が航行しており、毎分1,000t以上の貨物が港で取り扱われています。

それに関わるシンガポールの海運業界も規模が大きく、約5,000社で構成されており、従業員は17万人以上と言われています。海運産業変革マップ(Sea Transport Industry Transformation Map)では、2025年までに同産業をS$45億成長させ、5,000人以上の雇用を創出することを目指しています。

120カ国以上、600以上の港に接続されたシンガポールのグローバルネットワークは、世界のどこにでも効率的に商品を輸送することを可能にしています。

また、自動化やデジタル化、リアルタイムのデータ共有により、港湾管理および海上輸送産業の効率性が世界的に向上し、新たな技術が海運のあり方を変えつつあります。

もう一点、世界各国は、グリーンテクノロジーや液化天然ガスなどの代替燃料の開発に資金を提供しています。政府もこれらの分野においては、海外の潜在顧客に対してビジネスチャンスが大いにあると述べており、開発企業との協力を積極的に行っています。

シンガポール港

シンガポール港は2021年にコンテナ取扱量過去最高を記録し、2010年以来中国の上海港に次いで世界第2位の地位を維持しています。

しかし、取扱量の伸び率は低下傾向にあり、海上輸送産業の効率性や技術力を向上させることが今後の課題となっています。

シンガポール港は、シティとパシルパンジャンの2つのエリアに分かれていますが、将来的には島の南西部に建設中のトゥアス港に移転することが決まっています。

トゥアス港

現在第1期工事が終了し、開港式典でリー・シェンロン首相が「トゥアス(新港)は次世代の港となる」と述べるほど、トゥアス港はまさに新たな技術が集結した港です。

自動化、ロボット化、最新のコンテナ処理装置やITシステムを使って、ヤードや埠頭の作業が自動化されます。また、オペレーションに関してもデータ分析により、最適化が可能となるようです。

2040年の最終完成時には世界最大級の完全自動化ターミナルを目指し、シンガポール国内5カ所のコンテナターミナルを段階的にトゥアス港に集約します。

シンガポールの物流会社について

日系企業が多く進出

ここで日本企業の進出例を何社か、例に出してご紹介しましょう。
鴻池運輸は、アジア域内の現地法人とのネットワークを活かし、三国間貿易に関わる実務サポート業務や現地物流の提案を行っています。

また、日通は、世界47の国や地域に広がる約700店の支店(2021年3月末)の流通網を活かし、世界各国の海上貨物、航空貨物、鉄道貨物などの輸送手段を組み合わせることで、リードタイムとコストを考慮した最適な輸送手段を提案します。

SG佐川アメロイドは、コンテナ輸送事業とロジスティクス(倉庫)事業を主たる事業とし、所有する約500台の車両を活かしたシンガポール全域への輸送を可能にするなど、企業それぞれに強みを活かして事業を展開しています。

引っ越しや配達サービスが得意な企業も

製造業などとの連携で物流事業を展開している日系企業もあれば、一般消費者をターゲットとした引越しやデリバリーサービスを主に展開している企業もあります。(例:日本通運シンガポール、シンガポールヤマト運輸株式会社、商船三井ロジスティクスシンガポールなど)

このような日系企業は日本人スタッフの対応が可能であったり、梱包など日本人ならではの、きめ細やかなサービスが特徴的です。

大手グローバル外資系企業

大手グローバル外資系企業などはシンガポール政府のサポートのもと、シンガポール拠点の開発拠点などを開設しています。

例1:DHL社
「革新的なソリューションを開発する拠点」として2015年12月に、シンガポールで「アジアパシフィック・イノベーションセンター」(APIC)を開設しました。ドイツに本社を置く同社がドイツ以外では初めて開設したイノベーションセンターです。
アジアの物流の市場調査や未来予測を進めていくと共にシンガポール経済開発庁(EDB)の支援を受け、下記のようなロジスティクス業務に変革をもたらす技術を提供しています。

・倉庫内の組み立て業務やピッキングに使用されるAR(拡張現実)スマートグラス
・医薬品など緊急性の高い製品の配送に使われるドローン
・機械間通信(M2M)センサーを活用して車両の稼働率を30%向上させるメンテナンス・オン・
デマンド(MoDe)車両
・輸送の高速化、効率化を実現する自動運転車

例2:DBシェンカー社
 ドイツ国鉄(DB)傘下の国際物流大手DBシェンカーは2020年、同社における過去最高額の投資を行い、シンガポールに航空貨物とコントラクトロジスティクス(物流一括受託)の地域ハブ拠点 「レッドライオン」を開設しました。
さまざまな先端技術を導入することにより、人手の作業に比べて生産性を2倍に引き上げながらも、貨物を処理する時間は40%短縮することを可能としました。

・自動倉庫、パレットリフターを備え、これらと併せて貨物を作業者のもとまで運ぶGTP型ロボット、デジタルピッキングシステム、コンベヤーシステム、AGV(自動搬送車)などを運用
・3Dビジョン技術とロボットアーム3本を使って多言語のラベルを製品に貼るロボットラベリング・システムをDBシェンカーとして初めて採用(自社開発)
・建物には環境負荷を軽減するため、1400枚の太陽光発電パネルを整備し、エネルギー使用量を34%削減

シンガポールの物流会社のご紹介

MOL Logistics (Singapore) Pte.Ltd.

海運会社大手の商船三井系の引越し業者です。シンガポール国内の引越しはもちろん、シンガポールから日本や他国への引越しサービスを提供しています。世界各地に拠点を持つ商船三井の系列のため、世界各国の税関事情に精通しており、安心して質問をすることができます。

海運会社ならではの航路輸送はもちろん強いですが、あらゆる輸送モードにも対応しており、お荷物のお預けから配達までお客様の立場に立った最大限のご提案を受けることができます。

<企業情報>
MOL Logistics (Singapore) Pte.Ltd.(商船三井ロジスティクスシンガポール)
住所:15 Changi Business Park Crescent#04-10 Haite Building, Singapore 486006
電話番号:65 6241 8170
WEBサイト
企業情報の詳細・お問い合わせはこちら

明るい展望のシンガポールの物流業界

シンガポールの物流業界の特集はいかがでしたでしょうか?常にアジアの物流システムを牽引し続けているシンガポールですが、トップの座に甘んじることはなく、さらなる発展を目指しています。世界をリードする革新的な技術開発が期待され、企業との協力体制も確立されています。多様な業界とのつながりもあり、ビジネスチャンスが非常に多い業種といえるでしょう。

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●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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