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【不動産業界】2022年度 シンガポール動向レポート!不動産業界を知る

コロナ禍でも勢いが止まらないシンガポールの不動産業界。その特徴や動向、シンガポールの不動産会社について見ていきましょう。

シンガポールの住宅市場

国有地がほとんどのシンガポール

シンガポールの住宅市場の特徴として一番に挙げられるのが「国土のほとんどが国公有地」ということです。大きく分けてFreehold Estate(Fee Simple,・Life Estateに分けられる)、Leasehold Estate、Estate in perpetuityの3種類があります。シンガポールで主に不動産取引の対象となっているのがこの中のLeasehold Estateです。

Leasehold Estateとは、国からのリース期間(99年または999年)が満了すれば、国に返還される不動産のことです。住宅開発庁(Housing Development Board)によって付与されるLeasehold Estateは、リース期間が30年、または60年の場合もあります。

外国人の所有には一定の制限も

外国人・外国人法人などによる居住用不動産の取得には、シンガポールの居住用不動産法によって一定の制限が設けられていますが、法務大臣の許可を得ることにより所有が可能となります。更地や低層集合住宅、戸建て住宅などは許可が必要ですが、下記に掲げる物件については許可が不要です。

・多層階住宅のユニット・コンドミニアムのユニット
・認可を受けたコンドミニアム内にある土地付き住宅
・リース残余が7年を超えていない土地付き住宅
・商業用ショップハウス
・工業用・商業用不動産 ・規定に基づいて登記されたホテル
・エグゼクティブ・コンドミニアムのユニット、HDBフラット、HDBショップハウス

住宅の種類

東京都23区とほぼ同面積のシンガポールの人口は、約560万人。人口密度の高い国土ゆえに、高層の集合住宅が多いことが特徴です。地価も当然高いため、一戸建て家屋はもとからの住民、もしくは一部の富裕層でなければ、購入は非常に難しい状況です。よって、シンガポールの住宅の種類は大きく分けて、コンドミニアムとHDBフラットに分けられます。

・コンドミニアム
プライバシーや安全性を重視した民間コンドミニアムです。入り口にはゲートが設けられ、守衛が常駐のためセキュリティも良く、プールやジム、子ども向けプレイグラウンドなどの付属施設が充実しているという特徴があります。

日本人を含む外国人駐在員やシンガポール人の富裕層が多く生活しています。HDBフラットのように入居制限や購入制限もないため、富裕層のシンガポール人が賃貸営利目的で投資用に購入しているケースも見られます。

・HDBフラット
シンガポール国民のほとんどが住む、住宅開発庁(Housing Development Board=HDB)が運営している高層マンションです。政府が所得や入居形態、購入物件の部屋数などに応じた助成金を給付することで低所得者もマンションを購入できる「持ち家政策」を実施していることから、国民の9割はHDBを購入しています。

購入できるのは、シンガポール国民と永住権(PR)をもつ外国人の成人(21歳以上)です。PR保持者は新築は購入できない(中古のHDBは購入可能)、単身者の購入は年齢が35才以上であることなど、さまざまな政府による制約があります。

その他、住居を契約するまでの期間、数週間暮らすためのサービスアパートメントなどもあります。

住宅価格の推移

基本的に常に右肩上がりのシンガポールの住宅価格。2018年には海外からの投資などによる資金流入により、不動産価格が高騰し続けたことを受け、不動産投機抑制策により経済成長のペース以上に不動産市場が過熱するのを防ぎました。

しかし、ここ最近のコロナ禍による内覧の中止や外国投資の落ち込みがあったものの、需要が供給を上回り、再び住宅価格はあがる一方です。

コロナの大流行で建設が中断されたことによる供給不足と、住宅のアップグレードを求める人々の増加、入国制限緩和による裕福な外国人の流入による需要急増と、需要と供給のバランスが崩れていることが原因として考えられます。

住宅価格の上昇を具体的な数字で表すと、民間の住宅価格は2020年1〜3月期以降に約9%、公団住宅の再販売価格も同期間に約15%の上昇2021年、住宅価格は10.6%上昇し、これは2010年に17.6%上昇して以来の最大の上昇幅となります。

これを受けて政府は、再び約3年半ぶりとなる2021年12月に、住宅ローンの貸付制限の厳格化、住宅購入時の印紙税引き上げ(ただしシンガポール国民が初めて購入する場合は印紙税なし)、高級物件への増税などの不動産投機抑制策を発表しました。

シンガポールの住宅価格を左右する原因の一つは、「供給」によるものであることが読み取れます。

シンガポールの不動産業界とは

シンガポールの不動産業界を支える業種はさまざまです。

ディベロッパー(Developer)

街の再開発事業、リゾート開発、大型商業ビルの開発、マンション開発など

不動産コンサルタント(Property Consultant)

不動産の購入や売却、管理方法、活用法などの悩みを抱える人にアドバイスやサポートを行います。

不動産投資信託 (Real Estate Invest Trustment(REITS))

投資家から集めた資金で不動産への投資を行い、その収益(賃貸料収入や売却益)を投資家に分配する金融商品。

ファシリティマネジメント(Facility Management Company)

ファシリティマネジメント(Facility Management)とは、単純に設備や建物を維持管理することから、不動産設備などの無駄を省くことによる経営効率の改善、そこで働く従業員の業務効率の向上などに取り組むことまで、幅広い管理のことをいいます。

不動産テクノロジービジネス(Property Technology Business)

不動産の活用に、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの技術を導入し、利便性の高いサービスや製品を生み出す取り組み。不動産分野において、消費者側に立った、問題解決を考え、提供するサービスです。

不動産業者(Property Agencies)

不動産売買や不動産投資、賃貸物件の仲介や紹介などを行う、消費者に一番近い不動産業界の業種といえます。シンガポールには企業もありますが、個人事業主で不動産仲介を行っているフリーランスの不動産仲介業者も多くいます。

シンガポールの不動産業界の動向

不動産ITMについて

2018年に発表された不動産ITM(The Real Estate Industry Transformation Map)は、施設管理(FM)および不動産取引サービス(Property Transaction Services)の変革に重点を置くものです。不動産業界が直面しているさまざまな課題や消費者の期待を汲み取り、不動産会社、不動産取引弁護士、不動産仲介業者など、不動産に関わるあらゆる関係者と共につくりあげた策定です。大きく2つに分類されます。

①イノベーションを受け入れたテクノロジーの活用
②プロフェッショナリズムの強化、人材のスキルアップ

・施設管理(Facility Management)のITMの一例
施設のリアルタイムモニタリング、予知保全、自動化など、建物の運用効率を向上させる施設管理のデジタル化を目指します。これには建築建設庁(BCA)の支援が重要な役割を担っています。

また、デジタル化を実現するための研究開発の促進や、革新的な企業の育成に貢献します。さらに、デベロッパー、コンサルタントなどはデジタル化に適した設計・施工をおこなうことが奨励され、プロフェッショナルの強化、人材のスキルアップにつながります。

・不動産取引サービス(Property Transaction Services)のITMの一例
政府の不動産関連データを業界と共有し、企業が時間のかかる業務プロセスを自動化。不動産取引を迅速かつ効率的に処理することが可能となります。

2018年には手始めに「HDB再販ポータル」を立ち上げました。政府が所有者の最低居住期間や不動産所有権のデータを企業に提供するデジタルプラットフォームを構築することにより、不動産代理店は、より価値の高い業務に集中することができます。このような取り組みは、順次実現される予定です。

また、不動産取引のプロセスを合理化するため、契約書テンプレート、チェックリストを作成し、すでに活用されています。契約書のテンプレートは、契約条件が可能な限り公平になるように設計されているため、取引関係者の利益を保護するのに役立ちます。

不動産ITM25とは?

2022年9月に政府が発表した不動産ITM25は、2018年の不動産ITMをリニューアルさせたもので、コロナ禍を経て、消費者の嗜好や不動産取引への期待の変化に対応していくものになっています。

・ダミー、不正確、未承認、重複の不動産広告の問題を排除することを目的としたデジタルプラットフォームを構築することで、消費者が信頼して不動産検索することを可能にする。

・不動産販売員(RES)が適切で、デジタルに精通し、変化に強い人材となるための継続的専門能力開発(CPD)システムを強化する。将来の経済状況に備えるために不動産販売員が持つべき能力、知識を向上させる業界認定スキームを実施することに着手する。

シンガポールの不動産会社の特徴

不動産仲介から管理まで幅広い不動産を取り扱う

シンガポールの不動産会社は不動産仲介や購入サポート、賃貸物件紹介などの基本的なことはもちろん、移住者や駐在者のビザ取得サポート、投資法人設立のサポートなど幅広い業務を行っています。

また、住宅・オフィス・店舗・倉庫・工場物件の提案、法人向けコンサルティング会社設立における各種専門業者の紹介やマネジメントなど行っている会社もあります。

日本の不動産会社との相違

シンガポールと日本の不動産会社との大きな相違は、売主・買主双方の代理人を兼務する「両手取引」ができないところにあります。また、仲介手数料の支払い方法も異なります。

このような両手取引ができないことにより、売主や買主に不利益が生じることがなく、透明性の高い取引が可能となります。また、手数料に関してもシンガポールは高額物件が多いことから、1%でも経営が成り立つようにできています。そのため、市場での売買が活発に動きます。

日系企業なら日本語対応も

シンガポールには不動産業の日系企業も多くあります。日本人がシンガポールで物件を借りようとした際の日本とシンガポールの賃貸契約の違いをサポート、日本人が好むフラットを紹介してもらいやすい、日本語で応対してもらえるなど、慣れない環境の中でも心強いサポートを受けることができます。

シンガポールの不動産会社のご紹介

東京不動産(TOKIO PROPERTY SERVICES PTE LTD)

シンガポールでの日系取引実績No.1。シンガポールでの設立から39年、住宅、事務所、工場、倉庫の不動産仲介を行っています。また、野村不動産株式会社と資本提携を行い、日本の不動産投資のご案内もしております。

日本人スタッフが在籍していることからお問い合わせなど全て日本語で対応可能。物件の内覧時なども日本人スタッフが同行するのでオーナーや売主との言語や文化による行き違いも生まれません。

トラブルになりやすい契約期間中の修理手配、退去前クリーニング、敷金の回収に関しても現地での多様な経験を活かししっかりアフターケア。これからシンガポールに駐在される方、住み替えを検討している方の頼れる存在です。

【企業情報】
東京不動産(TOKIO PROPERTY SERVICES PTE LTD)
住所:20 Kramat Lane #03-12 United House, S228773
最寄り駅:Dhoby Ghaut駅
電話番号:6737 5187
WEBサイト
企業情報の詳細・お問い合わせはこちら

進化するシンガポールの不動産業界

シンガポールの不動産業界は世界中の投資家や労働者、高所得者の移住などにより常に活発な動きを見せており、それは不動産価格の推移にもあらわています。注目の業界だけに政府のITMロードマップも分業によるデジタル化により、さらに生産性と透明度を高め、プロフェショナルな人材を育成することに注力しています。より消費者に分かりやすい業界へと邁進することでしょう。

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●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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