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アジアから見るシンガポール〜シンガポールとアジア諸国を徹底分析~

金融、物流、製造など多方面において、アジアの中心として躍進を続けるシンガポール。国の成長にはどのような理由があるのでしょうか?立地や周辺アジア諸国との関係から探ってみましょう。

アジアのハブ~シンガポールの強み~

シンガポールはアジアのハブとして物流、交通、人材、金融やビジネスを牽引している存在として知られています。

ビジネスがしやすい

ビジネスにおいては会社設立の容易さ、税制の優遇、研究開発へのインセンティブなどの政府のサポートもあり、スタートアップ企業からグローバル企業までがシンガポールを本拠地として進出しています。また、多様性のあるビジネスエコシステムが構築されていることから、多くの企業が協働し、専門知識やネットワークのつながりを広げることが可能です。このことを裏付けるかのようにアジアのイノベーション(革新的)な都市のランキングのGlobal InnovationIndex 2023(インプット)においては2020年より連続1位を取得しています。

立地(アクセス)が良い

陸路、海路、空路において東南アジア各国からのアクセスが良い立地にあるシンガポールは、物流チャネルにおいても重要な役割を果たしています。2023年の世界銀行のLPI(=物流パフォーマンス指標)では世界で1位を取得。税関の効率性や物流インフラ整備などが評価されています。海運産業においては入港トン数、バンカー(燃料)販売量、コンテナ処理量がいずれも過去最高を更新し、積み替えハブとしては世界1位の実績を誇っています。

空路では、数々の団体の「世界空港ランキング」にランクインするチャンギ空港があります。約80カ国、300都市への路線があり、乗り入れている航空会社は100以上。2023年は58,900(万人)の乗客数でした。スムーズでストレスフリーな人の移動を可能とする、自動出入国レーン導入が記憶に新しい空港です。また、言うまでもなく、乗客の輸送だけでなく国際貨物輸送としても世界のハブ地として重要な役割を果たしています。

貿易

シンガポールはその立地の良さから昔から貿易の拠点でもあります。主な輸出品目は半導体などの機械機器。シンガポール企業庁などによると、シンガポールの発効済みFTA件数は、28件(2023年8月時点)となっています。このことによりシンガポールの企業や進出した企業は、世界の主要経済国との取引を低関税もしくは無関税にすることが可能で、かつシンガポールは輸出の競争力が保たれます。このように、グローバル企業の誘致はシンガポールの輸出の活発化に繋がり、天然資源や農作物の乏しいシンガポールの経済発展を支えています。

シンガポールの言語

シンガポールの公用語は、英語・中国語(北京語)、マレー語、タミル語の4言語です。多民族国家、移民が多い国家の成り立ちであることから、文化の存続やシンガポールに多く住む民族への配慮が見られます。使用言語の割合は英語が48.3%、中国語が38.6%、マレー語9.2%、タミル語2.5%、その他1.4%で英語の使用割合が圧倒的に多くなっています。教育やビジネスの場において事実上英語を使用することにより、英語を話せる人材が豊富になり、外国企業がシンガポールで活動しやすい環境を作れるなど経済的な利点もあることから、政策として英語教育が推進されてきた歴史があります。

高度な教育と人材

シンガポールは資源の少ない代わりに人材に投資を行ってきた歴史があり、その教育水準の高さゆえに諸外国からは教育移住をする人たちがいるほどです。2022年度の「学習到達度調査(PISA)」*では、シンガポールは数学、科学、読解力全ての項目において1位となりました。また、シンガポールは教育政策でバイリンガル教育を行っているため、英語と少なくとも、もう1つの言語を操ることができます。さらにキャリアアップや高度な職業スキルを身につける国の支援もあり、高い教養とスキルを身につけた人材が多くいます。加えて、自国民だけではなく、世界中から優秀な人材も集まり、人材競争力ランキング(World Competitiveness Center2023年)ではアジア1位を誇っています。

*世界各国の15歳の子どもを対象とした国際学力テスト

シンガポールとアジア諸国

シンガポールとマレーシア

第二次世界大戦後、シンガポールはマレーシア連邦の一部となりましたが、マレーシアのマレー人優遇政策によりわずか約3年で独立しました。そのため、当初は対立の姿勢が両国にはありましたが、現在は互いに協調方向にあります。輸入、輸出共に双方にとって主要貿易相手国の関係にあり、マレーシアの対内直接投資総額の2割強がシンガポールからという関係にあります。2024年にはマレーシア南部とシンガポールの一部、ジョホール・シンガポール経済特別区(JS-SEZ)の共同開発に関する覚書を締結。新鉄道建設の推進、両国間の貿易拡大や人の行き来の促進、投資を後押しするエコシステムの発展が期待されます。

シンガポールとインドネシア

2022年度は輸出入ともに過去最高額を更新したインドネシア。最大の輸入相手国は中国、次いでシンガポール、日本です。シンガポールはインドネシアにとって主要な投資元であり、2022年度、2023年度ともに投資額は首位。投資分野は基礎金属・金属製品・非機械および器具、鉱業分野となっています。金融業界においては2023年にシンガポール通貨金融庁とインドネシア中央銀行がQR決済による相互接続を開始。シンガポール、インドネシア両国において自身の国の金融スマホアプリで決済・即時送金を行うことが可能となりました。

シンガポールと台湾

シンガポールは「一つの中国政策」(=“One China” policy)を支持しつつ、実質的に台湾との交流を深めている関係でもあると見られています。シンガポールにとっては5番目の主要貿易相手国となっています。2023年1月〜9月期の台湾の対内直接投資で最大の投資はシンガポールからで、DBS銀行から台湾の星展商業銀行への増資でした。また、2022年の対外直接投資では最大の投資先がシンガポールで、貨物運送などへの投資など全体の約33%を占めました。(いずれのデータも中国を除く、認可ベース。)

シンガポールと日本

日本とシンガポールは政治的にも懸念事項もなく、関係は良好にあります。2002年には「日・シンガポール経済連携協定」が締結され、貿易・投資の自由化、金融、情報通信、科学技術、人材育成など幅広い分野での連携がなされています。

貿易の主要品目は輸出・輸入ともに電気機器や一般機械。常に日本の輸出超過にあります。2022年に両国の貿易は2桁増となりましたが、2023年度には世界的な半導体需要の現象に比例して、一転して縮小傾向となりました。また、シンガポールはアジアで最大の対日投資国でコロナ禍以降の観光回復を狙った不動産投資などがされています。一方、多くの日系企業が進出しているシンガポールですが、人件費、経営コスト、ビザ取得の困難さの問題に円安が負担増に拍車をかけています。

シンガポールの発展は「人材」と「協調」から

シンガポールは古くから貿易の観点からはアジアの中継点として立地に恵まれていますが、資源や作物が豊富な土地ではなく、決して豊かとはいえませんでした。そこで「人材」こそ資源と、「人」の教育に力をいれました。また、多民族国家ではありますが、民族対立が起きないよう、全ての民族に配慮した政策が取られています。そうして政情を安定させることは、諸外国からの投資を呼び込むことに好条件で、多くのグローバル企業を誘致することに成功しました。また、アジア周辺諸国とも良好な協力関係を築くことで、あらゆる産業分野においてアジア全体の経済を牽引していくことにも成功しています。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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