オンラインMBAとは?海外オンラインMBAの費用やメリット・デメリットを解説
コロナ禍も明けて、グローバルビジネスの風が再び活気づくなか、多くのビジネスパーソンの間でMBA取得が大きな目標となっています。しかし、MBA取得はスクール費用のほか、海外なら留学費用や滞在費、語学試験の難易度の高さなど超えるべきハードルが多いのも事実。
しかし、世の「仕事と家庭を両立させたい」、「働きながらキャリアアップしたい」、「お金をかけずにMBA取得したい」という声に応えるために、現在、世界中いつでもどこでもMBA取得が目指せる「オンラインMBA」が注目されています。
オンラインMBAとはどういうものか?フルタイム留学との違いは?そのメリットとデメリットについて解説していきます。
オンラインMBAとは?
近年では海外でのビジネス展開を視野に入れる動きが活発化し、個人法人問わず、グローバルで活躍したいというビジネスパーソンが着実に増えています。意識の高いビジネスパーソンにとって経営学や企業戦略、財務会計など、多方面の知識を学べるMBA取得は大きな目標のひとつ。
そんな中、今日ではネット上でMBAの授業が受けられる「オンラインMBAプログラム」が注目を浴びつつあります。オンラインMBAプログラムではその名の通り、スクールに通うことなく世界中どこからでもMBA取得を目指すことが可能で、「お仕事や家庭と両立できる」、「現地での生活コストを浮かすことができる」などの理由から人気が高まっています。
オンラインとはいえ、プログラムの質や学びの量は変わらず、通学でのフルタイムMBAと同等の質の高い実践的な授業を受けることができます。評価の点でもオンラインだからといって不利な扱いを受けることはありません。従来では海外MBAは超えるべきハードルが高く、スクール入学の条件も厳しかった面がありますが、オンラインMBAによってその障壁は大きく下がったといえるでしょう。
学習期間
オンラインMBAの学習期間はスクールによって異なります。日本の国内MBAは2年で修了することを前提にプログラムが組まれており、実際に2年で全カリキュラムを終える方が多数ですが、海外MBAでは英国が1年、米国や欧州では2~5年程度とスクールによって幅広く、修了までに平均して3年はかかるといわれています。
カリキュラム内容
オンラインMBAを提供するスクールは、それぞれ独自のカリキュラムを掲げています。ただし共通しているのは、オンラインでもフルタイムと同じように、経営学を始めとするさまざまな講義を行い、基礎の学習後に実践編に移行するカリキュラムがしっかり組まれていることです。
大半のスクールで基礎コースと上級コース、コア科目とエレクティブ科目というように二段階式の課程が定められているほか、ディスカッションやグループワークなどで他者の視点を交えながら実践的な学びを得ることができ、フルタイム同様に学習効果の高まりを肌で実感できます。
財務会計やグローバルビジネスに重きを置いたものやイノベーションとテクノロジーを重視したものなど、スクールによって専門領域はさまざまなため、WEBサイトや説明会を通してどれが最も自身の目標に合致しているかを確認すると良いでしょう。また、オンラインMBAのスクールの中には、日本語と英語のハイブリッド方式が用意しているスクールもあり、英語に自信がない方でも安心です。
完全オンラインと一部通学
オンラインMBAでは、「完全なオンライン型」と「場合によっての一部通学」の2パターンが用意されているところもあります。オンラインMBAはいつでもどこでも授業が受けられることが魅力ですが、現地のネットワークや対面での学びを重視したい方は、場合によって一部通学を選択することもできます。
国際認証も
オンラインでも密度が濃く、質の高いMBAプログラムが受講できるスクールの指標として、MBAに関する国際認証が挙げられます。MBAの国際認証は、MBAプログラムが登録機関の定めた評価基準を満たしている場合に、ビジネススクールに付与される認証です。オンラインMBAを検討する場合は国際認証を取得しているかどうかも考慮しましょう。
オンラインMBAの費用は?
フルタイムMBAとオンラインMBAでは必要となる費用が変わってきます。フルタイム留学であれば費用のほかに現地での滞在費や交際費等でも約200万〜300万円は考慮しておかなければならないため、通常、入学から修了まで米国MBAでは総費用約2000万円以上、アジアMBAでも1000万円以上が必要です。
一方、オンラインMBAの費用はスクールによって幅がありますが、人気のある主要スクールの費用を見てみると、日本国内オンラインMBAの場合は300万前後、海外オンラインMBAだと600万〜800万円前後のようです。日本企業との共同でオンラインMBAプログラムを実施しているところでは比較的安く300万円前後、英国のWarwickをはじめとする海外MBAのスクールでは600万〜800万円前後が主流となっており、どちらも通学による取得と比較すると安く収まることがわかります。
オンラインMBAのメリットは?
オンラインMBAはフルタイムと異なり、「場所を問わない」、「経済的な負担が軽い」、「仕事や家庭と両立ができる」など数々のメリットが存在します。フルタイムでのMBA取得が難しい方にとっては非常に有益なプログラムです。
費用を抑えられる
前述したように、フルタイム留学のMBAと比べてオンラインMBAは、国外共にほとんどが半分ほどの費用で済みます。これに加えて渡航費や現地での生活費もかからないため、単純に予算としては学費と教材費、通信費用だけ考えておけば良いでしょう。通常のMBA取得と比べて非常にリーズナブルな金額で取得できるのは大きな強みです。
仕事との両立
MBA取得のために留学するとなると、退職や休職といった手段を取らざるを得ませんが、オンラインMBAであれば仕事や家庭がある方も、スケジュールの組み方によって両立が可能です。急な出張や転勤があってもパソコン1つあれば対応できます。働きながらインプットとアウトプットができるため、知識習得やキャリアアップを効率よく目指すことができるのも特徴です。
どこにいても学べる
通信環境が整っていれば世界中どこにいてもMBAが取得できるというのは何より大きな魅力でしょう。オンライン上のみで権威のあるMBAスクールの講義を受けることができ、現地通学者と同じ学位を取得することができます。
英語力の向上
フルタイム留学と同様、オンラインMBAでも課題は基本的に英語のため、英語力の向上が見込めます。数多くの文献を読み、自身で論文を執筆し、動画授業で分析や考察を行うため、読み書き能力が向上するのは当然ですが、そのほかにもリアルタイムで参加できるバーチャルクラスなど英語で意見交換をする機会もあるため、総合的な英語力向上が望めるでしょう。
通常、国内MBAでは日本人が日本語で講義を行います。あまり英語力に自信のない方のために、日本語と英語のハイブリッドの課程を選択できたり、日本語のサポートテキストが付随することもありますので、自身が希望するスクールの要項をチェックしてみてください。海外オンラインMBAでは、英語のみの授業なので必然的に「生きた英語」が身に付きます。
質問のしやすさ
通常の対面授業では周りの反応や教授の顔色などを伺いつつ、積極的な質問ができないといった方も、オンラインでは質問がしやすい環境が整っているといえるのではないでしょうか。通常の対面と異なり、ディスカッションやグループワークなどの意見交換ではチャット形式が使えるので、気軽に質問や議題の立ち上げができます。さまざまなキャリアを持つ方々が経営や会計の知識を披露する場でもありますので、議論が活発化しやすく、疑問点の解消も積極的に行うことができます。
スコアの要件
MBAにはGMATやTOEFLのスコアが求められますが、オンラインではフルタイム留学ほどの高スコアは求められない傾向にあります。海外MBAのフロリダ大学のWarrington College of Businessでも、GMATの平均スコアはフルタイムで686のところ、オンラインだと600まで緩和されています。英国のWarwickやDurhamなど、GMATを要求していないスクールもあります。
もちろん語学試験の要件が高くないといっても、実際の学習では洗練されたアカデミックな英語力が必要になることはいうまでもありません。入学に必要となるテストとスコアについては、各スクールのWEBサイトをご参照ください。
オンラインMBAのデメリットは?
オンラインMBAのメリットは多様ですが、一方で以下のようなデメリットも考えられます。互いに直接情報を交換しあえるフルタイムMBAと違い、基本的にオンラインMBAでは難易度の高いMBA学習に自主的に取り組まなければなりません。事前にこのことをしっかり意識しておき、学習計画を練る必要があるでしょう。
モチベーションの維持
オンラインでMBAの取得を志すには長期間にわたってそのモチベーションを維持しなければなりません。オンラインMBAの学習期間は平均して2〜3年程度、長い場合は5年にも及ぶといわれています。時間的制約や強制力がほぼないため、何のためにMBAを取得するのか、常に最終目標を意識しながらメリハリをつけて継続していく覚悟が求められます。
通学であれば他学生との直接的な意見交換や交流によって毎日に刺激を見出すことができますが、オンラインの場合は孤独との闘いという側面もあり、常に自分で自分を鼓舞しなければなりません。一つ一つの課題のクリアに意義を見出し、上手にモチベーションを維持する工夫が求められます。
自己管理力が必要
オンラインMBAでは自己管理も重要な要素です。他者の目がないため、目標の達成や自己実現のために、自身の思考や行動理由を明確にし、修了までの計画を入念に立てておくことが重要です。
また、自己管理だけでなく、スケジュール管理の必要性も考慮しておく必要性があります。特にオンラインのグループワークだとほかの参加者と時間を合わせなくてはならず、率先してタスク整理とスケジューリングを徹底する姿勢が求められます。相手が目の前にいればすぐにできることも、オンラインだと円滑に進まない可能性があることを考慮しておきましょう。
直接的な体験や交流が不足
元来MBAは、現地で学ぶものとされてきました。特に海外MBAでは講師や他学生との交流、現地でのビジネス体験、施設の利用といったアドバンテージがあります。しかし、オンラインではバーチャル空間でしか学ぶ環境がないため、現地で得られる直接的なメリットを享受できないのが難点です。
海外オンラインMBAランキング
下の表は、英国の経済紙「THE FINANCIAL TIMES」が発表している「Online MBA 2023」のトップ10のランキングです。ランキングはカリキュラムの充実や教授陣の質などを基に総合的に作成されたものです。
2023年は昨年まで強固なポジションにいた英国のWarwick Business SchoolとImperial College Business Schoolを抑え、スペインのIE Business Schoolが首位となっています。上位3校は現在の給与や昇給率、授業料を考慮した際に、コストパフォーマンスが高かったことが要因に考えられます。
海外オンラインMBAを希望している方は、判断軸として参考にしてください。
スクール名 | 国 | 受け取っている給与額(US$) | 昇給率(%) | |
1 | IE Business School | スペイン | 205,695 | 44 |
2 | Warwick Business School | 英国 | 194,903 | 33 |
3 | Imperial College Business School | 英国 | 191,791 | 23 |
4 | Carnegie Mellon: Tepper | 米国 | 195,901 | 45 |
5 | University of Massachusetts Amherst: Isenberg | 米国 | 233,284 | 23 |
6 | University of North Carolina: Kenan-Flagler | 米国 | 187,862 | 29 |
7 | University of Florida: Warrington | 米国 | 134,975 | 25 |
8 | Durham University Business School | 英国 | 157,213 | 18 |
9 | University of Liverpool Management School | 英国 | 161,429 | 32 |
10 | Politecnico di Milano School of Management | イタリア | 165,481 | 35 |
オンラインMBAではその特性を最大限に活かそう
オンラインMBAは大学院や留学によるフルタイムMBAが難しい方に最適な手段です。スクールの数がまだ限定的で乗り越えるべき課題も多いものの、上手に活かせばMBAの知識や英語だけでなく、セルフマネジメント力も身に付き、人生において想像以上の飛躍を遂げる可能性があります。オンラインとはいえ、画面の向こうにいるのはさまざまな動機で意欲的にMBA取得を目指す人、数々の実績を持つ講師です。お互いに切磋琢磨しあい、フルタイム留学生に負けないくらいの意気込みで挑みましょう。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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