シンガポールの「スシロー」成功の秘訣~わずか5年で10店舗拡大が実現したワケ~
週末には大行列を作り、家族連れやカップルなど幅広い層に大人気の「スシロー」。2019年8月にシンガポールへ進出し、2023年8月には10店舗目をオープンしました。今回は、スシローのコロナ禍での苦労や店舗拡大の秘訣について、スシロー シンガポールのDirector加島様にお話をお伺いしました。
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シンガポールを進出先に選んだ理由
(出典:株式会社あきんどスシロー)
2019年8月に東南アジア初のシンガポール第一号店として、「チョンバル プラザ店」をオープンしたスシロー。進出先にシンガポールを選んだのは、「シンガポールの人たちは日本が好き」という背景がありました。
シンガポールでは、日本食が人気で、日本食の代表ともいえる「お寿司」を提供するスシローは、シンガポールでも受け入れられるのではないかと判断しました。また、シンガポールは東南アジアのハブ。そのため、今後の東南アジアへの展開も見据えて、シンガポールを第一か国目として選んだそうです。
コロナ禍の影響
2019年からシンガポール進出を果たしますが、しばらくして「コロナ禍」に入りました。
コロナの影響で、店舗のオープンに向けた準備や運営が思うようにいかなかったり、スシローの認知度を上げるためのPRができなかったりと、スシローも新型コロナウイルスの影響を強く受けてきました。
その後、新型コロナウイルスの流行は収まり、テイクアウェイからイートインへ需要が変わったことで、集客が大幅にアップしました。その反面、拡大する需要に対し食材の確保が大変になりました。
また、コロナ禍では、旅行ができなかった分、日本食のコース料理をはじめとする高級レストランを好む方が増えました。しかし、現在は解禁された旅行にお金を使えるようになったため、食に関してはスシローのような手頃な価格で日本食を楽しめるお店へ需要がシフトしました。
店舗拡大の秘訣
スシローが5年で10店舗へ拡大できた秘訣について紹介します。
1つ目は、「スシローの味を知ってもらう」。モールには、すでに他の日本食レストランや回転寿司の店舗があることが多く、良い立地、良い条件で店舗を確保するのが困難です。そこで、モールの担当者をスシローへ招待して実際に食べてもらい、スシローにしか出せない特色や、日本食の他店舗との違いを体感してもらっています。
2つ目は、「既存店での集客力UP」。既に出店している店舗の集客力を上げて、スシローの集客力を具体的な数値でモール担当者へアピールしました。実績を肌で感じてもらい、「スシローの出店=モールの集客・売り上げ・利益向上」という認識を強められるよう働きかけています。
受け入れられている理由
スシローがシンガポールで受け入れられている理由の一つは、「品質」にあります。
シンガポールでは日本食が大人気。そのため、ローカライズするのではなく、日本と同じクオリティーの寿司を提供していることが、シンガポールでも多くのファンを獲得できている理由です。
また、既存の顧客が飽きないよう、さまざまな商品を入れ替えて定期的にキャンペーンも開催しています。また来たい!と思わせる仕組みづくりも、スシローの持ち味です。
苦戦したこと
シンガポールでの事業展開を手がけるスシローですが、日本での経験やノウハウが通じない部分もあります。
一つ目は、「生ものへの抵抗感」。特に、年齢が高い層の方々は、生ものへの抵抗を持っている方も多くいます。そのため、火を通したお寿司やサイドメニューの提供数を増やし、より抵抗感なく食してもらうための努力を重ねています。
また、店舗で働いてもらう「スタッフの雇用」についても、頭を悩ませました。シンガポールの人材雇用のルールでは、シンガポール人スタッフを2名採用した後に、外国人スタッフ1名を採用できます。店舗数も拡大しているので、スタッフの確保には今も苦戦しています。なるべく多くのローカルスタッフを採用して、長く働いてもらうための工夫を、今後も続けていく必要があると語ります。
ローカル人材の教育・育成のコツ
スシローのシンガポールでのローカル人材に対する教育・育成の特徴は、言葉での教育ではなく、「写真や動画マニュアル」での育成システム。
店舗では、さまざまな人種のスタッフが働くため、写真や動画をメインにしたマニュアルでトレーニングをしています。作業に慣れないスタッフでも、学びやすい環境づくりを徹底しています。また、少しでも長く心地よく働いてもらうために欠かせないのが、「スタッフの心のケア」。人事が定期的に店舗を周り、普段店長にいえないような悩みや、店舗での疑問をヒアリングします。
スタッフの不安や店舗の疑問を解決し、寄り添って良い環境を作るスタイルが、スシローの教育システムの良さです。
今後の展開について
すでに、シンガポールに進出拡大しているスシローですが、今後もシンガポール国内での事業展開の強化を考えています。
特に、まだ進出していないウエストサイドエリアでの出店を実現し、毎年最低でも2店舗ずつオープンをし、スシローに触れたことのない層の方にも、お寿司を楽しんでもらえるよう計画中です。結果として、シンガポール国内でお寿司がもっと身近な食べ物になるよう取り組んでいます。
また、タイのバンコクに店舗がありますが、最近インドネシアでも「スシロー1号店」をオープンいたしました。東南アジアにおいてスシローは、より地域に根付いた飲食店となるでしょう。
ゲスト:スシロー シンガポール様のご紹介
株式会社 FOOD & LIFE COMPANIES Director 加島 慎仁氏 高校3年生からスシローでアルバイトを始め、現在に至るまで25年間スシローでの仕事に携わる。 日本で店長やエリアマネージャーとして経験を積み、韓国駐在を経験。 2020年1月より、シンガポールに駐在。 |
店舗情報
シンガポール国内において営業している店舗を紹介します。
● チョンバル プラザ店 ● パークウェイ パレード店 ● 伊勢丹 スコッツ店 ● コースウェイ ポイント店 ● べドック モール店 ● ウォーターウェイ ポイント店 ● サンテック シティ店 ● ロット ワン店 ● ジュエル チャンギ エアポート店 ● ウィスマ アトリア店 ※パークウェイ パレード店は休業中(2023年12月現在) |
日本クオリティーのお寿司の提供や、顧客に寄り添った商品展開によって、10店舗まで拡大しました。今後の店舗展開にも期待してください!
日本クオリティーのお寿司がスシローの成功を導く
東南アジアのハブとして機能するシンガポールにて、わずか5年で10店舗まで拡大を果たしたスシロー。その背景には、日本と変わらないクオリティーのお寿司を提供し、シンガポールのどこにいてもスシローを楽しむことができる環境づくり、既存のお客様を大切にし飽きさせない工夫をする姿勢がありました。今後も、お寿司を世界に届けるため、東南アジアエリアへの事業展開を推進していきます。
シンガポールでのビジネス展開を検討している方にとって、スシローの事業拡大の背景や仕組みづくりは、とても参考になるモデルといえるでしょう。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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