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ニトリの挑戦!シンガポール第1号店~新規立ち上げの舞台裏 オープンまでの5カ月間~

「お!ねだん以上。」のキャッチフレーズでお馴染みのニトリが、シンガポールに待望の第1号店をオープン!進出の裏側では、どのようにして膨大な準備が進められていたのでしょうか。お話をうかがったのは、多岐に渡る困難や課題を乗り越えて更に前に進み続ける、ニトリ リテール シンガポールの伊藤氏。オープンまでたったの5カ月!その舞台裏に迫ります。

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シンガポール進出の舞台裏

シンガポール第1号店のオープンまでに与えられた期間は、わずか5カ月あまり。現地に基盤がない状態での出店は、日本での新店オープンの経験が豊富な伊藤氏でさえ、想像を絶する忙しさになるだろうと感じていました。

コロナ禍、世界が混乱していた2021年11月。伊藤氏は事前に現地入りすることなく、シンガポール第1号店のオープンへ向けて着任。とにかく時間はないが、焦っても事態は変わらない。一つの軸になったのは、ニトリの企業文化である「やるためにどうするか?」でした。

まずはゴールから逆算したマイルストーンを作成し、求められているスピード感を明確にすることから始めました。過程が進むほどに厳しい現実が浮彫りとなりましたが、「やるためにどうするか?」そして「何をいつまでに」を明確にしてきた出店は、予定通り無事にオープンを迎えることができました。

「私どもは常に『現状を否定する』ということを意識しております」と、伊藤氏。今が一番良い状態であったとしても、現状維持という考え方はありません。日本での成功体験に沿ったやり方だけでなく、これまでの常識やセオリーを捨て、「いかに方法を変えるか?」という発想は問題点の発見と解決を促し、日頃のルーティン作業にも生かされているそうです。

シンガポール進出の魅力と消費者の特徴

企業にとってシンガポール進出の魅力の一つは、シンガポールという国が非常に親日であること。そして「シンガポールの方々は、新しいものが大好き!というイメージがあります」と、伊藤氏は続けます。

日本への期待度と安心感が大きく、それを維持していくことが課題となりますが、悪い意味での偏見がない分、事業がしやすいとのこと。しかし事業のしやすさと損益というのは、また別のお話。シンガポールでは賃料をはじめ不動産にかける分配率が非常に高くなるため、日本基準の損益計算よりも厳しめにみた方がよいでしょう、とアドバイスをいただきました。

シンガポール人と働く

シンガポールでの雇用には、ある程度の採用人数に達するまではシンガポール国籍の人しか採用できない、という制度があります。そのため、人件費が高くつくことになり、事業の創成期には利益圧迫の要因に。ある一定数採用することで国籍を問わず採用できるようになるので、一時的なことのようですが、日本にはない制度のため注意が必要です。

チームマネジメント

文化や習慣の違う国で信頼を得ることは容易ではありません。そのうえ、今回のオープンまでに与えられた時間は短い。そんな中でも人を育て、マネジメントしていかなくてはなりませんでした。

伊藤氏は「現地スタッフに対して、我々が偉いということではなく、現地の人に支えてもらっていると考えてギブ アンド テイクではなくギブ アンド ギブを心がけること」が大切だと話します。

日本の企業が進出してくるけれども、会社の名前も知らないという人たちが採用に応募し、面接を受けて入社をしてくれている。そのことを念頭に、業務で助けるだけではなく、困っているときに相談にのる、未来について語る、そして案を積極的に取り入れる、これらを徹底して行うことによって人材が定着してスキルが上昇し、そして現場力が上がる…このようなサイクルの確立を目指しているとのこと。

ニトリ シンガポールではさまざまな業種から採用をしていることから、認知的多様性を生かして集合知を発揮できる、そんな組織マネジメントへ繋がっているようです。

今後のビジョンについて

1967年、「似鳥家具店」として創業したニトリ。グローバルチェーン展開においてはマレーシア、シンガポールに続いて2023年以降、タイへの事業展開も進めており、シンガポール国内の事業計画としては5年間で10店舗までの拡大を計画しているとのこと。

「シンガポールは賃料が非常に高くなっています。どうしても単店だけで計算をしてしまうと、そこまでうまみがないんじゃないか?と感じるところですが、出店による認知の拡大、既存店へのトラフィックの上昇など、目に見えないシナジーを考慮に入れて勇気をだして事業を拡大していくということで基盤ができあがっていくのです。」と伊藤氏。

また、まずは出店することで、顧客だけではなくショッピングセンターのディベロッパーの目にも止まります。すると先方からのお誘いを受ける機会が多くなり、賃料交渉などがやりやすくなるという利点もあるとか。今後の店舗展開戦略に注目です。

Q&A

Q.なぜ5カ月で準備をしなければならなかったのですか?

A. さまざまな事情があり、ショッピングモール側から2023年3月31日にオープンをして欲しいという要望がありました。よって、2023年3月31日にオープンをするというコンディションの部分が先に決まり、ゴールが確定した状態で準備を始めたので、我々としては5カ月でやらなければならなかった、ということになります。

Q.5カ月という短期間での準備の中で困ったことは?

A. コロナ禍ということもあり、一度も実践がない状態でオープンを迎えるという状況でしたので、そういう点では非常に不安な部分がありました。できるだけ座学の中でもあらゆるケーススタディに重点をおき、それからデモオぺーレーションという形で、実際に従業員がお客様のふりをして「お客様が一気にレジに並んだ時にどう対応するか?」などの仮想訓練には非常に力をいれました。

Q.現地で採用するスタッフは家具販売の経験者ですか?

A. 結論から言うと、未経験の方も積極的に採用しています。

シンガポールは社会的な転職の流動性が高いので、いろんな業界に属した経験のある人がいます。こういった方たちから、私みたいにニトリしか経験がない者にはない知見というのをどんどん取り入れ、集合知のある組織というのを目指しています。

Q.もしも現地スタッフに店長を任せるとした場合、トレーニングにどれくらいの期間が必要ですか?

A. やはり店数を増やしていくにあたっては、できるだけ現地シンガポールのスタッフの方にお任せしていくという体制を早めに築いていきたいと私も思っています。

構想として、あらゆる機能をこの一店舗目に集約し、ここをマザーとしてチャイルド店舗のような形で運営していきたいと考えています。できるだけイレギュラーを少なくすることによって、現地の方でも運営がしていけるような、そういった組織図というのを目指したいです。

トレーニングの内容としては、家具のセクションやホームファッションのセクション、サービスカウンターのセクションといったあらゆる業務を広く学ぶという機会を設けて、一生懸命取り組んでいただこうかなと。これらのトレーニングにはおよそ数十時間では済まないくらいの膨大な時間を要するでしょう。しかし現地のスタッフが店長になるというのは1、2年以内にやっていかなければならないことだと思っています。

Q.人件費は日本と比べ、どの程度違いますか?

A. まず、日本のお店ではパートタイムという働き方が多くを占めていて、シンガポールにおいてはパートタイムという概念があまりなく、「働く=社員として働く」ということが一般的という点に注目してください。シンガポールではどうしても、フルタイムで働く方の比率が高くなってきます。この点で、パートタイムの時給と比較して固定月給となったときに、大体どのくらいになるのか?…結構高いと思います。

Q.お客様の層は日本と違いますか?

A. 似てますね。女性が7割くらいを占めるところも似ていますし、30代から50代、この部分の山が非常に大きいというところは、とても似ていると思います。特徴的なのは、60代以降の構成比が少なく、逆に若い方が日本と比べると多いところです。

Q.いま、一番「現状否定」が必要だと感じていることは何ですか?

A. いま、「好調」と思っていること全てです。

例えば「家具の(売り上げの)調子がいいです」とか、「eコマースの(売り上げの)調子がいいです」とか「この商品が売れてますよ」など出てくるのですが、現状に満足することなく、今好調だと思っていることこそを否定しなきゃいけないと思っています。

一番売れている商品について、現状の価格が受け入れられていると感じるのではなく、これをもっとお手頃な値段にすることができたら…?より多くの人の生活を豊かにすることができるかもしれません。売れている商品だからこそ敢えて手を付ける、そういった考え方をしていきたいです。

ゲスト:ニトリ リテール シンガポール様 ご紹介

NITORI RETAIL SINGAPORE PTE. LTD.
伊藤 淳氏

2007年、株式会社ニトリに入社。以来、店舗運営に携わる。

6年間、4店舗で店長を経験したのち、エリアマネージャーに就任。

2021年11月より、NITORI RETAIL SINGAPORE 立ち上げのため渡星。現地責任者として現在に至る。




「お、ねだん以上。」でおなじみのニトリは、日本最大のホームファニシング企業です。海外への事業展開を進めるなか、コロナ禍のわずか5カ月という準備期間を乗り越え、2022年3月31日にシンガポール第1号店を出店しました。ローカル社員と良好な関係を築くことが、マネジメントに生かされてより良い店舗運営へ繋がっていく。そしてそれは、さらに先の店舗展開へ発展していく。「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」という志を大切に、ニトリは進化を続けます。

店舗情報

シンガポール第1号店
NITORI Orchard(ニトリ オーチャード)

住所:COURTS Nojima The Heeren 260 Ochard Road Level4 S238855
最寄り駅:Somerset駅
営業時間:11:00-22:00
定休日:無
Eメール
WEBサイト

 

第1号店 遂にオープン!現地の人々と店舗展開へ

コロナ禍のわずか5カ月という準備期間を乗り越え、シンガポール第1号店をオープンしたニトリ。シンガポールでの新店舗オープンを成功させた舞台裏には、ローカルスタッフと仕事に取り組むうえでの信頼関係を築くための秘訣がありました。ニトリの今後の店舗展開にもぜひご注目ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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