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ニトリの挑戦!シンガポール第1号店~海外マーケティングとBtoC事業の戦略~

「お!ねだん以上。」のキャッチフレーズでお馴染みのニトリが、シンガポールに待望の第1号店をオープン!シンガポールでビジネスを展開していく上で大切な、海外マーケティング、ブランディングや集客を強化するために取り組んだこととは。お話をうかがったのは、シンガポール進出を成し遂げ、更に前に進み続ける、ニトリ リテール シンガポールの伊藤氏。シンガポールでのBtoC事業における戦略を探ります。

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シンガポールの消費者の傾向と特徴

第1号店のオープン当初からシンガポールのニトリでもさまざまな商品を扱っていますが、伊藤氏の予想より売れているものがありました。それが「家具」です。もともとシンガポールでは、日本のように価格優位性が強くないため、全体の売り上げに対する家具の構成比については、かなり低く見積もっていました。しかし今では、当初の予測の倍程度で推移しており、売り上げを大きく牽引しています。

家具が売れている理由の一つに、シンガポールの住宅事情があげられます。シンガポールの住宅は日本の住宅と同じように狭いため、ニトリのようなコンパクトな家具というのが顧客ニーズに合っていたのです。

出店エリアにもよりますが、購買層の所得が高い分、商品構成の中で「上限価格の商品が最も売れる」という傾向があります、と伊藤氏。例えばニトリで販売している「電動ソファー」は、一番価格の高いものが一番売れているそう。日本の夏でもすっかりお馴染みとなったN COOL(エヌ クール)という冷感寝具も、一番高いグレードのものが圧倒的に売れています。

このように客単価が予想よりも高く推移したため、商売を行っていくための必要客数が減ったことで、多売をしなくてもある程度は売り上げを確保できることになりました。

また、第1号店のオープンらしいエピソードも。伊藤氏にとって予想外だったのが、日本とシンガポールでは「売れる『色』が違う」ということでした。

日本では商品の色が複数あり、選択肢が多くあったとき、圧倒的に「白」という色が売れます。商品によっては5色展開のうち約8割の割合で「白」が売れるいうものもあり、あらゆる商品で「白」という色が採用されているそうです。

しかしシンガポールでは、予想に反して圧倒的に「グレー」が売れました。この結果は、宗教的背景・文化的背景によって感覚が違うこと、そして現地に沿ったお店作りが必要だということを肌で感じた出来事でした。

そもそも持っている感覚が違うので、日本でヒットした商品がシンガポールでも売れるのかというと、そうではありません。今は販売商品の在庫を日本から仕入れている状態であるので、日本での生産計画がそこまで多くない商品がシンガポールでヒットすると、欠品がおこる可能性があるとのこと。このような不安を解消するためにも、ASEAN用のサプライチェーンを早期に確立し、規模を拡大して成長をしていきたいと、伊藤氏は続けます。

海外マーケティングとBtoCの戦略

業界のリーダーカンパニーという立場からチャレンジャーとして、シンガポールで商売を始めることになったニトリ。どのような戦略を立てたのでしょうか。

市場調査

オープン前の市場調査から、かなり厳しいものがありました。ちょうど2021年は新型コロナウイルスパンデミックの影響で、社内から誰ひとりシンガポールに入国できないという状況で、現場現物での市場調査ができないまま準備を進めることに。

シンガポール入国後、まず伊藤氏が行ったのは競合企業の商品セグメントごとの商品構成グラフ作成です。自社の品目ごとのプライスがマーケットのどこの位置にあるかの調査を行い、品種や商品の欠落について補完を行うことでした。

その結果が示したのは、日本では商品価格が「安い」というイメージのニトリですが、売価が上がるシンガポールでは同業界のリーダーカンパニーに全く敵わない、という状況でした。この状況に対応するには、日本とは違う「価値」を打ち出していく必要がありました。

しかし、「我々にとってもお客様にとっても、値段というのは非常に重要な要素になります」と伊藤氏。「『世界中の人々の暮らしを豊かにする』ということが我々の企業パーパスですから、規模の経済性を実現しつつ、価格に還元をしていくという努力をし続けなくてはならないと思っています。」と続けます。

認知度アップ施策

「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズで日本では広く知られるニトリでも、シンガポールでは第1号店を出店したばかり。第1号店のオープン後、伊藤氏はニトリの「認知度」を上げるためにいくつかの施策を打ち出します。

デジタル広告を使い、セール時には駅内広告などのフィジカル広告に加え、InstagramやFaceBookなどのSNSを中心に展開しました。海外事業では一人当たりの業務領域が広くなることが一般的であり、今回の施策でも現場がほぼ全ての販促活動を担っているそう。SNSへの投稿素材自体も自分たちで作成しており、投稿とその結果を分析することで何が好まれ、何が好まれないのかという傾向が見えてきました。

この施策は広告のコストを大幅に削減し、効率化することにも役立っているそうです。

成功に導くためのポイント

チャレンジャーとして、ゼロからニトリ シンガポール第1号店を立ち上げた伊藤氏。今回の海外マーケティングや事業戦略における経験を通して、成功するためには「現地の方とのコミュニケーションをしっかりとること」が大切だと学んだとのこと。

伊藤氏のお話では、アジアでは英語が第一言語ではない国がほとんどで、双方が第二、第三言語を使ってコミュニケーションをすると、伝えたいことの36%しか伝わらないという説もあるそう。これはつまり、3回のコミュニケーションをとって初めて相手に全てが伝わるということです。時間を犠牲にしてでも、とにかく話す。それが、5カ月という短い期間で出店を導いたポイントの一つでした。

Q&A

QSNSを中心としたブランディング戦略について教えてください。

A.SNSをはじめとしてフィジカル広告も大々的にやりました。なぜかというと、ニトリという会社を知っている人がほぼいないので…。現地に駐在されている日本人の皆様くらいにしか認知度がないというところで、かなり大きくやったつもりです。

オープン前の段階では、我々はそこに携わる余裕がなくマレーシアの本部のほうでやってくれていましたが、例えば、N COOL(エヌ クール)などの代表的なニトリの「顔」となるような商品を先にアップして、徐々にオープン前にフォロワー数を3,000人くらい集めようと宣伝をしていました。ニトリの「顔」という商品だけにフォーカスして、イメージを醸成したということは戦略の一つですね。

オープン後については我々が販促戦略というものを引き継ぐ形になりましたので、こんなものもあるよ、という形でいろんなものを紹介するに至っていますが、最初はもう「顔」「イメージ」というところで意識してブランディング戦略を展開していました。

Qeコマースについてお聞かせください。

A.eコマースは、かなり上昇しています。なかなか店舗にいらっしゃることができない方でも、ニトリの名前がどんどん拡大していくにつれ、eコマース(ネットショッピング)から入ってくるお客様が非常に多いです。

自社のECサイトだけではなくShopeeやLazadaという外部プラットフォームにも出店をしていますので、ここでのエンゲージメントも今はすごく高い。我々も遅延は絶対にゼロ、というようなオペレーションを敷いていて、信頼を得ることで徐々にニトリの商品が出やすくなってきていると思います。

売り上げについていうと、どうしてもリアルの店舗ではオープンの時にバーンと跳ねて、徐々に低下して落ち着いていくという傾向がありますが、eコマースは逆です。認知が上がっていくほどに毎月記録を更新するくらい、右肩上がりで推移をしています。

Qリレーションマネジメントについてお聞かせください

A.いま私どもが課題としているのが、お客様の情報をどのように得ていくかという点です。日本ではポイントカードやアプリなどがありますが、東南アジアではそのようなサービスができていないため、十分なお客様の情報量が取れていない現状があります。ですから、本当にフィジカルなお話になってしまいますが、「次につながる接客」というのは非常に意識しています。

Qデジタル広告を用いた宣伝では、どのようなメディアを中心に展開していますか?

A.昨年はGoogleやYouTube、TikTokに量的な対策というのを行っていました。理由としては、我々の当初の課題だった「認知度のアップ」のためには、質よりも量を重視して、タッチポイントの非常に多いところにインプレッションを多くかけてやっていました。やはり主要なメディアについてはクリック率等に効果が出ていて、我々の名前をばらまくという点では非常に効果的だったと思います。

今年、来年にかけてはもう少しクオリティーなども重視し、「何処」に出すというよりは「誰」に出すという点でターゲティングをしっかりと追跡していくような戦略をとり、コンバージョン率を上げるということを意識したいなと思っています。

ゲスト:ニトリ リテール シンガポール様のご紹介

NITORI RETAIL SINGAPORE PTE. LTD.
伊藤 淳氏

2007年、株式会社ニトリに入社。以来、店舗運営に携わる。

6年間、4店舗で店長を経験したのち、エリアマネージャーに就任。

2021年11月より、NITORI RETAIL SINGAPORE 立ち上げのため渡星。現地責任者として現在に至る。




「お、ねだん以上。」でおなじみのニトリは、日本最大のホームファニシング企業です。海外への事業展開を進めるなか、コロナ禍のわずか5カ月という準備期間を乗り越え、2022年3月31日にシンガポール第1号店を出店しました。ローカル社員と良好な関係を築くことが、マネジメントに生かされてより良い店舗運営へ繋がっていく。そしてそれは、さらに先の店舗展開へ発展していく。「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」という志を大切に、ニトリは進化を続けます。

店舗情報

シンガポール第1号店
NITORI Orchard(ニトリ オーチャード)

住所:COURTS Nojima The Heeren 260 Ochard Road Level4 S238855
最寄り駅:Somerset駅
営業時間:11:00-22:00
定休日:無
Eメール
WEBサイト

 

第1号店 遂にオープン!現地の人々と店舗展開へ

コロナ禍のわずか5カ月という準備期間を乗り越え、シンガポール第1号店をオープンしたニトリ。限られた期間で新店舗オープンを成功させた背景には、シンガポールBtoC事業におけるさまざまな戦略がありました。ニトリの今後の店舗展開にもぜひご注目ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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