【2024年】シンガポールのユニコーン企業28社 ~Lazada・Grab・Garenaなど一挙ご紹介~
東南アジアにおけるイノベーションのハブとして急速な成長を遂げ、最先端テクノロジーの中心地として名高いシンガポール。数々の好条件に恵まれ、成長が目覚ましい多くのユニコーン企業を生み出しています。本記事では、シンガポールのユニコーン企業が誕生する土壌とその知られざる特徴、代表的な28社について詳しく解説します。
シンガポールにユニコーン企業が多い理由
ユニコーン企業とは、企業価値を金額で表す評価額がUS$10億以上と評価される未上場のスタートアップ企業を指し、市場にはユニコーン企業として新たに誕生する企業と対象から外れる企業が常に存在します。2024年10月14日時点で、シンガポールには3万4000社以上のスタートアップ起業があり、28社のユニコーン企業が存在しています(Tracxn調べ 2024年10月20日時点)。アジア太平洋地域の国におけるユニコーン企業数ランキングでも4位と上位にランクインしており、将来的にデジタル技術の先端を牽引する可能性のある、有望な企業も多数存在します。シンガポールはいまや東南アジアにおけるイノベーションのハブとしての地位を確立しています。
シンガポールでここまでユニコーン企業が台頭している理由としては、主に以下が挙げられるでしょう。
①スタートアップへの投資ファンドの充実
シンガポールでは投資ファンドが活況で、2023年3半期の時点でUS$20億以上のエクイティ ファンディング(企業がインターネットを利用して不特定多数の個人から小口で資金を募る「投資型クラウドファンディング」)がありました。
また、ベンチャーキャピタル(成長が期待されるベンチャー企業やスタートアップ企業といった未上場の企業への投資を専門とする投資会社)からの資金提供額は、2023年時点でUS$61億に達しました。
現在も国内外からスタートアップ進出の気運が高まっており、多くの業界で成長産業の台頭が期待されています。シンガポールでは、安定した金利や政治政策、治安の良さ、デジタル技術の発展などが今後も見込まれることから、将来的な展望が描きやすく、投資がしやすい環境が整っています。また、強固な法的枠組みと知的財産権保護により、特にテクノロジー分野の企業にとって研究開発投資がしやすいのも大きな要因でしょう。
②スタートアップ・小規模企業への税制優遇措置
中規模企業に対する低税率や、年間の収益がS$10万未満のスタートアップへの税制優遇措置など、起業家にとって魅力的な条件が整っています。
③デジタル分野の急速な進歩
シンガポールは「Smart Nation」構想によって、急速にテクノロジーの発達とイノベーションへの取り組みが進んでいます。最先端のデジタル技術でエコシステムをより強化し、広範なネットワークを構築するという大きなうねりのなかで、未来を見据えたスタートアップが立ち上がりやすい環境になっています。
④政府からの積極的な資金およびメンター支援策
政府の積極的な支援策も大きな役割を果たしており、研究開発やイノベーション、人材育成に重点を置いた財政支援が行われています。
シンガポール政府は、スタートアップの課題を診断し、その持続的な成長を支援するOpen Innovation Platform (OIP)にも力を入れています。企業のニーズや問題を把握して、専門的かつ綿密なコンサルティングを行い、四半期ごとにそれらをデジタルイノベーションに活用しようという試みです。常に改革を意識して前進していく姿勢から、これからも数多くの革新的なデジタルソリューションを生み出すことでしょう。
⑤シンガポールの地理的優位性
シンガポールはその地理的な性質上、東南アジア市場へのアクセスが容易であり、急速に成長する中間層やデジタル化の進展といった地域の特性を活かしやすい環境にあります。シンガポールのスタートアップの多くは、東南アジア全体で事業を展開しているのも注目すべき点です。
シンガポールのユニコーン企業の特徴
シンガポールのユニコーン企業は、多様な業種にわたりながらもいくつかの共通点を持っています。長年に及ぶ政府の支援策やベンチャーキャピタルによる多額の投資をはじめ、活発な投資環境がシンガポールのスタートアップ エコシステムを支えており、この結果として28社ものユニコーン企業が誕生することとなりました。
これらの企業の特徴として、最先端のテクノロジーを活用して既存の課題を解決するビジネスモデルを採用していることが挙げられます。特にフィンテック、eコマース、物流などの分野で顕著な成功を収めています。また、シンガポールを拠点としながらも、アセアン全域をターゲット市場として展開する傾向が強く、国際的な視野を持った事業展開が特徴的です。
更に、シンガポールのユニコーン企業は、ブラック ロックやソフトバンク ビジョン ファンドなどの国際的な投資家からの大規模な資金調達に成功しているケースが多く見られ、前述のエクイティ ファンディングやベンチャーキャピタルの充実と共に、ユニコーン企業増加を後押しをしてきました。これらの企業の成長スピードも注目に値し、平均して6年11か月でユニコーン企業の地位に到達しており、世界的に見ても非常に速いペースで成長を遂げています。
このように、シンガポールのユニコーン企業は、革新的なテクノロジーや地域に根ざしたグローバル戦略、豊富な資金力、長期を見据えた成長戦略を背景に、急速な成長を遂げており、今後も東南アジア経済の牽引役として期待されています。
シンガポールのユニコーン企業28社
シンガポールのユニコーン企業28社を紹介します。フィンテック、暗号通貨、物流、eコマース事業など、次世代テクノロジーを担うユニコーン企業が多く、アリババやGICなど名だたる企業が投資を行っています。
※US$1=S$1.31で換算、決算の締日は企業により変動
Lazada
・2012年創業→2014年11月にユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 2年10か月
・年間収益は2023年末時点で約S$8億9000万
・eコマース大手。東南アジア6カ国で事業展開し、生活に根付く幅広い商品を取り扱う。
WEBサイト
Grab
・2012年創業→2014年12月にユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 2年11か月
・年間収益は2023年末時点で約S$23億
・配車サービスから始まり、フードデリバリーや決済サービスも提供する「スーパーアプリ」。
WEBサイト
Garena
・2007年創業→2015年3月にユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 8年2か月
・評価額は2014年7月時点で約S$13億1000万
・テクノロジー企業Seaの子会社でオンラインゲームプラットフォームを運営。人気ゲーム「Free Fire」の開発元。
WEBサイト
Sea
・2006年創業→2016年3月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 10年2か月
・評価額は2016年3月末時点で約S$49億1000万
・Garenaの親会社。eコマースプラットフォーム「Shopee」も運営。
WEBサイト
TauRx
・2002年創業→2018年3月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 16年2か月
・年間収益は2022年6月末時点で約S$154万6000
・アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療薬の開発に特化したバイオテクノロジー企業。
WEBサイト
ONE Championship
・2011年創業→2018年10月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 7年9か月
・年間収益は2021年末時点で約S$9000万
・アジア最大の総合格闘技メディア。eスポーツ部門も展開。
WEBサイト
Zilingo
・2015年創業→2019年2月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 4年1か月
・年間収益は2019年3月末時点で約S$1億3000万
・ファッションに特化したeコマースプラットフォーム。B2Cのマーケットプレイスを展開。
WEBサイト
Trax
・2010年創業→2019年7月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 9年6か月
・年間収益は2019年末時点で約S$2000万
・小売業向けの画像認識技術を提供するリテールテック企業。
WEBサイト
HyalRoute
・2015年創業→2020年5月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 5年4か月
・評価額は2020年9月末時点で約S$44億5000万
・通信インフラ企業。ファイバー網の販売・リースを行う。
WEBサイト
PropertyGuru
・2006年創業→2020年9月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 14年8か月
・年間収益は2020年末時点で約S$7800万
・不動産ポータルサイト運営会社。東南アジア各国で展開。
WEBサイト
JustCo
・2011年創業→2020年11月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 9年10か月
・評価額は2020年11月時点で約S$13億
・コワーキングスペース運営企業。アジア太平洋地域で事業展開。
WEBサイト
PatSnap
・2007年創業→2021年3月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 14年2か月
・年間収益は2022年末時点で約S$5000万
・特許分析AIプラットフォームを提供する知的財産テック企業。
WEBサイト
Acronis
・2003年創業→2021年5月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 18年4か月
・評価額は2022年7月末時点で約S$45億8000万
・データ保護ソフトウェアを提供するサイバーセキュリティ企業。
WEBサイト
Carro
・2015年創業→2021年6月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 6年5か月
・年間収益は2023年3月末時点で約S$10億5700万
・AI活用の中古車オンラインマーケットプレイス。レンタカーやリース事業も展開している。
WEBサイト
Amber Group
・2017年創業→2021年6月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 4年5か月
・年間収益は2015年4月末時点で約S$1.6万
・暗号資産取引プラットフォームを運営するフィンテック企業。
WEBサイト
Zilingo Shopping
・2015年創業→2021年6月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 6年5か月
・評価額は2019年2月時点で約S$12億7000万
・ファッションeコマースプラットフォーム。サプライチェーン管理ソリューションも提供。
WEBサイト
Bolttech
・2020年創業→2021年7月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 1年6か月
・評価額は2023年5月時点で約S$20億9400万
・保険テクノロジー企業。デジタル保険プラットフォームを運営。
WEBサイト
NIUM
・2014年創業→2021年7月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 7年6か月
・年間収益は2022年末時点で約S$1億1100万
・国際送金プラットフォームを提供するフィンテック企業。
WEBサイト
Matrixport
・2019年創業→2021年8月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 2年7か月
・評価額は2022年11月時点で約S$19億6500万
・暗号投資商品や金融サービスソリューションを提供する企業。
WEBサイト
Emeritus
・2015年創業→2021年8月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 6年7か月
・年間収益は2023年6月末時点で約S$8000万
・オンライン教育プラットフォーム。世界トップクラスの大学と提携。
WEBサイト
Advance
・2016年創業→2021年9月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 5年8か月
・評価額は2022年3月時点で約S$26億2000万
・ID認証・リスク管理を主軸とするデジタルソリューションを展開。
WEBサイト
Atome
・2016年創業→2021年9月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 5年8か月
・年間収益は2021年末時点で約S$325万
・後払い決済サービス(BNPL)を提供するフィンテック企業。
WEBサイト
Carousell
・2012年創業→2021年9月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 9年8か月
・年間収益は2023年末時点で約S$1億5100万
・C2Cマーケットプレイス。東南アジアで人気のフリマアプリ。
WEBサイト
Ninja Van
・2014年創業→2021年9月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 7年8か月
・年間収益は2023年末時点で約S$4900万
・東南アジアで事業展開する配達・物流サービス企業。
WEBサイト
Sky Mavis
・2019年創業→2021年10月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 2年9か月
・評価額は2021年10月時点で約S$39億3000万
・ブロックチェーンゲーム「Axie Infinity」の開発元。
WEBサイト
Multichain
・2020年創業→2021年12月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 1年11か月
・評価額は2021年12月時点で約S$15億7000万
・ブロックチェーン間の相互運用性を実現するプロトコル開発企業。
WEBサイト
Coda Payments
・2011年創業→2022年4月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 11年3か月
・年間収益は2023年末時点で約S$2億2100万
・デジタルコンテンツ決済処理プラットフォームを提供する企業。
WEBサイト
Silicon Box
・2021年創業→2024年1月ユニコーン企業認定
・ユニコーン企業になるまでの期間 3年
・年間収益は2023年末時点で約S$13万7500
・半導体パッケージング企業。チップレット技術に特化。
WEBサイト
世界的競争力を左右するユニコーン企業
シンガポールでは、政府の積極的な支援策と投資ファンドによってスタートアップ エコシステムが非常に充実しているため、数多くのユニコーン企業が誕生しています。シンガポールのユニコーン企業は、その大部分が、テクノロジーを活用して東南アジア市場を中心に急速に成長しており、グローバル市場でも存在感を増しています。今後、シンガポールがアジアのイノベーションハブとしての地位をさらに強化し、世界的な競争力を持つ企業を生み出し続けることが期待されます。日本企業にとっても、シンガポールのスタートアップ エコシステムは、アジア市場進出や新規事業開発のための重要なルートとなる可能性を秘めています。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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