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【2025年】シンガポールのユニコーン企業31社 ~Lazada・Grab・Moglixなど一挙ご紹介~

東南アジアにおけるイノベーションのハブとして急速な成長を遂げ、最先端テクノロジーの中心地として名高いシンガポール。数々の好条件に恵まれ、成長が目覚ましい多くのユニコーン企業を生み出しています。本記事では、シンガポールのユニコーン企業が誕生する土壌とその知られざる特徴、現在存在している全31社について詳しく解説します。

シンガポールにユニコーン企業が多い理由

ユニコーン企業とは、企業価値を金額で表す評価額がUS$10億以上と評価される未上場のスタートアップ企業を指します。ユニコーン企業はその特性上、入れ替わりが激しく、市場では新たに誕生する企業と対象から外れる企業が常に存在します。

2025年8月時点で、シンガポールには4万2,000社以上のスタートアップ起業があるといわれており、現在確認できる限り31社のユニコーン企業が存在しています(2025年8月初旬調べ)。

アジア太平洋地域の国におけるユニコーン企業数ランキングでも、最も多い中国とインドに次いで3位と上位にランクインしており、将来的にデジタル技術の先端を牽引する可能性のある、有望な企業も多数存在します。シンガポールはいまや東南アジアにおけるイノベーションのハブとしての地位を確立しています。

シンガポールでここまでユニコーン企業が台頭している理由としては、主に以下が挙げられるでしょう。

①スタートアップへの投資ファンドの充実

シンガポールでは投資ファンドが活況で、政府系投資会社とベンチャーキャピタル(成長が期待されるベンチャー企業やスタートアップ企業といった未上場の企業への投資を専門とする投資会社)からの投資が、スタートアップ・エコシステム形成における重要な位置づけとなっています。

特にシンガポール経済開発庁(EDB)は2024年にシンガポールのベンチャー企業の育成を支援する包括的イノベーション支援制度(CVL 3.0)に、今後2年間でS$3,200万(約36億7,800万円)の追加支援を行うと発表しているほか、既存の企業とスタートアップとのパートナーシップ育成にも注力しています。

スタートアップへの公的支援プログラム(Startup SG)としては、主に以下のようなものが挙げられます。

◆スタートアップの海外展開支援
◆国内での研究・人材開発支援
◆アクセラレーター(短期成長)、インキュベーター(長期成長)の各プログラム運営のコスト負担
◆人工知能(AI)やバイオテックなどディープテック分野への支援拡充

また、2024年9月時点でシンガポール国内におけるベンチャーキャピタルからの資金提供額は、世界第5位と上位に位置しており、ASEANにおいては総額が全体の67%を占める結果に。

こうした徹底した支援とさまざまな優遇措置によって、シンガポールはアジアの中でも類を見ないスタートアップ起業の集積地として台頭しています。

②スタートアップ・小規模企業への税制優遇措置

中規模企業に対する低税率や、年間の収益がS$10万未満のスタートアップへの税制優遇措置など、起業家にとって魅力的な条件が整っています。

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③デジタル分野の急速な進歩

シンガポールは「Smart Nation」構想によって、急速にテクノロジーの発達とイノベーションへの取り組みが進んでいます。2024年の世界知的所有権機構(WIPO)の発表によると、イノベーション能力と成果を総合的に評価する「世界イノベーション指数(GII)」で、シンガポールは世界第4位にランクインしており、デジタルビジネス環境が世界でも上位に位置している事がわかっています。

最先端のデジタル技術と政府支援でエコシステムをより強化し、広範なネットワークを構築するという大きな流れのなかで、未来を見据えたスタートアップが立ち上がりやすい環境になっています。

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④政府からの積極的な資金およびメンター支援策

初めての起業に意欲的な起業家を対象に、The Startup SG Founder (SSGF)というメンターシップと資金援助(S$2万~5万)が提供されるプログラムがあります。申請が通れば、あらゆる分野の専門家との連携を通じて投資家や企業とのネットワーク構築、秘書業務や会計知識などのメンタリングを受けることができます。

また、シンガポール政府は、スタートアップの課題を診断し、その持続的な成長を支援するOpen Innovation Platform (OIP)にも力を入れています。企業のニーズや問題を把握して、専門的かつ綿密なコンサルティングを行い、四半期ごとにそれらをデジタルイノベーションに活用しようという試みです。

常に改革を意識して前進していく姿勢から、これからも数多くの革新的なデジタルソリューションを生み出すことでしょう。

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⑤シンガポールの地理的優位性

シンガポールはその地理的な性質上、東南アジア市場へのアクセスが容易であり、急速に成長する中間層やデジタル化の進展といった地域の特性を活かしやすい環境にあります。シンガポールのスタートアップの多くは、東南アジア全体で事業を展開しているのも注目すべき点です。

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シンガポールのユニコーン企業の特徴

シンガポールのユニコーン企業は、多様な業種にわたりながらもいくつかの共通点を持っています。長年に及ぶ政府の支援策やベンチャーキャピタルによる多額の投資をはじめ、活発な投資環境がシンガポールのスタートアップ・エコシステムを支えており、この結果として現在は31社ものユニコーン企業が存在しています。

これらの企業の特徴として、最先端のテクノロジーを活用して既存の課題を解決するビジネスモデルを採用していることが挙げられます。特にフィンテック、eコマース、物流、ブロックチェーンなどの分野で顕著な成功を収めています。また、シンガポールを拠点としながらも、アセアン全域をターゲット市場として展開する傾向が強く、国際的な視野を持った事業展開が特徴的です。

更に、シンガポールのユニコーン企業は、ブラック ロックやソフトバンク ビジョン ファンドなどの国際的な投資家からの大規模な資金調達に成功しているケースが多く見られ、前述の政府投資やベンチャーキャピタルの充実と共に、ユニコーン企業増加を後押しをしてきました。

これらの企業の成長スピードも注目に値し、平均して6年11か月でユニコーン企業の地位に到達しており、世界的に見ても非常に速いペースで成長を遂げています。

このように、シンガポールのユニコーン企業は、革新的なテクノロジーや地域に根ざしたグローバル戦略、豊富な資金力、長期を見据えた成長戦略を背景に、急速な成長を遂げており、今後も東南アジア経済の牽引役として期待されています。

シンガポールのユニコーン企業31社

シンガポールのユニコーン企業31社を紹介します。フィンテック、暗号通貨、物流、eコマース事業など、次世代テクノロジーを担うユニコーン企業が多く、アリババやGICなど名だたる企業が投資を行っています。

Lazada

▪ 2012年創業→2014年11月にユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 2年10か月
▪ 年間収益は2023年末時点で約S$8億5,000万
▪ eコマース大手。東南アジア6か国で事業展開し、生活に根付く幅広い商品を取り扱う。
WEBサイト

Grab

▪ 2012年創業→2014年12月にユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 2年11か月 
▪ 年間収益は2023年末時点で約S$23億6,000万
▪ 配車サービスから始まり、フードデリバリーや決済サービスも提供する「スーパーアプリ」。
WEBサイト

Garena

▪ 2007年創業→2015年3月にユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 8年2か月
▪ 評価額は2014年7月時点で約S$10億
▪ テクノロジー企業Seaの子会社でオンラインゲームプラットフォームを運営。人気ゲーム「Free Fire」の開発元。
WEBサイト

TauRx

▪ 2002年創業→2018年3月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 16年2か月
▪ 年間収益は2023年7月末時点で約S$78万4,000
▪ アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療薬の開発に特化したバイオテクノロジー企業。
WEBサイト

ONE Championship

▪ 2011年創業→2018年10月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 7年9か月
▪ 年間収益は2021年末時点で約S$8,450万
▪ アジア最大の総合格闘技メディア。eスポーツ部門も展開。
WEBサイト

Airwallex

▪ 2015年創業→2019年3月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 4年2か月
▪ 年間収益は 2023年末時点でS$6,070万
▪ 企業向けのデジタルペイメントを提供。ローカルおよびグローバルビジネスにおいて財務運営の一元管理が可能に。
WEBサイト

Trax

▪ 2010年創業→2019年7月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 9年6か月
▪ 年間収益は2019年末時点で約S$2000万
▪ 小売業向けの画像認識技術を提供するリテールテック企業。
WEBサイト

HyalRoute

▪ 2015年創業→2020年5月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 5年4か月
▪ 評価額は2020年9月末時点で約S$34億
▪ 通信インフラ企業。ファイバー網の販売・リースを行う。
WEBサイト

PropertyGuru

▪ 2006年創業→2020年9月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 14年8か月
▪ 年間収益は2023年末時点で約S$9,200万
▪ 不動産ポータルサイト運営会社。東南アジア各国で展開。
WEBサイト

JustCo

▪ 2011年創業→2020年11月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 9年10か月
▪ 評価額は2020年11月時点で約S$10億
▪ コワーキングスペース運営企業。アジア太平洋地域で事業展開。
WEBサイト

PatSnap

▪ 2007年創業→2021年3月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 14年2か月
▪ 年間収益は2022年末時点で約S$5000万
▪ 特許分析AIプラットフォームを提供する知的財産テック企業。
WEBサイト

Acronis

▪ 2003年創業→2021年5月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 18年4か月
▪ 評価額は2022年7月末時点で約S$35億
▪ データ保護ソフトウェアを提供するサイバーセキュリティ企業。
WEBサイト

Moglix

▪ 2015年創業→2021年5月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 6年4か月
▪ 年間収益は2024年3月末現在で約S$70億1,000万
▪ 企業向けのECサイト運営。工具や電子用品、医療用品など幅広いカテゴリーの製品を取り扱う。
WEBサイト

Carro

▪ 2015年創業→2021年6月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 6年5か月
▪ 年間収益は2023年3月末時点で約S$11億
▪ AI活用の中古車オンラインマーケットプレイス。レンタカーやリース事業も展開している。
WEBサイト

Amber Group

▪ 2017年創業→2021年6月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 4年5か月
▪ 年間収益は2016年9月末時点で約S$2,000
▪ 暗号資産取引プラットフォームを運営するフィンテック企業。
WEBサイト

Bolttech

▪ 2020年創業→2021年7月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 1年6か月
▪ 年間収益は2023年末時点で約S$413万
▪ 保険テクノロジー企業。デジタル保険プラットフォームを運営。
WEBサイト

NIUM

▪ 2014年創業→2021年7月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 7年6か月
▪ 年間収益は2022年末時点で約S$1億1,700万
▪ 国際送金プラットフォームを提供するフィンテック企業。
WEBサイト

Matrixport

▪ 2019年創業→2021年8月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 2年7か月
▪ 評価額は2022年11月時点で約S$15億
▪ 暗号投資商品や金融サービスソリューションを提供する企業。
WEBサイト

Eruditus

▪ 2010年創業→2021年8月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 11年7か月
▪ 年間収益: 2024年6月末時点でS$4億4,800万
▪ デジタル・ビジネス戦略・財務などを包括的に学べるエグゼクティヴ向けの教育プラットフォームを展開
WEBサイト

Emeritus

▪ 2015年創業→2021年8月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 6年7か月
▪ 年間収益は2023年6月末時点で約S$8,000万
▪ オンライン教育プラットフォーム。世界トップクラスの大学と提携。
WEBサイト

Advance

▪ 2016年創業→2021年9月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 5年8か月
▪ 評価額は2022年3月時点で約S$20億
▪ ID認証・リスク管理を主軸とするデジタルソリューションを展開。
WEBサイト

Atome

▪ 2016年創業→2021年9月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 5年8か月
▪ 評価額は2022年10月時点で約S$20億
▪ 後払い決済サービス(BNPL)を提供するフィンテック企業。
WEBサイト

Carousell

▪ 2012年創業→2021年9月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 9年8か月
▪ 年間収益は2023年末時点で約S$1億1,600万
▪ C2Cマーケットプレイス。東南アジアで人気のフリマアプリ。
WEBサイト

Ninja Van

▪ 2014年創業→2021年9月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 7年8か月
▪ 年間収益は2023年末時点で約S$5,100万
▪ 東南アジアで事業展開する配達・物流サービス企業。
WEBサイト

Sky Mavis

▪ 2019年創業→2021年10月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 2年9か月
▪ 評価額は2021年10月時点で約S$30億
▪ ブロックチェーンゲーム「Axie Infinity」の開発元。
WEBサイト

Multichain

▪ 2020年創業→2021年12月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 1年11か月
▪ 評価額は2021年12月時点で約S$12億
▪ ブロックチェーン間の相互運用性を実現するプロトコル開発企業。
WEBサイト

Coda Payments

▪ 2011年創業→2022年4月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 11年3か月
▪ 評価額は2022年4月時点で約S$25億
▪ デジタルコンテンツ決済処理プラットフォームを提供する企業。
WEBサイト

MEGAROBO

▪ 2016年創業→2022年6月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 6年5か月
▪評価額は2022年6月時点で約S$10億
▪ 工業系の研究・試験・品質管理ラボ自動化に向けた、ロボットソリューションを提供。
WEBサイト

Silicon Box

▪ 2021年創業→2024年1月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 3年
▪ 年間収益は2023年末時点で約S$10万5,000
▪ 半導体パッケージング企業。チップレット技術に特化。
WEBサイト

Polyhedra Network

▪ 2022年創業→2024年3月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 2年2か月
▪ 評価額は2024年3月時点で約S$10億
▪ Web3相互運用性のためのインフラを提供するオンライン型プラットフォームプロバイダー。EXPchainでのブロックチェーン連携など高度な技術を持つ。
WEBサイト

Sygnum

▪ 2017年創業→2025年1月ユニコーン企業認定
▪ ユニコーン企業になるまでの期間 8年
▪ 評価額は2025年1月時点で約S$10億
▪ デジタル資産とブロックチェーン技術に特化した銀行・プラットフォームプロバイダー。デジタル資産の保管、取引、発行を一元管理できるサービスを提供。
WEBサイト

世界的競争力を左右するユニコーン企業

シンガポールでは、政府の積極的な支援策と投資ファンドによってスタートアップ エコシステムが非常に充実しているため、数多くのユニコーン企業が誕生しています。今後、シンガポールがアジアのイノベーションハブとしての地位をさらに強化し、世界的な競争力を持つ企業を生み出し続けることが期待されます。

日本企業にとっても、シンガポールのスタートアップ エコシステムは、アジア市場進出や新規事業開発、パートナーシップ構築のための重要なルートとなる可能性を秘めています。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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