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【2024年】ユニコーン企業とは~世界の国別・企業ランキング/シンガポールは10位~

グローバル経済の中で、ユニコーン企業の存在感が増しています。本記事では、2024年の世界のユニコーン企業ランキングを紹介し、各国の特徴や取り組みを解説します。特にシンガポールの躍進と日本の現状に焦点を当てます。

ユニコーン企業とは

ユニコーン企業とは、企業価値を金額で表す評価額がUS$10億以上と評価される未上場のスタートアップ企業を指し、市場にはユニコーン企業として新たに誕生する企業と対象から外れる企業が常に存在します。

この用語は2013年にアメリカのベンチャーキャピタリスト、アイリーン・リー氏によって提唱されました。この名称は、ギリシア神話に登場する幻獣ユニコーンが由来で、その存在自体が稀有なものであることから「ユニコーン企業」と呼ばれるようになりました。

ユニコーン企業は、急成長と革新性を特徴とし、多くの場合、新しい技術やビジネスモデルを持っています。創業から比較的短期間で大きな成果をもたらしているため、各業界団体はその手法に関心を持ち、投資家も長期目線でその存在を有望視しています。

著名なユニコーン企業とその事例は以下の通りです:

▪配車サービスのUber:
スマートフォンアプリを活用して従来のタクシー業界に革命をもたらした。

▪宿泊シェアリングプラットフォームのAirbnb:
個人の空き部屋を活用する新しい宿泊のあり方を提案し、ホテル業界に大きな影響を与えた。

▪情報配信サービスのSmartNews:
マシンラーニングを応用し、個別に最適化されたニュースを提供。世界展開にも成功している。

世界でユニコーン企業が増加している背景には、テクノロジーの進歩や豊富な投資資金の存在があります。人工知能(AI)やブロックチェーンなどの新技術の登場により、革新的なビジネスモデルの創出が可能になりました。また、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドの資金増加により、スタートアップ企業が大規模な資金調達を行いやすくなっています。

世界のユニコーン企業数 国別ランキング

ランクユニコーン企業数
1 –米国703 (前年比 +37)
2 –中国340 (前年比 +24)
3 –インド67 (前年比 -1)
4 –英国53 (前年比 +4)
5 –ドイツ36 (前年比 ±0)
6 –フランス27 (前年比 +3)
7 イスラエル26 (前年比 +2)
8 –カナダ25 (前年比 +2)
9 ブラジル18 (前年比 +1)
9 –韓国18 (前年比 ±0)
11 –シンガポール17 (前年比 +8)
12 日本9 (前年比 +2)
13 メキシコ8 (前年比 ±0)
13 スイス8 (前年比 +1)
15 オーストラリア7 (前年比 -1)
出典:胡潤(Hurun)研究院

企業数では米国が703と見事1位にランクインしています。シリコンバレーがあるサンフランシスコには190のユニコーン企業があるとされ、「世界のユニコーンキャピタル」と呼ばれているほど。

続く中国は340と2位にランクイン。米国の半分ほどですが、数多くのユニコーン企業があります。企業数だけで見ると米国と中国が首位を占めており、やはり優れた教育機関や国土の広さなども大いに関係がありそうです。

2024年現在、ユニコーン企業を抱える国と都市は、53か国・291都市にも上り、昨年より1割前後増加しています。今後もさらに科学・テクノロジー分野での需要が増え、スタートアップが盛り上がるとみられることから、世界的にユニコーン企業の数も増加すると予想されます。

世界のユニコーン企業ランキング

次に各企業の「評価額」を基にした世界のユニコーン企業ランキングTOP10です:

ランク企業名 (国)評価額(US$bn)分野
1 –ByteDance (中国)220Social Media
2 –SpaceX (米国)180Aerospace
new!OpenAI (米国)100AI
4 Ant Group (中国)80FinTech
5 Shein (中国)65E-commerce
6 Stripe (米国)61FinTech
7 –Databricks (米国)43Big Data
new!Canva (オーストラリア)39Saas
new!Binance (マルタ)34Blockchain
10 WeBank (中国)33FinTech
出典:胡潤(Hurun)研究院

米国と中国がそれぞれ4つランクインしており、世界のユニコーン企業のリーディングポジションであることがうかがえます。

動画共有サービスTikTokを運営するByteDance、対話型AIのChatGPTを開発したOpenAI、イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発企業で、火星への発射も計画しているSpaceXが首位にランクインしています。この3社は、従来のビジネスモデルを大いに変革させた、まさに「ユニコーン」の名称にふさわしい企業と言えるでしょう。

他にも、同年の会計年度で約50%の収益増を達成したDatabricksや、需要の急増を受けて市場価値が大幅に上がったCanvaなども、その評価額の上昇が際立っています。

1位 アメリカ

アメリカは703社のユニコーン企業を有し、企業数では世界トップの座を維持しています。2024年は前年比37社増となり、全体の48%を占める活況ぶりです。シリコンバレーを中心とした強力なスタートアップ エコシステムが、この成功の鍵となっています。

例えば、宇宙開発企業のSpaceXは、再利用可能なロケット技術を開発し、宇宙産業に革命をもたらしました。また、決済サービスのStripeは、オンライン決済の簡素化により、eコマースの発展に大きく貢献しています。

アメリカのユニコーン企業の成功要因として、世界トップクラスの大学や研究機関との連携が挙げられます。スタンフォード大学やMITなどの教育機関が、革新的なアイデアと優秀な人材の供給源となっています。

2位 中国

中国は340社のユニコーン企業を有し、アメリカに次ぐ第2位となっています。中心地は北京や上海、深センなど。巨大な国内市場と政府による積極的なスタートアップ支援が、中国のユニコーン企業の成長を後押ししています。

ByteDance(TikTokの親会社)は、短尺動画アプリで世界的な成功を収め、ソーシャルメディア業界に新風を吹き込みました。Statista調べによる2024年のSNSユーザー数ランキングでは、いまや5位にまで昇りつめています。ファストファッションのSheinは、データ駆動型のサプライチェーン管理により、グローバル市場で急成長しています。

中国政府の「大衆創業、万衆創新」(多くの人が起業し、多くの人がイノベーションに携わる)政策は、スタートアップ企業の成長を強力に支援しています。

3位 インド

インドは67社のユニコーン企業を有し、第3位にランクインしています。急成長するデジタル経済と豊富な若年層人口が、インドのスタートアップ エコシステムを支えています。業種ではフィンテックとeコマース事業が多く、金融・通信業が特に発展している印象を受けます。

特にモバイルテクノロジー会社のInMobiは、人材と研究開発にコストをかけて国内で大きなシェアを生み出し、過去にはUS$1億4千万超の投資を受けるほど市場から評価を得ています。これらの分野以外にも、都市部の食生活を変革しているフードデリバリーサービスのSwiggy、最先端の技術を用いて医療サービスの更なる発展を目指すCitiusTechなど、基幹産業でも注目すべきユニコーン企業が数多くあります。

インド政府の「Digital India」イニシアチブは、デジタル化を推進し、スタートアップ企業の成長を後押ししています。

4位 イギリス

イギリスは53社のユニコーン企業を有し、ヨーロッパ最大のユニコーン企業数を誇ります。ロンドンを中心とした金融テクノロジー(フィンテック)の発展が際立っています。

デジタルバンキングのRevolutは、国際送金や暗号資産取引などの革新的なサービスで、従来の銀行業界に挑戦しています。決済サービスのCheckout.comは、グローバルな決済ソリューションを提供し、eコマースの成長を支えています。

イギリス政府は、EU離脱後も「テクノロジー ネーション」としての地位を維持するため、Iot(モノのインターネット)の拡張や自律走行車の開発にも力を入れており、スタートアップ支援策も強化しています。

5位 ドイツ

ドイツは36社のユニコーン企業を有し、ヨーロッパ第2位のユニコーン企業数を誇ります。製造業とテクノロジーの融合(インダストリー4.0)が、ドイツのユニコーン企業の特徴となっています。

デジタルバンキングのN26は、ヨーロッパ全域でモバイルバンキング サービスを展開し、従来の銀行業界に変革をもたらしています。プロセス マイニング及びビジネス プロセス関連企業のCelonisは、企業の業務プロセスを可視化・最適化するソフトウェアで、ビジネス効率化に貢献しています。

ドイツ政府の「Hightech Strategy 2025」は、研究開発とイノベーションを促進し、ユニコーン企業の成長を支援しています。

10位 シンガポール

シンガポールは17社のユニコーン企業を有し、アジアで中国、インドに次ぐ第3位にランクインしています。東南アジアのハブとしての戦略的な地理的位置と、ビジネスフレンドリーな環境が、シンガポールのスタートアップ エコシステムを支えています。シンガポールでは、先行投資であるプライベートエクイティが盛んで、スタートアップに優しい基盤ができています。コーポレートガバナンスが徹底していることも一つの要因といえそうです。

配車・デリバリーサービスのGrabは、東南アジア全域でサービスを展開し、地域の交通・物流インフラを変革しています。eコマース プラットフォームのLazadaは、アリババグループの傘下で急成長し、東南アジアのオンラインショッピング市場をリードしています。

シンガポール政府の「Smart Nation」イニシアチブは、デジタル技術の活用を促進し、スタートアップ企業の成長を後押ししています。また、「Startup SG」プログラムを通じて、起業家に資金援助やメンタリングを提供しています。

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12位 日本

日本は9社のユニコーン企業を有し、12位にランクインしています。高度な技術力と製造業の基盤を活かしつつ、新たな分野でのイノベーションが進んでいます。

クラウド人事労務ソフトのSmartHRは、日本企業の人事業務のデジタル化を推進し、業務効率化と働き方改革に貢献しています。AI技術企業のPreferred Networksは、深層学習技術を産業応用し、製造業や自動運転分野で革新を起こしています。

しかし、日本では若い起業家が少ないことやハイレベルなIT人材を確保するのが難しく、資金面の支援も少ないことから、他国と比べて創業数が伸び悩んでいることは否めません。円安の影響もあり、国外からの投資も今のところ期待できないという現実があります。

なお、日本政府は「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、2027年までにユニコーン企業を100社程度に増やす目標を掲げています。大企業とスタートアップの連携(オープンイノベーション)を図り、創出に必要な人材・ネットワーク構築を促すことで、リスク資金の供給を増やすなどの施策を実施しています。向こう数年でどのようにビジネス模様が変貌していくのか、政府の支援策を含めて注視したいところです。

ユニコーン企業の今後の展望

ユニコーン企業は、今後も世界経済において重要な役割を果たし続けると予想されます。特に、AI、サステナビリティ、ドローン、ヘルステック、フィンテックなどの分野で新たなユニコーン企業の誕生が期待されています。一方で、経済の不確実性や規制の強化など、ユニコーン企業を取り巻く環境は常に変化しています。今後は、持続可能な成長モデルの構築や社会的責任の遂行を官民一体で考えることが、ユニコーン企業の成功に不可欠となるでしょう。
このパラダイムシフトにより、世界がどのように進歩するのか、今後の動向に注目です。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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