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【連載】第2回 シンガポールの税務戦略

「出国税」シンガポール進出で気をつけるべき3つの日本の税務①
【連載】第2回 シンガポールの税務戦略

シンガポール進出の際、気をつけるべき3つの日本の税務。連載第2回目は個人や個人事業主の方に特に知って欲しい「出国税(国外転出時課税)」についてご説明します。移住だけではなく、駐在が決まった方も該当する場合があるのでぜひご参考にしてください。

シンガポール進出で気をつけるべき3つの日本の税制

日本の最高所得税率は55%(住民税込み)に対し、シンガポールの最高所得税率はなんと24%と半分以下です。このようにシンガポールは所得税率が低いことから、税負担軽減のためにシンガポール進出や事業展開を考える人がいるかもしれません。

しかし移住や進出の際に日本の税務ルール上、「出国税(国外転出時課税制度)」「タックスヘイブン対策税」「移転価格税」などが課税される場合があり、シンガポール進出が一概に節税になるとは言えないケースがあります。意外に知られていないこの3つの落とし穴、今回は「出国税(国外転出時課税制度)」からわかりやすく説明していきます。


出国税(国外転出時課税)の概要

日本から国外転出をする時点で1億円以上の資産を所有している場合、出国時にその資産に譲渡があったものとして対象資産の含み益に対して所得税がかかる税務ルールです。例えば、出国時に1億円相当の株式を保有している場合、売却していなくても、売却したと仮定した場合の計算上の所得税を納税しなければなりません。

出国税の対象者

●所有等している『対象資産』の価額の合計が1億円以上であること
●原則として国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて日本に住所または居所を有していること


対象資産

以下の資産を1億円以上保有すると、出国税の対象となります。

●有価証券等(株式や投資信託、匿名組合出資持分など)
●未決済信用取引等(未決済の信用取引・発行日取引)
●未決済のデリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)



資産評価の時期と申告期限


納税管理人の届出を行い国外転出後に申告をする場合

●資産1億円の評価時期:
国外転出時の価額となります。

●申告(納付)期限:
国外転出をした年の確定申告期限(毎年3月15日)までに申告、納税が必要です。

*納税管理人とは納税義務者である本人に代わって、税務手続きを行う人や法人のことをいいます。

 

納税管理人の届出を行わず国外転出前に申告をする場合

●資産1億円の評価時期:
国外転出予定日から起算して3カ月前の日の評価額となります。国外転出の予定日から起算して3カ月前の日から国外転出までに新たに資産の契約締結があった場合はその取引の契約締結時の価額で資産を算定します。

●申告(納付)期限:
国外転出日までに申告、納税が必要です。

 

納税猶予制度

大多数の駐在員は、シンガポールに駐在後、日本へ戻ります。また、移住目的で渡星した方も、再び日本に戻って居住をする可能性があります。このように日本に戻ることが予想される方々は、納税猶予制度を申請してから出国することで、納税を遅らせるもしくは(結果として)納税せずに最終的に日本に戻ることも可能です。納税を猶予できる期間は5年、さらに延長することにより最長10年まで適用可能です。

手続きは国外転出時までに納税管理人の届出書を提出すること、定申告期限までに一定の書類を添付した確定申告を行い、かつ、納税猶予分の所得税額及び利子税額に相当する担保を提供すること、といったものになります。

また、納税猶予期間中は、各年12月31日時点で所有等している適用資産(納税猶予を受けている資産)について、適用資産の種類、名称、銘柄別の数量などを記載した「継続適用届出書」を翌年3月15日までに所轄税務署に提出します。

各種減額措置等

納税猶予期間の終了、納税猶予期間中の適用資産の譲渡、相続といったイベントにより納税義務が発生したものの、適用資産の時価が国外転出時の時価よりも下落しているなど一定の場合には、更正の請求をすることで減額措置を受けることができます

海外進出時は日本の税制度の確認を

海外進出時に気をつけるべき3つの日本の税務制度。初回は「出国税」について主に個人や個人事業主、経営者の方に関連のあるものでした。次回からは法人の海外進出時に気をつけるべき「タックスヘイブン対策税制」、「移転価格税制」の特集が続きます。次回もぜひご期待ください。

監修:CPA Concierge Pte Ltd

CPA Concierge Pte Ltdは、2014年から日系企業のシンガポール進出、日本人起業家や富裕層のシンガポール移住、法人設立、ビザ申請、会計税務をサポートしています。これまで400件を超えるご相談に対応してきました。

シンガポールの永住権、お子様の学校、個人の銀行口座、人材採用時の注意点、MOM対策、他の士業事務所との連携、他の業者の紹介や調査、といった、士業事務所では通常は受けてくれない(しかしどこに相談してよいか分からない)お悩みも可能な限り何でもお受けしています。

基本的にすべてのクライアントに日本人スタッフ(日本語ネイティブ並みの非日本人含む)を配置しており、シンガポールでのビジネスが初めての企業でも安心して日本語でご相談いただける体制となっています。

<企業情報>

CPA Concierge Pte Ltd
住所:2 Kallang Avenue, #07-25 S339407
最寄駅:EW11 Lavender駅、DT23 Bendemeer駅
営業時間:月~金 8:00~17:00
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萱場 玄氏

会計事務所CPAコンシェルジュ(CPA CONCIERGE PTE LTD)創業者。

公認会計士(日本)、税理士(日本)、プロフェッショナルカンパニーセクレタリー(シンガポール)、Xero公認アドバイザー、経営心理士。





 





●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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