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シンガポールで法人を設立するには?費用・メリット・条件などを徹底解説【2025年】

シンガポール法人など、事業体の種類や方法についてご紹介します。法人等の設立に必要な書類や費用、要する時間をステップに沿って解説しています。シンガポールで法人設立を検討されている皆様に必見の内容です。

シンガポールの法人設立~主な事業形態~

シンガポール進出する際は、「現地法人・支店・駐在員事務所」のいずれかの事業体を選択するのが一般的です。ここでは、それぞれの事業体の簡単な概要と、その設立方法について掘り下げていきます。

現地法人

現地法人は、日本の親会社とは独立した法人格となります。一般的には日本法人が株主=親会社となり、シンガポール法人が子会社になるという親子会社の関係をとります。子会社とはいえ、親会社とは独立した法人格であるため、シンガポール法人を設立した後、履行遅延や履行不能などの債務不履行に陥った場合でも、原則として親会社である日本法人には責任が生じません。

また、シンガポール法人と日本法人とで資金移動をする際、場合によっては追加で課税負担や申告義務が生じるケースもあります。

支店

現地法人と同等の経済活動が可能ですが、シンガポールでは独立した法人格を持たず、外国の法人格のままシンガポールでの事業所を設立する方法です。日系企業においては、親会社の資本金が大きい銀行や保険といった金融業や、建設業についてシンガポール支店により進出する傾向にあります。

現地法人との違いは、業務上の規制や問題が生じた場合に、日本本社(=本店)が責任を取る必要がある点です。また、現地法人では軽減税率などの税金優遇が認められていますが、支店での優遇制度は基本的に利用できません。あくまで外国にある法人(=本店)がベースにあるため、支店の設立には本店の情報が必要になります。

駐在員事務所

主に外国法人がシンガポールでの事業を開始するための準備段階として設立する形態です。シンガポールで駐在員事務所を設立した場合、販売や営業などの利益を生む経済活動ができません。現地での市場調査やPR活動、情報収集に限られますが、コストがかからず簡易的な手続きで設立や維持が可能です。

各事業形態のメリット・デメリットは?

シンガポールでの事業体設立について、3つの方法を紹介しました。ここでは、それぞれのメリット・デメリットについて紹介します。

現地法人のメリット

現地法人のメリットは、低税率の恩恵を最大限受けることが可能である点です。2025年4月現在、シンガポールの法人税率は17%ですが、部分免税制度により中小企業での実効税率は10%前後になることも多いといえます。日本の法人税の実効税率である約30%と比較すると、シンガポールの方が圧倒的に税金費用を抑えることができます。

また、営業や販売のような経済活動ができることや、他の事業体と比較して設立手続きが容易であることも現地法人のメリットです。現地法人の設立方法は、「シンガポールでの法人設立方法は?」で解説します。

現地法人のデメリット

シンガポールの現地法人は日本の親会社とは異なる独立した法人格となるため、遵守しなければならないさまざまな法的義務があります。会社の取締役や秘書役の選任、年次株主総会(AGM)の開催、年次報告書の提出など、さまざまな法定要件が定められていることに注意が必要です。支店と異なり、シンガポール子会社から親会社(日本)へ配当する場合には親会社(日本)側に課税が発生する点も留意する必要があります。

支店のメリット

支店設立のメリットは、シンガポール支店が赤字運営であっても、日本本社の利益とシンガポール支店の損失を相殺して日本法人の(日本の)法人税負担が軽くなる点が挙げられます。日本の法人税の節税になる上に、本店・支店間の資金移動も基本的に自由で、日本側で配当として課税されることもありません。万が一シンガポールから撤退する際にも、現地法人ほどコストや時間がかからないため、リスクマネジメントにもなるという側面もあります。

支店のデメリット

日本法人のシンガポール支店の大きなデメリットは、シンガポールの低い法人税率の恩恵を受けることができないことが挙げられます。また、通常シンガポールの支店は、シンガポールでは非居住法人として取り扱われるため、外国税額控除などの一定の税務上の優遇措置も通常は適用できないとされています。

また、シンガポール支店は、シンガポールでの事業から生じた損益を把握し、シンガポールでの事業から生じた資産と負債を示す決算書一式を作成し、会計監査を受けたうえでACRAに提出する必要があります。支店から現地法人への移行も手続き上簡単ではなく、その場合は今後の展開を大幅に見直す必要も出てきます。

駐在員事務所のメリット

駐在員事務所のメリットは、進出を決定する前に、シンガポールのビジネス環境の調査・視察をすることができる点です。継続的なビジネス成長のために現地の情報収集は不可欠です。また、決算や法人税などに関する申告義務がないこと(個人所得税の申告は必要)、閉鎖手続きが容易に行えること、本格的な事業開始前に就労ビザや社宅を用意できることなども挙げられるでしょう。毎年の更新手続きが必要ですが、原則として最長3年間の事務所継続が認められます。

駐在員事務所のデメリット

駐在員事務所のデメリットは、営業活動が許可されていない点といえます。設立条件や必須書類等も細かく定められており、設立要件を満たさずに設立できないケースもあります。

駐在員事務所から現地法人や支店に事業体を変更する際には、現地法人や支店で進出した時に必要な手続きと費用が生じることにも注意が必要です。

<条件>
・外国企業の売上高が$250,000を超えていること
・外国法人の設立年数後、3年が経過していること
・駐在員事務所のスタッフは5人未満であること

<必須の補足書類>
・外国法人の登記簿謄本&公式の英語翻訳
・外国法人の最新の監査済み決算書

<費用>
・年間S$200
(申請が不合格または取り下げられた場合の返金不可)

シンガポールでの法人設立方法は?

今回は現地法人を設立する方法をご紹介します。シンガポール政府が外国企業の誘致に積極的なこともあり、手続きはシンプルです。※一般的なケースを記載しています。

1.規制業種や事業のライセンスの有無を確認する

2.資本金の準備(S$1から設立が可能ですが、就労ビザ対策のためS$10万以上が一般的です)

3.コンサルティング会社、法律事務所、会計事務所など法人設立に詳しい専門業者の選定

4.会社設立時の重要事項を決定する
重要事項とは:会社名、事業内容、法人登記住所(シンガポール)、会計年度末、株主、取締役など

5.会社名を会計企業規制庁(ACRA)に申請・取得
   会社名の申請費用:S$15

6.居住取締役と秘書役の選任
※取締役には少なくとも1人(18歳以上)のシンガポール居住者が必要

7.定款の作成(ACRAへの登録要)

8.会社の設立申請
 登録費用:S$300

9.法人銀行口座の開設

10.就労ビザ申請

11.オフィスの決定や採用計画など

シンガポールでの法人設立費用は?

シンガポールでの法人設立にかかる費用について、6つのポイントから解説します。

最低資本金

法人を設立する際、資本金を用意する必要があります。シンガポールでの最低資本金は、S$1(日本円で※約109円)から法人登記が可能です。ただし、会社設立後は就労ビザの取得や銀行口座の開設にある程度の費用がかかります。特に就労ビザを申請する場合は事前にS$10万以上の資本金額を目安に用意しておくとよいでしょう。
※執筆時点2025年4月下旬の為替レートで計算

法人設立の申請費用

シンガポールで法人を設立して経済活動を始める際、会社名の申請が必要です。会社名の申請費用はS$15(名称一つにつき)となります。会計企業規制庁(ACRA)のHPから、会社の設立申請を行う際、設立申請費用S$300が別途必要となり、合計でS$315が会社設立の実費となるのが一般的です。加えて、専門業者に依頼する場合は専門家報酬がかかることになります。

取締役

法人設立時、現地居住の取締役を「最低1人」登記する必要があります。法人設立時点でシンガポール在住の取締役を選任できない場合は、会計事務所やコンサルティング会社に代理で取締役の名前貸を依頼することも可能です。この場合、名義貸し費用が必要です。

会社秘書役

会社秘書役は、会社を運営していくための議事録作成や登記局とのやり取りなど、シンガポールの法令に基づいた経済活動が行われているかを監視、記録保存する役職です。

シンガポールでは法人設立後、6か月以内に会社秘書役(カンパニーセクレタリー)を選任する必要があります。選任がない場合は、最高S$1,000の罰金を科せられる可能性があります。一般的には会計事務所やコンサルティング会社に依頼することとなり、ここでも専門家費用が発生します。

ビザ取得費用

日本人がシンガポールで就労する際、原則として就労ビザを取得しなければなりません。主な就労ビザには、Employment Pass(EP)と、S Passがあります。専門業者に依頼する場合は専門家報酬と、以下のシンガポール政府への実費が必要となります。

申請手数料有効化手数料
Employment Pass(EP)S$105S$255
S PassS$105S$100

Employment Pass(EP)は、専門職や管理職、経営者向け就労ビザといえます。
※最低月額給与がS$5,600(金融サービス業界はS$6,200)、ビザ申請者や会社の状況に応じた申請条件があります。
※年齢、学歴や会社の状況により最低月額固定給は異なります。
※2025年1月1日から2025年12月31日までに有効期限が切れるビザの更新に必要な最低給与額はS$5,000(金融サービスはS$5,500)

S Passは、中技能熟練労働者向けです。申請条件は、最低月額給与S$3,150(金融サービス業界はS$3,650)、大学、もしくは短期・専門学校を卒業していることなどです。

※年齢、学歴などにより最低月額固定給は異なる
※2025年9月から最低月額給与の引き上げあり

詳細は下記の関連記事をご覧ください。

【関連記事】
シンガポールの就労ビザの特徴と取得のコツをご紹介【2024年】

オフィス賃料

法人設立時、法人の登記住所としてシンガポール国内の住所が必要です。ただし、法人設立登記が完了していなければ、法人名義で賃貸契約を結べません。多くのケースでは、コンサルティング会社や会計事務所から一時的に登記住所を借りられる住所貸しサービスを利用します。こうして正式な設立許可を得た後、新たに賃貸借契約を結んだオフィス住所に変更するという流れが一般的です。

法人設立手続きがシンプルなシンガポール

法人設立時の手続きについてご紹介しました。シンガポールでの法人設立は、政府が外国企業の誘致に積極的なこともあり、世界の他の国々と比べてとてもシンプルで迅速です。シンガポールでのビジネス展開を検討している方の参考となれば幸いです。

監修:CPAコンシェルジュ様のご紹介

CPA Concierge Pte Ltdは、2014年から日系企業のシンガポール進出、日本人起業家や富裕層のシンガポール移住、法人設立、ビザ申請、会計税務をサポートしています。これまで500件を超えるご相談に対応してきました。

シンガポールの永住権、お子様の学校、個人の銀行口座、人材採用時の注意点、MOM対策、他の士業事務所との連携、他の業者の紹介や調査、といった、士業事務所では通常は受けてくれない(しかしどこに相談してよいか分からない)お悩みも可能な限り何でもお受けしています。

基本的にすべてのクライアントに日本人スタッフ(日本語ネイティブ並みの非日本人含む)を配置しており、シンガポールでのビジネスが初めての企業でも安心して日本語でご相談いただける体制となっています。

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萱場 玄氏

会計事務所CPAコンシェルジュ(CPA CONCIERGE PTE LTD)創業者。
公認会計士(日本)、税理士(日本)、プロフェッショナルカンパニーセクレタリー(シンガポール)、Xero公認アドバイザー、経営心理士。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
●執筆時点2025年4月下旬の為替レートで計算

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