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シンガポールの金融を徹底解説~銀行・証券・フィンテックまでシンガポールの金融情報完全ガイド~

シンガポールは、アジアを代表する国際金融センターとして世界中の注目を集めています。その背景には、強固なガバナンス、優れたビジネス環境、安定した法制度、革新的な金融政策があります。多種多様なセクターが存在し、国際的なニーズが流動するシンガポールは多くの投資家や企業にとって魅力的な投資環境です。本記事では、シンガポールの金融業界の特徴や最新動向について詳しく解説します。

シンガポールと金融~シンガポール金融管理局(MAS)~

シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore-MAS)は1971年に設立された国内の中央銀行かつ通貨当局です。すべての金融機関を監督する役割だけでなく、通貨・銀行・保険・証券・金融部門を一元管理する統合型金融監督機関としての役割も果たしています。

MASは、通貨の安定性維持、インフレを起こさない健全な経済成長促進、そして国際的な競争力強化を目的に設立されました。また、MASはフィンテックやグリーンファイナンスなど新しい分野への投資を積極的に進めることで、ブロックチェーンによる安全な決済サービスや強固なデータ保護、サステイナブルな金融サービスなどを可能にしており、これがシンガポールを国際的な金融ハブへと押し上げる原動力となっています。

シンガポールの中央銀行として、MASが担当する主な業務は以下のとおりです。
▪金融政策の運営と実施、通貨発行、決済システムの監視、政府の銀行業務および金融代理人としての役割
▪金融サービスの統合的な監督および金融の安定性の監視
▪シンガポールの外貨準備高を管理

シンガポールと金融~金融のハブ~

英国ロンドンに本拠を置くZ/Yen Groupによる「グローバル金融センター指数(Global Financial Centres Index-GFCI)」によると、シンガポールは世界第4位にランクインしています。このランキングはビジネス環境、人材、インフラなど多岐にわたる指標で評価されており、シンガポールはその安定性と効率性、世界競争力で高い評価を得ています。また、金融部門への積極的なテクノロジー投資、大手銀行の外貨口座を管理できるマルチカレンシー制度なども世界から注目を集めています。

さらに、シンガポールで金融機関を立ち上げた場合、正式に認可されれば税制優遇措置や助成金制度を利用できるという大きなメリットがあります。

金融センターランキングでTOP

以下が2024年9月に公表されたGFCIの最新版ランキングです。ご覧のとおり、シンガポールは第4位にランクインしています。このランキングにより、シンガポールはGFCIモデルで使用される5つの指標―ビジネス環境(Business Environment)、人的資本(Human Capital)、インフラ(Infrastructure)、金融セクターの発展(Financial Sector Development)、信用度(Reputation)において世界的に高い評価を得ていることがわかります。

ランク都市評価ランク前回比評価の前回比
1ニューヨーク(米国)7630▼ 1
2ロンドン(英国)7500▲ 3
3香港(中国)749▲ 1▲ 8
4シンガポール747▼ 1▲ 5
5サンフランシスコ(米国)7420▲ 2
6シカゴ(米国)740▲ 3▲ 4
7ロサンゼルス(米国)739▲ 1▲ 2
8上海(中国)738▼ 2▼ 1
9深セン(中国)732▲ 2▼ 2
10フランクフルト(ドイツ)730▲ 3▼ 2
参考:Global Financial Centres Index-GFCI

税制

シンガポールは法人税率が17%と低く、さらに特定条件下でパイオニア・インセンティブなどの税制優遇措置が適用されます。また、部分免税制度や新スタートアップ会社免税制度も整っており、シンガポールでの法人設立は他の国よりも課税のハードルが低いといえるでしょう。シンガポールは二重課税防止協定(Double Taxation Agreement-DTA)を90か国以上と結んでおり、多国籍企業にとって非常に有利な環境です。

外資

外資系企業に対しても開放的であり、多くのグローバル企業がアジア太平洋地域の拠点としてシンガポールを選んでいます。特に先進的な規制環境と法的安定性、東南アジアの中心に位置するという地理的優位性が外資の進出を後押ししています。

また、特定の業種に関する出資比率制限以外で外資100%の出資が可能なため、資金調達がしやすいこと、輸出入や海外送金に対して規制がほぼないことも大きな要因です。歴史的に見ても、シンガポールは先進国の企業を数多く誘致することで経済発展を遂げてきました。現在のシンガポールが外資の力で発展してきたのは間違いありませんが、それ以上に政府主導による政策がとても合理的で優れたものだったことが伺えます。

シンガポールと金融~銀行~

シンガポールを代表する3大メガバンクの存在、近年のデジタルバンクプラットフォームとフィンテックの台頭について解説していきます。

シンガポールの3大銀行

シンガポールにはDBS銀行、OCBC銀行、UOB銀行という3大銀行があります。これらは国内外で高い評価を受けており、それぞれが地域経済に重要な役割を果たしています。2024年に発表された米GlobalFinance誌による「アジアの最も安全な銀行(The Safest Banks in Asia)」のランキングでは、この3大銀行はトップ3位を独占しており、アジア圏内では国内外ともに絶大な信頼を寄せられていることがわかります。

基本的にシンガポール居住者であれば、口座手続きがオンラインで完結でき、開設後は金利ボーナスをはじめとするさまざまなメリットを享受できます。最新情報は必ず各銀行のホームページにてご確認ください。

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シンガポールの金融サービスデジタル化

近年ではデジタルバンクやオンライン決済サービスなど、新しい形態のサービスが急速に普及しており、シンガポールはこの分野でも世界をリードしています。

MASは個人や企業向けにデジタルバンクライセンスを提供しており、これによってデジタル銀行の普及が促され、金融サービスの競争が活性化しています。デジタルプラットフォームによる「時間やコストの削減」、「サービスのカスタマイズ」、「ユーザーフレンドリーなインターフェース」とフィンテックとの組み合わせによって、最適化された金融ソリューションが構築されています。

シンガポールと金融~証券取引~

金融系では特に気になる証券取引。ここではシンガポール証券取引所(SGX)の特徴とメリット、グローバルからの資金調達について述べていきます。

シンガポールの証券取引や資本市場

シンガポール証券取引所(SGX)はアジア最大級の取引所として、多様な投資商品を提供しています。特にREIT(不動産投資信託)市場では、その安定した配当利回りと透明性の高い投資環境によって世界トップクラスの規模を誇っています。

上場企業の約40%と上場債券の80%以上がシンガポール国外で発行されていることから、世界中の企業が株式や債券を発行して資金調達が可能なことがわかります。海外の企業や投資家にとって流動性の高い、注目すべき国際市場です。

株式や債権以外にも、金融派生商品、先物取引、株価指数などのオファリングが充実しており、それぞれが子会社および合弁会社によって運営されている広大なネットワークを形成しています。

その公平性・具体性・透明性の高さから、SGXへの上場には以下のようなメリットが挙げられます:
▪ アジアにおけるビジネス展開に有利
▪ 資金調達がしやすい
▪ 優秀な人材を確保できる
▪ ブランドの向上につながる
▪ 優良な投資家を募ることができる
▪ 一定の条件下で補助金が得られる

グローバルな投資家からの資金調達

前述したように、シンガポールはGFCIにおいて主要な金融センターと評価されており、さまざまなグローバル投資家からの資金調達が期待できます。特にSGXはその透明性と効率性から多くのグローバル投資家に支持されています。また、外資規制が緩やかで海外投資家が資金を投入しやすいのも大きな特徴です。

さらに、政府系ファンドであるシンガポール政府投資公社(GIC)や政府投資会社(Temasek)が、持続可能性や先端テクノロジーへの積極的な投資を行い、継続的にリターンを提供していることも市場の活性化に寄与しています。

シンガポールと金融~フィンテック(金融テクノロジー)~

シンガポールのフィンテック政策およびAIプログラムについて解説します。

シンガポールのフィンテック推進政策

MASはFinTech Innovation LabやRegulatory Sandboxといったフィンテック分野への積極的な支援を行っており、「フィンテック・フェスティバル」など国際的なイベントも開催されています。この取り組みにより、多くのスタートアップが成長しています。

資金調達額においても、ASEAN6か国(シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン)中で、フィンテック分野のスタートアップの資金調達額は2024年1〜9月にUS$14億に達しており、ASEAN最大の資金調達国とされています。

国家AIプログラムAIDA

MASは、シンガポールの金融セクターの競争力を高め、持続可能な成長を支援するために「AIDA」の導入を推進しています。AIDAとは、金融機関やフィンテック企業に人工知能(AI)とデータ解析の技術を導入し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を促進するプラットフォームです。AIDAエコシステムを構築することで、研究開発および人材のAIスキル向上を促進し、シンガポールを世界有数の金融ハブとして位置付けています。

シンガポールのフィンテック市場の成長

フィンテック事業は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックにより、大きくその在り方を変容させました。これによってオンライン決済やデジタルバンキング、Eコマースなどが一層市民の間で浸透し始め、今ではシンガポール人にとって基幹インフラのひとつになったといえます。

フィンテックによって支払いや融資の効率化が進むにつれて、多くの金融機関や企業が画期的な新規サブセクターを生み出していますが、特に注目すべきはブロックチェーン技術でしょう。暗号通貨や各種決済サービスで用いられるこの技術は、スマートコントラクトやトレーサビリティ、データ改ざん防止に非常に適しているため、今後も多くの関連プロジェクトが実施されるとみられます。これらのシンガポールの革新的技術がアジアのフィンテック市場牽引の一因と考えられています。

予測によると、シンガポールにおけるフィンテック市場の取引額規模は、2029年にUS$631億8000万まで成長するといわれています。今後、この分野はアジア太平洋地域のみではなく、世界からも注目されるでしょう。

シンガポール金融業界の未来展望

シンガポールはその安定した経済基盤と魅力的な投資環境、革新的な政策によって、今後も国際的な金融ハブとして成長し続けるでしょう。特にフィンテックやグリーンサステナビリティ分野でさらなる発展が期待されます。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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