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シンガポールの建築事情・世界が注目する有名な建築15選~Marina Bay SandsからNational Museumまで~

シンガポールは、近未来的で革新的な建築が立ち並ぶ都市として知られています。マリーナ ベイ サンズやジュエル チャンギ エアポートなど、世界中から注目を集める近未来的な建築物が多く、ビジネスマンにとって魅力的な都市です。また、歴史的建造物や緑化を重視した都市計画が多いのもシンガポールの大きな特徴です。

この記事では、シンガポールの建築事情や建設プロジェクト、そして日本人建築家が手掛けた作品について詳しく紹介します。

シンガポールの建設・建築事情

​近年、シンガポール政府は、建設・建築分野において、持続可能性と住みやすい住環境を維持するために「グリーンマーク認証制度」や「シティ イン ネイチャー(City in Nature)」構想といった方針を掲げています。

グリーンマーク認証制度は、建築物の環境性能を評価するために2005年にシンガポールで導入された制度です。申請すると、エネルギーや水の使用効率、住環境保全などが包括的に審査され、環境への影響低減度とパフォーマンスの高低が評価されるシステムです。

シティ イン ネイチャー構想では、都市環境にさらに自然を取り戻すという理念があり、シンガポールを自然の中にある都市にするというビジョンを達成するために、持続可能性・環境省(MSE)、貿易産業省(MTI)、運輸省(MOT)、国家開発省(MND)、教育省(MOE)の5つの省庁が先頭に立って数々の主要戦略を掲げています。

また、政府は大規模建設工事や情報通信技術(ICT)の政府入札を導入していますが、2024年度からは段階的に環境持続性も審査対象となっています。

▶シンガポール建築建設庁 (BCA) 公式サイト

つまり入札で選定されるには、一定の環境配慮への基準を満たす必要があります。これは政府が行うべき環境行動「シンガポール グリーンプラン2030」などの目標を達成し、都市の緑化やCO2排出削減、脱炭素化などの取り組みを積極的に進めるためとみられます。

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未来都市としてのシンボル

シンガポールには最先端技術を駆使した近未来型の複合施設が数多くあります。高度な計算によって生み出された建築モデル、視覚に訴えかける印象的なデザイン、合理性を重んじた構造は世界からも注目されています。自然科学との調和やサステナビリティを重視している点もポイントが高いでしょう。ここではシンガポール観光で代表的なリゾート地、国際空港、植物園の建築様式をご紹介します。

Marina Bay Sands

マリーナ ベイ サンズは、2010年にオープンしたホテル、カジノ、ショッピングモールなどを備えた統合型リゾート施設です。3棟が連なる57階建てのホテルタワーで、高さは約191mにも達します。シンガポールの建造物の中でも特に印象が強い見た目のため、見たことがあるという方も多いでしょう。

出典:Marina Bay Sands
2枚のトランプカードが互いにもたれあう様子にインスピレーションを得たデザイン

平面では3つのタワーが1つの展望デッキの下に並んでいるように見えますが、よく見ると3つのタワーは26度の角度でわずかに傾斜しているという独特なデザインをしており、スカイパーク展望デッキもそれに合わせるかのようにわずかな曲線を描いています。

これは一流建築家モシェ・サフディ氏が考案したもので、この印象的なアートデザインも公共建築を楽しむ上で重要な役割を果たしています。
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Gardens By The Bay

ガーデンズ バイ ザ ベイは、地上から50mの高さにもなる18本のスーパーツリーが立ち並ぶ植物園で、2012年にオープンしました。自然と技術を融合させた未来的なデザインが特徴です。スーパーツリーはその象徴的なデザインが示すように、パイナップル、シダ、ラン、熱帯のつる植物など多種多様な植物を展示しています。

また、同施設内に建つSG50 Lattice The Future of Usパビリオンは約11,000枚の穴あきパネルを組み合わせたデザインになっており、熱帯植物​​の葉の下で太陽光を浴びながら散歩している感覚を表現しています。

これは、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)がその環境独自のサステナビリティを考慮してデザインしたもので、2018年にPDA Design of the Yearという名誉ある賞も受賞しています。
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Jewel Changi Airport

ジュエル チャンギ エアポートは、2019年にオープンした第1ターミナルホールと直結する空港内複合施設で、デザインはモシェ・サフディ氏が担当しました。

内部は円形構造になっており、空港施設と緑豊かな庭園が一体になったような造りになっています。特にガラスドーム型の大規模商業施設「ジュエル」では、吹き抜けの天井から流れる人工滝が特徴です。これはこの地域特有の雨水で、毎分10,000 gallon(ガロン) 以上流れる水によって施設内の冷却と通気性をもたらすといわれています。

緑・水・モダンシティの調和のバランスが絶妙で、その革新的なデザインも手伝って「庭園の中の都市」という評判を得ています。
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Art Science Museum

アート サイエンス ミュージアムは、マリーナ ベイ サンズのウォーターフロント沿いに位置した「蓮の花」を思わせる建造物です。建物それ自体がアート作品といってもいい独特な形状で、一つひとつの「花びら」に当たる部分が展示スペースになっており、花びらの先端の天窓から自然光が入る構造です。

また、アートな側面のみならず、雨水の再利用という点で合理的な側面もあります。雨水が花の中心部の貯水池に集まると、造園や水施設の管理、トイレの水などに再利用されます。水が中央部から35mの滝となって流れ落ちる様子は圧巻の一言。
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日本人建築家 丹下健三が残した建築

有名な一級建築士である丹下健三氏。あの東京都庁や代々木国立競技場の設計を担当した人物です。丹下氏は日本のみならず、シンガポールの建築物のデザインも手がけていました。その代表的な2つをご紹介します。

One Raffles Place

ワン ラッフルズ プレイスは、「世界のタンゲ」といわれた一級建築士の丹下健三氏が設計した、シンガポールのビジネス街に位置するオフィスビルです。「建物で人を惹きつける」という理念を基にしたその画期的なデザインが特徴的です。

2つの象徴的な3角形の建物で構成されており、1階には人の賑わいを作る目的でパブリックスペースが備えられています。その隣に建つタワー2は健三氏の息子である丹下憲孝氏がデザインしています。タワー2では健三氏の遺志を受け継ぎつつも、さらにモダンで芸術的なクリスタルのようなデザインを採用しました。どちらもドラマチックな照明効果が取り入れられ、エネルギーや環境に配慮した設計になっています。
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Nanyang Technological University(NTU)

南洋理工大学(NTU)は、前身である南洋理工学院(NTI)のころに丹下健三氏が設計した校舎が今でも残っており、現在のNTUキャンパスの基本レイアウトになっています。中央の「背骨」とそこから直角に伸びる「指(工学部施設)」がその代表例です。グリーンルーフを備えた建物で、都市の雨水の貯水、ヒートアイランド現象の緩和、エネルギー消費の削減、空気質の改善といった効果が見込めます。
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緑と共存する都市

シンガポールには、環境に配慮した高性能な建造物が立ち並んでいます。特にホテルやオフィスビルはその傾向が顕著です。緑との調和や太陽光の有効活用が盛んなのは環境先進国といわれる所以でしょう。シンガポール政府は、2030年までに緑化を進める計画を推進しており、都市開発において持続可能性を重視しています。

Oasia Hotel Downtown

オアシアホテル ダウンタウンは、緑豊かな外観が特徴のホテルで、シンガポールの都市環境に調和しています。建築会社WOHAのPatricia Urquiola氏がデザインを手がけた造りで、27階建てで部屋数は314室にもなります。

シンガポールのセントラル ビジネス地区(CBD)に建ちながらも、新鮮な空気と自然光、ヒーリングサウンドを堪能できるホテルです。トロピカルな摩天楼をはじめとするモダンで機能的なスタイル、内部の緑いっぱいの庭園が見事にマッチしており、非常に洗練された造りになっています。
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Parkroyal on Pickering

パークロイヤル オン ピッカリングは、シンガポール政府の「グリーンマーク認証制度」でプラチナ賞を受賞したホテルで、太陽光発電システムなどを採用しています。

コンセプトは「美しい庭園内のホテル」。建物全体に環境に優しい機能と技術をシームレスに融合させています。50種類の植物が植えられた15,000㎡(平方メートル)の緑豊かな熱帯都市高層庭園、再生可能エネルギーを生産する262枚の太陽光パネルはシンガポールの環境配慮の価値観を象徴しているかのようです。
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CapitaGreen

キャピタグリーンは、緑化されたオフィスビルで、環境に配慮した設計が特徴です。建物はプリツカー賞受賞者の伊東豊雄氏が設計しました。

屋上にある深紅の花びらのようなfunnel crown(ファネルクラウン)と、縦方向に緑が点在するガラスのファサードが象徴的なビルディングです。この2つの構造により、省エネ効果のあるグリーン機能が働いています。エネルギー削減のために、Low-Eガラスや高効率の冷却装置が随所に用いられています。
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風水的に縁起の良いデザインの建築

次に紹介するのは、シンガポールのシンボルとして扱われることも多いインターレースやマーライオン像。その建築・彫刻様式は実用面のみならず、実は風水とも密接に関連しています。

The Interlace

出典:The Interlace

インターレースは、ドイツ人建築家オーレ・シェーレン氏による設計で、積み木ジェンガ風のブロック型集合住宅です。形状と8つの庭園というのが風水的に縁起良いとされています。

一般的な形状をしたビルディングが六角形にブロックのように積み重ねられており、それぞれの中庭を囲んでいます。アパートブロックの重なり合う部分にコアシステムが配置されており、各コアごとに3~4戸のユニットがあるため、長い廊下が不要になっています。一見奇抜で複雑な造りに見えますが、住環境の快適さを考慮した素晴らしい建築デザインです。
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Merlion

言わずと知れたマーライオン―シンガポールの神話的なライオン、半魚のアイコンとして作られたシンガポールの象徴的なオブジェです。高層ビル群を背景に河口に向かって水を吐いている姿が印象的な方も多いでしょう。

マーライオン像自体は1970年代に彫刻家リム・ナン・セン氏によって彫られ、当時の首相リー・クアンユー氏によって公開されました。シンガポールの風水では東は「繁栄」、水は「金運」を表すとされているため、マーライオンは東を向いて水を吐き出しているのはこうした意味合いが込められていると言われています。

イギリス統治時代の歴史的建築 コロニアル様式

イギリス植民地時代からのコロニアル様式がまだ色濃く残っている建築物4つをご紹介します。その荘厳かつ壮麗な佇まいは、今日に至るまでのシンガポールの歴史を深く感じさせてくれます。

National Gallery Singapore

ナショナル ギャラリー シンガポールは、旧最高裁判所と市庁舎を改装した美術館で、歴史的な建物を活用しています。

正面から見て左側の旧最高裁判所のバルコニーデザインは、イタリアの彫刻家ルドルフォ・ノッリ氏が手がけたとされており、コリント式の柱など新古典主義の建築様式が見て取れます。玄関に並ぶ5枚のバスレリーフには、シンガポールの植民地時代の様子が描かれています。

右側の市庁舎は、左右対称のレイアウトで構成された4階建ての建物となっており、階段を上がると18本のコリント式の柱がそびえ立っています。市庁舎には19世紀から現代にいたるまでの重要な歴史的出来事が関連しており、立ち入ると歴史の深さを感じさせられます。
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Raffles Hotel

ラッフルズホテルは、イギリス統治時代のコロニアルスタイルを残す高級ホテルです。このクラシックなコロニアル様式が当時の面影のまま残されており、ビジネス街や官庁街のビル群と絶妙なコントラストを成しています。ラッフルズの名称は、近代シンガポール建国の父と呼ばれるスタンフォード・ラッフルズ卿にちなんで名づけられました。敷地の25パーセントが庭園で、緑豊かなトロピカルガーデンが随所に存在し、プール設備も用意されています。
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The Fullerton Hotel Singapore

フラトンホテル シンガポールは、旧中央郵便局を改装したホテルで、歴史的な雰囲気が魅力です。建物は1928年に建てられた新古典主義に基づいた造りで、ドーリア式の円柱をはじめとするクラシカルなパラディアン様式が残されています。第2次世界大戦後の英国からの独立運動の場として、また、国宝である「シンガポールストーン」が発見された場所として名誉ある歴史を残しており、その威風堂々とした外観が印象的です。
公式サイ

National Museum of Singapore

シンガポール国立博物館は、旧館と現代的な新館を融合させた独創的なデザインが特徴です。国内最古の博物館であり、その歴史は1887年にまで遡ります。2000年代に大規模な再開発プロジェクトが始まり、19世紀の植民地時代の棟とガラスと金属でできたモダンな棟が融合したことで現在の国立博物館が誕生しました。

対称的な正面の外観と窓上の装飾が特徴的なネオ・パラディアン様式で、建物の柱もドーリア式やイオニア式など新古典主義の特徴が取り入れられています。さまざまな装飾と工夫により、全体的に壮麗な外観が完成しています。
公式サイト

建築物の理解はビジネスに通ず

シンガポールは、近未来的で革新的な建築と歴史的建造物が共存する都市です。ビジネスマンにとって、シンガポールの建築はただの景観にとどまらず、都市の持続可能性や文化的背景を理解するための重要な要素です。この記事を通じて、シンガポールの魅力をさらに深く知り、ビジネスに役立てていただければ幸いです。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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