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【2024年】SDGsランキング ~シンガポールは65位・フィンランドが4年連続で1位~

持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた各国の取り組みが注目を集める中、2024年のSDGsランキングが発表されました。本記事では、シンガポールの順位と取り組みを中心に、世界の動向を分析します。

SDGsとは

SDGsはSustainable Development Goalsの頭文字をとったもので、「持続可能な開発目標」を意味しています。SDGsはこれまでの戦争やテロ、自然災害、技術の発展、環境の変化、社会変革、疾病といった人類の歴史を通じて、人権尊重や資源の重用に関する意識が高まったことから、この地球で暮らし続けられる「持続可能な世界」を示すナビとして公表された概念です。

2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、2030年までに達成すべき17の国際目標が記載されており、人権、社会経済、公衆衛生、ジェンダー、地球環境など、たくさんの課題に分類されています。これらの目標は、各国で貧困や飢餓の撲滅、感染症、気候変動対策まで、幅広い社会・経済・環境問題に取り組み、人類が世界で安定的に暮らしていける世界を構築しようというものです。

SDGsランキング

SDGsランキングは、各国のSDGs達成度を評価し、順位付けしたものです。2024年のランキングでは、北欧諸国が上位を占める結果となりました。

※最右のスコアはSDGsの17項目の達成率を示しています。

ランキングスコア
1位フィンランド86.35
2位スウェーデン85.70
3位デンマーク85.00
4位ドイツ83.45
5位フランス82.76
-18位日本79.87
-65位シンガポール71.41
出典:Sustainable Development Report 2024

1位 フィンランド

フィンランドは、86.4点で4年連続の1位を獲得しました。公的福祉制度の充実や環境保全への高い意識が評価されています。フィンランドでは、政府高官がSDGの実施に関するNGOの意見を積極的に聞き入れています。また、NGOは公式非公式問わず、多数のSDG専門グループやネットワークに席を置き、SDGsに関する国会の公聴会にも招待されています。

2位 スウェーデン

スウェーデンは85.7点で2位となりました。政府と国民が一体となってSDGsに取り組む姿勢が高く評価されています。国の行政大臣が国策としてSDGsを推し進めているほか、民間のSDGsに関するワーキンググループも目標達成のために精力的に活動しています。

3位 デンマーク

デンマークは85.0点で3位にランクインしました。食品ロス削減への取り組みなど、具体的な施策が注目されています。デンマークでは、全国的なネットワークを持つ市民社会組織(Civil Society Organizations-CSO)があり、SDGsに関するハイレベル政治フォーラム(High-Level Political Forum-HLPF)における自発的国家レビュー(Voluntary National Review-VNR)での報告に意見を述べるなどしつつ、政府と定期的に政策対話を行っています。

4位 ドイツ

ドイツは83.5点で4位となりました。自治体レベルでの取り組みが進んでおり、市民参加型のSDGs推進が特徴です。国だけではなく、都市や地方が教育・労働・人権・福祉・環境とSDGsの項目に満遍なく取り組んでいます。

5位 フランス

フランスは82.8点で5位に入りました。環境保護や社会包摂に関する政策が評価されています。この考えは、SDGsが大切にしている「誰一人取り残さない」という理念に沿っています。

18位 日本

日本は79.9点で18位となり、前年の21位から順位を上げました。SDGsの課題9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は達成したものの、「ジェンダー平等」や「気候変動対策」、「責任ある消費と生産」、「海の豊かさを守ろう」などで深刻な課題が残されています。

65位 シンガポール

シンガポールは71.4点で65位にランクインしました。シンガポールは、SDGsに関する課題4「質の高い教育をみんなに」と課題9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を達成しています。スピルオーバー指数は28.4となっており、他国への社会経済・環境的影響はそれほど高くありません。なお、この順位と指数は一見低く見えるかもしれませんが、シンガポールの特殊な状況を考慮する必要があります。

シンガポールのSDGs達成に向けた取り組みは、以下のような特徴があります:

グリーンプラン2030
シンガポール政府は、2050年までにネットゼロ排出を達成するための国家的な持続可能性運動「シンガポール・グリーンプラン2030」を推進しています。この計画には以下のような取り組みが挙げられます:

▪ 2030年までに約210kmのネイチャーウェイ(緑の回廊)と380km以上のパークコネクター(公園や自然保護区を結ぶ道)を完成
▪ OneMillionTrees運動の下、64万本以上の木を植樹
▪ 電気自動車(EV)充電ネットワークの拡充
▪ 「気候に優しい家庭プログラム」を強化し、HDB住宅世帯に、消費エネルギーや水の使用効率が良い家庭用電化製品への切り替えを促す

エネルギー転換
シンガポールは、エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの導入に注力しています:

▪ 大規模かつエネルギー集約型の建物を対象とした義務的エネルギー改善(Mandatory Energy Improvement-MEI)制度の導入
▪ エネルギー転換のためのインフラ投資を促進する未来エネルギー基金(Future Energy Fund)の設立
▪ 2026年からシンガポール発の航空便に持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel-SAF)の使用を義務付け
▪ S$5300万を低炭素エネルギー技術の研究プロジェクトに拠出

持続可能な食料供給
食料安全保障の強化に向けて、以下の取り組みを行っています:

▪ シンガポール養殖計画(Singapore Aquaculture Plan)を通じた養殖セクターの変革
▪ 地元産品の需給マッチングを行う業界主導のアグリゲーターを発掘
▪ 「Farm-To-Table認識プログラム」の拡大
▪ 食品安全・保障法(Food Safety and Security Bill)によって消費者の保護拡充と食料供給の回復力を促進

気候変動への適応
海面上昇などの気候変動リスクに対応するため、以下の施策を実施しています:

▪ 沿岸保護措置を支援する新しい法律と行動規範の提案
▪ シティ イーストコースト、ノース ウェストコースト、ジュロン島での詳細な沿岸調査の実施

グリーンガバメント
GreenGov.SGはシンガポール政府が推進するイニシアティブで、グリーンプラン2030の主要な要素の一つです。政府自身も持続可能性を重視し、以下の取り組みを行っています:

▪ 会議・インセンティブ旅行・国際会議・展示会(MICE)の各種イベントにおける持続可能性評価の拡大
▪ 将来のGreenGov.SG報告書に廃棄物データを含める。
→GreenGov.SGの公式サイトはちら

食料自給率のアップ

シンガポールは食料の90%を輸入に頼っており、食料自給率が低いといわれています。そこで、政府は2030年までに食料自給率を30%に引き上げる目標「30 by 30」を掲げました。農業用地は国土の1%未満ですが、それを補う形でフードテックやテクノロジーを活用しようと、以下のような試みが進んでいます。

▪ 「垂直農園」スカイグリーンが土地、水、エネルギー資源を最小限に抑えて、都市国家でも最適な農業ソリューションを持続的に提供
▪ シンガポール食品庁(Singapore Food Agency-SFA)が、テック活用で生産性向上を図る農家に対し、S$6,300万にもおよぶ補助金を導入

これらの取り組みにもかかわらず、シンガポールのSDGsランキングが相対的に低い理由としては、以下の点が考えられます:

●地理的制約:
小国であるため、再生可能エネルギーの導入のほか、水資源や食料自給率の向上に限界がある
●経済構造:
国際金融・貿易ハブとしての役割が、都市化や広範な産業活動と密接に関係しているため、環境負荷が高い一部のSDGs目標達成を難しくしている
●スピルオーバー効果:
他国への負の影響(スピルオーバー)が大きいと評価されている(スピルオーバースコア28.49)

しかし、シンガポールは独自の状況に応じた持続可能な発展を追求しており、その取り組みは他の都市国家や小国にとって参考になる可能性があります。

シンガポールのSDGs達成に向けた今後の展望

シンガポールは、SDGsランキングにおける順位向上よりも、自国の状況に適した持続可能な発展を目指しています。今後の展望として以下の点が挙げられます:

●技術革新の活用:
スマートシティ技術やクリーンテクノロジーの開発・導入を通じて、環境負荷の低減と経済成長の両立を図る
●国際協力の強化:
他国との知識・技術の共有を通じて、グローバルなSDGs達成に貢献する
●教育・人材育成:
持続可能性に関する教育を強化し、次世代のリーダーを育成する
●民間セクターの参画促進:
企業のSDGs達成への取り組みを支援・奨励する政策の拡充
●データ駆動型アプローチ:
SDGs達成度の測定・評価を精緻化し、より効果的な政策立案につなげる
●労働環境と働きやすさの重視:
多国籍文化のなかで多くの人の活躍の場を増やすため、シンガポール企業ではSDGsに関する課題5「ジェンダー平等を実現」と課題10「人々と国家の間の不平等をなくす」ことが重視される。

シンガポールのビジネスパーソンにとって、これらの取り組みは新たなビジネスチャンスを生み出す可能性があります。持続可能性を考慮したビジネスモデルの構築や、SDGs関連の技術・サービスの開発が今後ますます重要になるでしょう。

シンガポールのSDGs対策から新たな機会創出を

シンガポールでは、政府、企業、個人が三位一体となり、SDGs達成に向けて独自のさまざまな課題に取り組んでいます。ランキングの順位だけでなく、具体的な施策と長期的なビジョンに注目することが重要です。シンガポールの経験は、持続可能な発展を目指す他の国々、特に資源制約のある小国にとって貴重な参考事例となるでしょう。ビジネスリーダーは、これらの動向を注視し、持続可能性を軸とした新たなビジネス機会の創出に取り組むことが求められています。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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