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第216回[インド×GDP]4~6月期は7.8%成長、投資と輸出がけん引。高成長の中身を読む

【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】
第216回[インド×GDP]4~6月期は7.8%成長、投資と輸出がけん引。高成長の中身を読む

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

インド政府が8月31日に発表した2026/27年度第1四半期(2026年4~6月期)の実質GDP(国内総生産)は、前年同期比7.8%増となった。インドの会計年度は4月から翌年3月。前期の8.6%からは減速したが、市場予想の7.1%、インド準備銀行(RBI)予想の7.0%を上回った。

7.8%は、近年の高成長レンジを維持した。2023/24年度以降、四半期の成長率はおおむね6%台後半から8%台で推移してきた。その高成長の中身をみてみよう。

第一は投資である。設備投資や住宅、インフラ建設などを含む総固定資本形成は11.9%増え、前年同期の5.8%増から大きく加速した。GDP成長率への寄与度は約4ポイントで成長のけん引役だったことがわかる。名目GDPに占める総固定資本形成の比率も前年同期の31.4%から34.3%へと上昇した。

固定資本形成は、機械や建物、インフラなど将来にわたって使われる資産への支出である。足元の需要を押し上げるだけでなく、工場や物流網、生産設備などを通じて将来の供給力にもつながる。その伸びが2桁となった点は、今回の成長の持続性を見るうえで重要だ。

生産側でも製造業が9.2%増、建設業が7.7%増と堅調だった。ただし、総固定資本形成には企業の機械・設備だけでなく、住宅やインフラなどへの投資も含まれる。2024/25年度の年次統計では、総固定資本形成の4割強を家計部門、約3割を民間非金融法人が占めており、企業の設備投資だけを表す指標ではない。投資主体別の内訳は年次統計では公表されるが、四半期GDPでは示されない。今回確認できるのは、固定資産への投資全体が大きく伸び、成長を強く押し上げたことだ。

第二は輸出である。実質輸出は12.0%増と、前年同期の6.0%増から加速した。輸入は1.1%減で純輸出はGDP成長率を約3ポイント押し上げた。

前年同期の輸出の伸びが低かった反動はあるが、力強い内容だった。貿易統計では4~6月の財輸出が前年同期比15.9%増え、石油を除く輸出も12.4%増。4月には電子機器、5~6月にはエンジニアリング製品が大きく伸びた。価格変動の大きい石油だけではなく、製造業系の品目に伸びが広がったことが今回の特徴だ。

民間消費も7.1%増と堅調。一方、需要側推計では、消費や投資、輸出入などを積み上げた値とGDP全体とのずれを調整する「統計上の不突合」が、成長率を約3.2ポイント押し下げた。速報段階の推計であり、この数字は今後の統計改定で変わる可能性があることは注意しておきたい。

7.8%という数字そのものより、今回は消費に加えて投資と輸出がそろって成長を支えたことに注目したい。とりわけ投資と輸出の伸びが次の四半期にも続くか。この二つの動きを追うことが、インド経済の高成長の持続力を見る手掛かりになる。

 

*2026年9月2日脱稿


プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

Kroll日本支社
シニア・バイス・プレジデント

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。アジア新興国の政治経済、地政学、サイバーセキュリティ、アジア財閥、イスラム経済、スタートアップなどが主な関心事。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。

2023年にEYストラテジー・アンド・コンサルティングのインテリジェンスユニット・シニアマネージャーとしてビジネスインテリジェンスの強化を手がけた後、2024年4月よりスタートアップのジョーシス株式会社でジョーシスサイバー地経学研究所を立ち上げ、地経学とサイバー空間をテーマに情報発信。2025年11月よりKrollに復帰し、アジア新興国を中心とした企業インテリジェンス活動に従事。

共著書に「マレーシアを知るための58章」(2023年、明石書店)「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア−政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア−イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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