シンガポールで新卒人材を採用するメリット~シンガポールの初任給推移もご紹介~
最近、「なかなか募集ポジションに合った理想的な経験者人材が見つからない」「せっかくオファーを出しても断られてしまう」といった声が良く聞かれます。その背景に大きく起因するのが昨今の売り手市場です。
先日、シンガポール人材開発省(MOM)が発表した2023年第1四半期シンガポール労働市場調査結果(Labor Market Report )によると、第一四半期における求人倍率は2.28倍でした。
これは求職者一人に対して平均2社以上からオファーがあるという状況で、求職者側がより良い待遇や条件を優先して企業を選択することができるという状態です。
実際に今後もこの状況がしばらく続くことが予想されており、さらには今年9月から適用されるEPビザ発給に際する最低給与の引き上げ、およびCOMPASSによる外国人駐在員の引き締めは、人材採用における新たな向かい風になるでしょう。
そのような中、リーラコーエンシンガポールではジョブ型雇用ではなくインハウス型の雇用を前提としたポテンシャル人材として、新卒人材の採用もおすすめしております。
シンガポールの大学教育と新卒雇用のメリット
新卒人材の雇用を検討するにあたり、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。まず、シンガポールの新卒学生の強みの1つに、彼らが受けてきた大学教育が挙げられます。
シンガポールの大学教育は、その後の採用で重視されるソフト・ハードスキルの育成を目的に、ただ専攻科目だけでなくさまざまな角度からのスキル習得に注力しているという特徴があります。
例えば、クリティカル・シンキング、課題解決力や革新的な発想を促すトレーニングなどです。これらは卒業のために必ず必要となる評価項目となっており、大学の各カリキュラムに取り入れられています。
このようなトレーニングを受けて卒業し、さまざまなことを吸収する準備ができている学生が、企業への新たな風をもたらしてくれることはもちろん、経験を積んだ既存社員との新しいシナジーも十分に期待できるでしょう。
それだけではありません。社会に初めて飛び込む学生はさまざまな可能性を秘めており、履歴書や職務範囲にとどまらず活躍できるということも期待できます。
新型コロナウイルスのパンデミックを経て、リスキリングにより新たなスキルを習得しながら働き続けるといったサステナビリティへの意識・関心が以前より増加傾向にあります。
このような背景から、新しいことを学ぶことへのハードルは以前と比べて下がっており、特に年齢が若くなればなるほど企業の求めるスキルを貪欲に習得しようというマインドセットを持っていたり、またはすでに習得したスキルを活かして即戦力となったりし得るでしょう。
そういった人材を長く企業内に留め、じっくりと時間をかけて育てていく人材投資も今後は重要になっていくでしょう。
シンガポールの初任給推移
それでは、シンガポールの新卒学生を採用する場合どのくらいの給与が目安となるでしょうか。過去7年間における業界別初任給(フルタイム)の推移を見てみましょう。
本データはシンガポールにおけるローカル6大学(シンガポール国立大学:NUS、南洋工科大学:NTU、シンガポールマネジメント大学:SMU、シンガポール工科デザイン大学:SUTD、シンガポール工科大学:SIT、シンガポール社会科学大学:SUSS)を卒業した新卒生を対象とした毎年発行されるGES調査データ、およびシンガポール教育省(MOE)が行った調査に基づいています。
Year of graduation | ||||||||
Types of degree | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 7 Years difference |
Health Sciences | S$3,375 | S$3,450 | S$3,489 | S$3,500 | S$3,500 | S$3,550 | S$3,700 | S$325 |
Built Environment | S$3,300 | S$3,200 | S$3,400 | S$3,500 | S$3,500 | S$3,600 | S$3,750 | S$450 |
Business | S$3,200 | S$3,200 | S$3,450 | S$3,500 | S$3,500 | S$3,550 | S$4,100 | S$900 |
Humanities & Social Sciences | S$3,300 | S$3,300 | S$3,400 | S$3,500 | S$3,500 | S$3,700 | S$3,800 | S$500 |
Sciences | S$3,200 | S$3,250 | S$3,390 | S$3,500 | S$3,500 | S$3,700 | S$3,900 | S$700 |
Engineering | S$3,400 | S$3,500 | S$3,600 | S$3,750 | S$3,900 | S$3,950 | S$4,600 | S$1,200 |
Arts, Design & Media | S$2,800 | S$2,950 | S$3,000 | S$3,200 | S$3,300 | S$3,500 | S$3,500 | S$700 |
Information & Digital Technologies | S$3,800 | S$4,000 | S$4,100 | S$4,400 | S$4,760 | S$4,950 | S$5,625 | S$1,825 |
Average | S$3,300 | S$3,350 | S$3,500 | S$3,600 | S$3,700 | S$3,800 | S$4,200 | S$900 |
ご存知の通り全体的に増額傾向にあり、過去7年間ではいずれの分野においても増額が見られ、平均でも$900の増額でした。最も大きな増額が見られたのは情報、デジタルテクノロジーで、この7年間でS$1,825の幅がありました。
次いでエンジニアも7年間でS$1,200の増額が見られ、特に前年対比でも大きな増額がありました。初任給の変化を見ることで、その時代に応じた必要なスキルに対する需要の変化を汲み取ることができると言えます。
大学別では、SMUの新卒者は昨年に続きトップの金額で、平均$4,500という結果でした。続いてNUSの新卒者が平均S$4,300でした。さらには、法学部の学生の初任給については、6大学すべてにおいて平均S$6,375となり、最高額となります。
これに続き、情報およびテクノロジーの分野を専攻していた新卒者の平均月収はS$5,625でした。日本の厚生労働省のデータによると、令和元年(2019年)の大卒初任給は21万円で、シンガポールと比べるとその差は約2倍です。シンガポールの物価上昇に伴う賃金高騰の影響は、新卒者においても例外とは言えないようです。
また、シンガポールではITおよびデジタルインフラへの継続的な投資が行われています。企業が独自でYouTubeやSNSツールを通じたデジタルプレゼンスを持つ必要が出てきており、関連する学科の初任給は今後数年でさらに増額されることが見込まれています。
魅力的な人材へアプローチを行う3つの方法
それでは実際に、シンガポールで学生へアプローチを行う際の方法について、以下3点をご紹介いたします。
1.直接大学へアプローチを行う
シンガポールでは、大学によって企業と学生への相互的なキャリア支援を行っている場合があります。例えば企業と大学で連携し、学生と個別にやり取りを行う特設サイトの運営などが行われているようです。
また、学生が自ら自身の履歴書をこのサイトへアップロードし、企業側がまとめて確認を行うことも出来ます。効率よくたくさんの履歴書に目を通すことができ、自社のニーズに合いそうな人材をピックアップすることが可能です。
2.キャリアフェアに出展する
シンガポールの大学では、1年に一度か二度、企業と学生に向けたキャリアフェアイベントを実施しています。ここでは実際の企業情報をプレゼンしたり、求人について学生と対面しながら共有したりすることができ、候補者と接点を持つとても良いチャンスとなります。実際に面接以外の場で会って話すことによって、履歴書以外のポテンシャルを確認することもできます。
3.候補者となる学生とはなるべく多くの接点を持つ
新卒採用においては、経験者採用とは異なりこれまでの経歴よりも将来の可能性を見極める必要があります。そのため、なるべく多くのコミュニケーションを取り、自社のニーズと合っているかを判断することが重要です。
面接前の段階として、上記1-2以外にも、さらにカジュアルな面談を行うこともおすすめいたします。選考の前段階として、自身について話してもらい、ハードスキル以外の個々の価値観や熱意などを聞き、今後企業へ長期的にどう貢献してくれそうかのイメージを持っておくと、その後の選考もスムーズに行うことができるでしょう。
一方で、求職者優位の現在の状況では特に、学生も企業を選ぶ立場にあります。これまでご紹介したことを実施したうえで、さらに新卒の学生の目に止まりやすく、魅力のある企業に映るための整備を行う必要もあります。
例えば給与や福利厚生の見直しなど、長期的な変革の視野が必要なものもあれば、採用募集のウェブページや求人広告、面接の工夫なども挙げられます。
最後に
今回は新卒採用のメリットおよび初任給の推移についてご紹介いたしました。昨今の物価の上昇あるいはそれ以上に新卒生の初任給も上がっており、当然既卒生や中途採用の給与も以前とは比べものにならないほど上昇傾向にあります。
今年9月より施行されるCOMPASSをはじめとした外国人駐在員の就労ビザ要件の厳格化は周知のとおりですが、ローカル人材を採用する際にも現体制や待遇の見直しを行い、改めて企業の魅力付けを行う必要があるでしょう。
状況が大きく変化し続ける中での採用手法の1つとして、リーラコーエンシンガポールでは併せて新卒の採用ご検討もおすすめしています。ご不明な点やお困りごとがあれば、リーラコーエンシンガポールまでお気軽にお問い合わせくださいませ。
※本記事はリーラコーエン様よりご寄稿いただいたものです。
リーラコーエン シンガポールについて
Reeracoenは、シンガポールを筆頭にアジア7カ国と地域12拠点で人材紹介サービスを展開をする日系の人材サービス会社です。
シンガポールでビジネスを展開している企業への人材紹介、シンガポールへの転職を考えている方への支援を行っています。専門スキルを持ったローカル人材、ローカル日本語スピーカー、現地採用の日本人の紹介に強みを持っています。
また、ビザ代行などのビジネス支援やエグゼクティブサーチ・人事コンサルティングを手掛け、経験豊富なコンサルタントが二人三脚でサポートを行っています。
直近では、経営やマーケティング、人事など各分野、業界における専門性の高い情報を求める企業に対し最適な人材を紹介し、直接相談ができる場を設けるエキスパートソリューションサービス「Brainsight(ブレインサイト)」を開始。ほかにも、韓国企業様と韓国語スピーカーの方とのマッチングを行う専門チームが発足し、ますますサービスの幅を広げています。
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