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シンガポール企業の有給と休暇を徹底解説〜法定内休暇と法定外休暇全14種!~

シンガポールで働く、あるいは現地進出を目指す日本人ビジネスマンにとって、現地の有給や休暇制度、働き方の特徴を正しく理解することは、キャリア形成や企業経営において非常に重要です。シンガポールでは、有給休暇や病気休暇などの法定休暇に加え、企業独自の福利厚生や柔軟な働き方が広がっています。

本記事では、日本との違いにも触れながら、最新の休暇制度や働き方のポイントを詳しく解説します。

シンガポールの休暇事情

シンガポールの労働環境は多国籍でダイナミックですが、休暇制度は法令により明確に定められています。特に有給休暇や病気休暇は、従業員の健康とワークライフバランスを重視する現地企業の姿勢を反映しています。残業や休みの取り方も日本とは異なる点が多く、現地で働く際には制度の理解が不可欠です。

現行の休暇制度では、従業員が毎年取得できる法定休暇のほか、企業が福利厚生として付与する法定外休暇が存在します。特別休暇なども含めて全て合わせると18種類もの休暇が確認できます。

有給(Annual leave)

シンガポールでは、雇用法に基づき、一定の条件の下で勤務した場合に年次有給休暇(Annual leave)を取得することができます。年次有給休暇 については、試用期間中か否かを問わず、3か月以上勤務した従業員に年間7日間付与することが義務付けられています。

以前は、雇用法第4章の対象者のみに適用されていたのですが、2018年の同法改正により、全従業員が対象者となりました。

資格と権利

シンガポールの有給休暇(Annual Leave)は、雇用主のもとで3か月以上勤務した従業員に付与されます。初年度は最低7日間から始まり、以降1年ごとに1日ずつ増加し、8年目以降は最大14日間まで増えます。

有給休暇は、雇用契約に基づき、未消化分の繰越や現金化(encashment)が認められる場合もあります。また、祝日が休日と重なった場合は代休(Off-in-lieu)や追加給与が支給されます。

就業日数に応じて取得できる有給休暇日数は以下の通りです:

就業日数取得できる有給休暇日数
1年目7日
2年目8日
3年目9日
4年目10日
5年目11日
6年目12日
7年目13日
8年目以降14日

なお、3か月以上勤務した場合、取得できる有給休暇日数は以下の計算式で按分されます。
(勤続月数÷12か月)×年次休暇日数

例えば、1年目で勤続6か月の場合の付与日数は
(6か月÷12か月)×7日=3.5日

小数点以下切り捨ての場合は3日、繰り上げの場合は4日という扱いになります。

病気休暇(Sick leave)

シンガポールの病気休暇(Sick Leave)は、従業員の健康維持を目的に法定で定められています。雇用主の元で3か月以上勤務した従業員は、病気が発覚してから48時間以内に雇用主へその旨を通知することで、給与を維持したまま休暇を取得できます。その後職場への復帰の際に医師の診断書(Medical Certificate-MC)を提出する形になります。

病気休暇には「病気休暇」と「入院休暇」の2種類があり、それぞれで条件が異なりますので注意しましょう。基本的に対象となるのは就労不能との認証が出された場合のみで、美容整形手術などは対象外となります。

病気休暇

病気休暇は通院や軽度の体調不良時に取得でき、6か月勤務を継続することで最大14日間/年が付与されます。3〜6か月未満の勤務者には、以下のように勤務期間に応じて日数が按分されます。

就業日数(月)取得できる病気休暇日数
3か月以上5日
4か月以上8日
5か月以上11日
6か月以上14日

入院休暇

入院休暇は、医師が従業員に入院での治療が必要と認めた場合に取得でき、最大60日間/年(病気休暇の日数も含む)まで認められます。

入院または日帰り手術を受ける場合、妊娠による合併症などで安静にする必要がある場合、退院後にも長期にわたる治療が必要な場合に適用されます。各企業からの、新型コロナウイルス(COVID-19)による隔離措置命令に対してもこの休暇制度が適用されています。

年に最大で60日まで認められていますが、3〜6か月未満の勤務者には、以下のように勤務期間に応じて日数が按分されます。

就業日数(月)取得できる入院休暇日数
3か月以上15日
4か月以上30日
5か月以上45日
6か月以上60日

なお、入院休暇日数には病気休暇日数も含まれた形になります。そのため、年間で14日間の病気休暇を消化してしまっている場合、取得できる入院休暇日数は差し引き46日となります。

育児休暇(Childcare leave)

シンガポールでは、子育て支援の一環として育児休暇(Childcare Leave)が法定化されています。子どもの数に関わらず、子どもが7歳未満のシンガポール国籍の場合、雇用主のもとで3か月以上勤務していれば年間6日間の有給育児休暇が取得可能です。

自営業者の場合は、継続して3か月以上就業し、育児休業期間中に収入が途絶えるケースに適用されます。6日のうち、育児休暇は、最初の3日間が雇用主負担、残りの3日間が政府負担となります。

育児休暇の日数は、子どもが生まれて0歳から6歳までの期間を想定しているため、年間6日間として合計で42日間(初めの年を含めて7年間)までに制限されています。

例えば2025年に子どもが生まれた場合、最初の6日間は2025年から取得でき、最後に取得できる年は2031年となります。なお、育児休暇は原則として暦年 (1月1日から12月31日)に基づき、基本的にその年までに使い切る必要があります。

休暇申請の手順についてはシンガポール社会・家庭開発省(MSF)の公式WEBサイトを参照してください。

年間6日間の育児休暇を取得する権利がある場合、育児休暇日数は勤務期間に応じて段階的に付与されます。

就業日数(月)育児休業取得可能日数
0〜2か月対象外
3〜4か月2日
5〜6か月3日
7〜8か月4日
9〜10か月5日
11〜12か月6日

父親の育児休暇

父親の方でも積極的に育児休暇(Paternity Leave)を取得する権利が確立されています。条件を満たせば、最大4週間の育児休暇取得が可能です。

父親の育児休暇においては、通常の育休の条件に加え、「妊娠から出産までの間、または子どもの出生日を含む日から12か月以内に、子どもの母親と法律上の婚姻関係にある、またはあった」ことも条件になります。

または、本採用に至る前に3カ月間継続して同じ雇用主の基で働いていた場合や、養子縁組の正式な意思表示日前に3か月間以上継続して自営業に従事していた場合も育児休暇の対象となります。

法改正により、子どもの生年月日や養子縁組の正式な意思表示日が2025年4月1日前か、それ以降になる場合で取得の権利が以下のように変更になりました。

2025年4月1日前:
2週間の育児休暇を取得できる(雇用主の同意を得ればさらに2週間の追加取得が可能)

2025年4月1日前:
最初から4週間の育児休暇を取得できる

詳細はMOMの公式WEBサイトを参照してください。

Shared parental leave

Shared parental leave(SPL)は、母親が受け取る予定の育児休暇の最大4週間分を、父親(または配偶者)に譲渡することができる制度です。

2025年4月1日からは、母親の産休のうち最大6週間(2026年以降は10週間)を父親と分割して取得できるようになりました。子どもの生年月日、出産予定日、または正式な養子縁組の意思表示日が2025 年4月1日から2026年3月31日の間であれば、両親で6週間のSPL を共有することができます。

日本の育休制度では「職場で理解を得られにくい」、「収入が減ってしまう」などの理由から男性の育休が取りにくくなっており、男女の育休取得数でかなりの差が出ていますが、シンガポールのSPLでは両親が柔軟に育児休暇を分担できる点が特徴です。

子どもが外国籍の場合

子どもがシンガポール以外の国籍の場合でも、その親は雇用法に基づき、年間2日間の育児休暇を取得することができます。子どもがシンガポール国籍を取得するには、両親のどちらかがシンガポール人でなければならないため、もしシンガポールで日本人同士の間で子どもが生まれた場合には、この子どもが外国籍の場合のルールが適用されます。

産休(Maternity leave)

シンガポールの産休(Maternity Leave)は、出産予定日以前4週間+出産後12週間の計16週間が法定で認められています。第二子まではうち8週間は雇用主が、残り8週間は政府が給与を負担し、第三子からは16週間すべて政府が負担します。対象は母親のみですが、条件は通常の育児休暇と同じで、条件を満たせば、全期間が有給となります。

日本の産休(産前6週・産後8週)と比較すると、期間や給与補償の仕組みに違いがあります。雇用主への通知は、出産の4週間前か、出産後できるだけ早く行う必要があります。

子どもが外国籍の場合

子どもがシンガポール国民でない場合や、外国人や永住者の立場で働いていても、資格基準を満たしていれば雇用法の対象となり、国籍関係なく12週間の産休を取得する権利があります。

シンガポールの特別な休暇

シンガポールには、法定休暇以外にも多様な特別休暇が存在します。これらは企業や業界ごとに運用が異なります。

National Service leave

徴兵法第23条では、徴兵制度(National Service-NS)に従事する従業員には、訓練や招集期間中の有給休暇が付与されます。これはシンガポール独自の制度です。また、徴兵法第21条では、フルタイムの従業員が会社で 少なくとも6か月間働いた場合、雇用主は従業員が訓練を完了したら必ず復職させるよう規定されています。

Volunteer leave

シンガポールでは、2016年1月1日以降、公共サービス職員のボランティア活動を支援するためにボランティア休暇が制度化されました。公務員は慈善団体とのボランティア活動を積極的に行うために、年間1日のボランティア休暇を取得することができます。

Family Care leave

一部の企業では、家族の看護や介護、家族行事のために取得できるFamily Care leaveという休暇制度があります。子どもがいない夫婦や親の介護など、家族の多様なニーズに対応しています。

Block Leave

金融などの特定業界では、一定期間の連続休暇Block Leaveが義務付けられています。これはシンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore-MAS)の管理体制にも規定されており、業務の透明性やリスク管理の観点から導入されています。主に不正の防止や業務の透明性確保を目的としており、最低5営業日以上の連続取得が一般的です。

シンガポールの企業の法定外休暇

法定外休暇は、企業ごとに独自に定められる福利厚生です。日数や取得条件は会社規定によります。

Compassionate Leave

親族の不幸時に取得できる休暇で、2〜5日程度が一般的です。親族であることの確認と承認手続きが必要になります。

Sabbatical leave

勤続年数5年以上の専門職向けのリフレッシュ休暇。ソーシャルワーカーや理学療法士、言語聴覚士、心理学者、カウンセラーなどが対象で、10週間の有給休暇を取得できます。

Marriage leave

結婚時に取得できる有給休暇で、取得できる日数は最大3日間とされています。企業によっては従業員の特別なイベントである結婚を祝福する意味を込めて付与されることもあります。

Study/Exam leave

資格取得や試験受験のための休暇。自己啓発を支援する企業文化の一環です。期間は数日から数週間に及ぶ場合があります。

Birthday leave

誕生日に取得できる休暇で、1日の有給休暇が付与されます。シンガポール人は誕生日を大切にするため、誕生日の前後に合わせてくれる企業も多く存在します。

Off-in-lieu

祝日や休日出勤時の代休制度。法定休暇と合わせて柔軟な働き方を支えています。

ちなみに、2025年5月3日に実施予定のシンガポール総選挙では、シンガポール国民は投票参加のために有給の祝日を取得できます。当日が非番の場合にはその分の代休を取得することもできます。

シンガポールの休暇制度を通じて柔軟な働き方の実現を

シンガポールの有給・休暇制度は、従業員の多様なライフスタイルや働き方に対応するため、年々進化しています。法定休暇の充実に加え、企業独自の福利厚生も拡大傾向にあり、ワークライフバランスの実現が重視されています。現地で働く、または進出を検討するビジネスマンは、最新の法改正や企業文化を理解し、自身や組織の働き方改革に活かすことが求められるでしょう。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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