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-第7回-  2024年のシンガポール労働法の改正点について
(1)児童発達共済法(Child Development Co-Savings Act)による休暇についての改正

【~連載~One Asia Lawyers Groupのシンガポール法律コラム】
-第7回-  2024年のシンガポール労働法の改正点について
(1)児童発達共済法(Child Development Co-Savings Act)による休暇についての改正

みなさん、こんにちはOne Asia Lawyers Group(Focus Law Asia LLC)です。今号では、2024年シンガポールにおける労働法の改正点についてご紹介します。

2024年のシンガポール労働法制の改正点としては主に、(1)2024年1月1日に既に施行されている児童発達共済法(Child Development Co-Savings Act)による休暇についての改正と(2)2024年後半に施行が予定されている職場公正化法(Workplace Fairness Legislation)の2点です。今回から3回に分けて、上記(1)および(2)の改正点についてご説明します。

(1)児童発達共済法(Child Development Co-Savings Act)による休暇についての改正

2023年9月19日、シンガポール国会は、2001年児童発達共済法(Child Development Co-Savings Act 2001 of Singapore)を改正する2023年児童発達共済(改正)法(Child Development Co-Savings (Amendment) Act 2023)を可決しました。児童発達共済(改正)法による休暇についての改正内容は具体的に、①無給・乳児介護休暇(Unpaid Infant Care Leave)の日数の増加、②政府支給・父親育児休暇(Government-Paid Paternity Leave)の日数の増加となります。この改正は2024年1月1日から既に法的に施行されています。

無給・乳児介護休暇の日数の増加

この改正によって、以前は2歳未満のシンガポール国籍の子供を持つ無給・乳児介護休暇は1年に6日であったものが、12日に増加することとなります。詳細は以下の表の通りとなります。

 2024年1月1日改正以前2024年1月1日改正後
資格・子供がシンガポール国籍であること
・子供が2歳未満であること(法律上の養子や連れ子も含む)
・雇用主に少なくとも勤続3ヶ月以上であること
権利内容年間6日の無休乳児休暇が付与される(子供の数によらず、シンガポール国籍を持つ子供に対し合計最大12日まで)年間12の無休乳児休暇が付与される(子供の数によらず、シンガポール国籍を持つ子供に対し合計最大24日まで) 

2歳未満のシンガポール国籍の子供がいる場合、法律上、それぞれの親が毎年6日の有給乳児休暇(Paid Infant Care Leave)を取得する権利を有しています。改正前は、それに加えてそれぞれの親が毎年6日の無給乳児休暇(Unpaid Infant Care Leave)を取得することができました。改正後は、それぞれの親が毎年12日の無給乳児休暇を取得することができるようになります。

政府支給・父親育児休暇(Government-Paid Paternity Leave)の日数の増加

2024年1月1日以降に生まれたシンガポール国籍の子を持つ働く父親に対する政府支給の父親育児休暇が2週間から4週間に増加されました。政府支給の意味は、会社が労働者に父親育児休暇を与えるとその期間の給料について会社に対して政府の支援金が出るという意味となります。詳細は以下の表の通りとなります。

 2024年1月1日改正以前2024年1月1日改正後
申請資格生物学的父親の場合・子供がシンガポール国籍であること
・妊娠から出産まで子供の母親と合法的に婚姻している、または婚姻していたこと
・被雇用者の場合:子供の出生前に、自身が雇用主に少なくとも勤続3か月以上であること
・自営業の場合:子供の出生前に少なくとも3ヶ月継続して事業を行い、育児休暇中に収入が途絶えたこと
養父の場合・子供がシンガポール国籍であること。
・被雇用者の場合:養子縁組の正式な意思表示前に、自身が雇用主に少なくとも勤続3ヶ月以上であること
・自営業の場合:養子縁組の正式な意思表示前に少なくとも3ヶ月継続して事業を行い、育児休暇中に収入が途絶えたこと
受給資格2024年1月1日以前に生まれたシンガポール国籍の子供には、2週間の政府支給・父親育児休暇が付与される2024年1月1日以降に生まれたシンガポール国籍の子供には、4週間の政府支給・父親育児休暇が付与される

改正によって政府支給・父親育児休暇が2週間から4週間に増加される意味ですが、(i)会社と労働者の間に特別な合意がない場合は、あくまでも16週間のうちに連続した2週間の政府支給・父親育児休暇のみとなります。今回の改正は、あくまでも会社と労働者の間で別途の合意がなされた場合について、上記(i)の2週間に加えて、(ii)追加で12か月の間に2週間の連続した政府支給・父親育児休暇を与えることができるという意味となります。

次回は(2)2024年後半に施行が予定されている職場公正化法(Workplace Fairness Legislation)の内容についてご説明いたします。


筆者:栗田哲郎(シンガポール法(Foreign Practitioner Examinations)・日本法・アメリカNY州法弁護士)

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One Asia Lawyers Group

One Asia Lawyers Groupは、アジア全域に展開する日本のクライアントにシームレスで包括的なリーガルアドバイスを提供するために設立された、独立した法律事務所のネットワークです。One Asia Lawyers Groupは、日本・ASEAN・南アジア・オセアニア各国にメンバーファームを有し、各国の法律のスペシャリストで構成され、これら各地域に根差したプラクティカルで、シームレスなリーガルサービスを提供しております。 この記事に関するお問い合わせは、ホームページまたは info@oneasia.legal までお願いします。

One Asia Lawyersグループ拠点・メンバーファーム 24拠点(2023年8月時点)
・ASEAN(シンガポール、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー)
・南アジア(インド、バングラデシュ、ネパール、パキスタン)
・オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)
・日本国内(東京、大阪、福岡、京都)
・中東(アラブ首長国連邦(UAE/ドバイ・アブダビ・アジュマン))
・その他(ロンドン、深圳(駐在員事務所))

・メンバー数(2023年8月時点)
全拠点:約400名(内日本法弁護士約40名)


栗田哲郎 Tetsuo Kurita

One Asia Lawyers Group / 弁護士法人 One Asia
代表弁護士(シンガポール法(FPE)・日本法・アメリカNY法)

tetsuo.kurita@oneasia.legal
+65 8183 5114

2004年より日本の大手法律事務所(森・濱田松本法律事務所)に勤務後、スイス・アメリカへの留学を経て、シンガポールの大手法律事務所(Rajah & Tann)にパートナー弁護士として勤務。その後、国際法律事務所(ベーカーマッケンジー法律事務所)においてアジアフォーカスチームのヘッドを務め、日本企業のアジア進出・M&A・紛争解決に従事する。

その後、2016年7月One Asia Lawyers Groupを創設(シンガポールのメンバーファームはFocus Law Asia LLC)し、シンガポールを中心にアジア全般のクロスボーダー法務(クロスボーダーM&A、国際商事仲裁等の紛争解決、国際労働法等)のアドバイスを提供している。

2009年よりシンガポールに拠点を移し、2014年日本法弁護士としては初めてシンガポール司法試験(Foreign Practitioner Certificate)に合格、日本法・アメリカNY州法に加えて、シンガポール法のアドバイスも提供している。


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