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-第3回- シンガポールの弁護士制度と日本の弁護士制度の違いについて

【~連載~One Asia Lawyers Groupのシンガポール法律コラム】
-第3回- シンガポールの弁護士制度と日本の弁護士制度の違いについて

みなさん、こんにちは、One Asia Lawyers Group(Focus Law Asia LLC)です。今回はシンガポールと日本の弁護士制度の違いについて紹介します。

2022年における登録弁護士数は、シンガポール弁護士会によると6,273人とされており、2018年と比べると約1000人増加しています。これはシンガポールにおける人口の約1.1パーセントもの人数であり、日本の約31倍となっています(日本の登録弁護士数は44,101名であり、人口に占める弁護士の割合は0.035パーセント)。

シンガポールにおいては弁護士になるための制度は、日本と大きく異なっています。日本では、予備試験に合格、もしくは法科大学院を卒業した後、司法試験に合格した上でおよそ1年間の司法修習を完了すれば、弁護士資格を得ることができます。そのため、予備試験の場合は早ければ3年、通常の場合はロースクール3年+司法修習1年の合計4年ほどで弁護士になることが可能です。なお、2022年の予備試験の合格率は3.6%、ロースクールの場合の合格率は37.7%でした。

他方、シンガポールで弁護士になるための道のりは日本よりも長いと言われています。前述した通り、日本では、予備試験さえ合格していれば、大学を卒業することなく司法試験を受験することができますが、シンガポールにおいては、指定大学である”National University of Singapore(シンガポール国立大学)”・”Singapore Mangement University(シンガポール経営大学)”・”Singapore University of Social Sciences(シンガポール社会科学大学)”を卒業した上で、司法試験に合格しなければなりません。

そして、実際の司法試験ですが、Part Bと呼ばれる筆記試験の「弁護士倫理(Ethics&Professional Responsibility)・企業法実務(Corporate&Commercial Practice)・紛争解決実務(Dispute Resolution Practice)・個人案件実務(Private Client Practice)・近代法務知識(Contemporary Legal Practice & Knowledge)・実務技術(Professional Skills)」に合格しなければなりません。

また、シンガポール国外の大学を卒業した人は、Part Bだけではなく、口頭試験のPart Aの「刑法(Criminal Law)・シンガポール司法制度(Singapore Legal System)・会社法(Company Law)・証拠法(Evidence Law)・土地法(Land Law)」に合格しなければなりません。

また、上記の試験、合格後もトレーニーとして6ヶ月間(2024年から12ヶ月間に延長する予定)、法律事務所で実務研修に参加する必要があります。そうすると、一般的な場合、シンガポールの大学卒業まで4年+司法試験合格まで1年+実務研修1年で、5年以上かかることとなります。なお、合格率でいうと、Part Bは43.7%となっています。

日本のロースクールに比べるとPart Bの合格率は高いですが、弁護士になるためにかかる期間が日本よりも長いことに加え、上記の一定の指定校を卒業する必要があるため、弁護士になるため長い受験戦争を勝ち抜いてくる必要があるのです。また、弁護士になった後も、人口に占める弁護士の割合が高いため、競争は続きます。

他方、シンガポールにおいては、日本のような行政書士、司法書士、社労士などと言われる司法隣接業務と言われる資格はありません。このため、これらの数も含めると、日本における法律に関する専門家の数は必ずしも少なくないとも評価されています。

今回は日本とシンガポールにおける弁護士資格についてご紹介しました。なお、シンガポールはシンガポール指定大学以外の外国の大学を卒業している場合においても、資格を解放していますが、その詳細は別の回でご説明したいと思います。

筆者:栗田哲郎(シンガポール法(Foreign Practitioner Examinations)・日本法・アメリカNY州法弁護士)

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One Asia Lawyers Group

One Asia Lawyers Groupは、アジア全域に展開する日本のクライアントにシームレスで包括的なリーガルアドバイスを提供するために設立された、独立した法律事務所のネットワークです。One Asia Lawyers Groupは、日本・ASEAN・南アジア・オセアニア各国にメンバーファームを有し、各国の法律のスペシャリストで構成され、これら各地域に根差したプラクティカルで、シームレスなリーガルサービスを提供しております。 この記事に関するお問い合わせは、ホームページまたは info@oneasia.legal までお願いします。

One Asia Lawyersグループ拠点・メンバーファーム 24拠点(2023年8月時点)
・ASEAN(シンガポール、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー)
・南アジア(インド、バングラデシュ、ネパール、パキスタン)
・オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)
・日本国内(東京、大阪、福岡、京都)
・中東(アラブ首長国連邦(UAE/ドバイ・アブダビ・アジュマン))
・その他(ロンドン、深圳(駐在員事務所))

・メンバー数(2023年8月時点)
全拠点:約400名(内日本法弁護士約40名)


栗田哲郎 Tetsuo Kurita

One Asia Lawyers Group / 弁護士法人 One Asia
代表弁護士(シンガポール法(FPE)・日本法・アメリカNY法)

tetsuo.kurita@oneasia.legal
+65 8183 5114

2004年より日本の大手法律事務所(森・濱田松本法律事務所)に勤務後、スイス・アメリカへの留学を経て、シンガポールの大手法律事務所(Rajah & Tann)にパートナー弁護士として勤務。その後、国際法律事務所(ベーカーマッケンジー法律事務所)においてアジアフォーカスチームのヘッドを務め、日本企業のアジア進出・M&A・紛争解決に従事する。

その後、2016年7月One Asia Lawyers Groupを創設(シンガポールのメンバーファームはFocus Law Asia LLC)し、シンガポールを中心にアジア全般のクロスボーダー法務(クロスボーダーM&A、国際商事仲裁等の紛争解決、国際労働法等)のアドバイスを提供している。

2009年よりシンガポールに拠点を移し、2014年日本法弁護士としては初めてシンガポール司法試験(Foreign Practitioner Certificate)に合格、日本法・アメリカNY州法に加えて、シンガポール法のアドバイスも提供している。


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