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-第1回- シンガポールの法律と日本の法律の根本的な制度の違いについて

【~連載~One Asia Lawyers Groupのシンガポール法律コラム】
-第1回- シンガポールの法律と日本の法律の根本的な制度の違いについて

みなさん、こんにちはOne Asia Lawyers Group(Focus Law Asia LLC)です。これから、このコラムでは、シンガポールの生活に密着した法律について、日本の法律と比較しながらできるだけ分かりやすく説明していきたいと思います。第1回となる今回は、シンガポール法と日本法が根本的に異なる制度になっていること、それに基づく注意点について解説いたします。

まず、シンガポールと日本では法律の成立の歴史・根本となる制度が全く異なっています。シンガポールの法制度は、コモン・ロー(判例法・不文法主義)の仕組みに基づいています。

コモン・ローは英米法とも呼ばれ、名前の通りイギリスで発展し、アメリカなどに継受された法体系です。シンガポールはかつてイギリスの植民地であったことから、1993年イギリス法受継法(Application of English Law Act 1993)という法律があるなど、1993年以前のイギリス法が有効に適用されることとなっています。

もちろん成文法もあるのですが、コモン・ローでは裁判所による判例や過去の慣習が第一の法源であるとされており、そして当事者同志の契約が重要とされています。

他方、日本は、シビル・ロー(大陸法・成文法主義)の仕組みに基づいています。シビル・ローはローマ法などを起源としており、フランスやドイツで発展しました。そして日本はフランスを参考に民法を作成したため、このシビル・ローが日本民法の基礎となっています。シビル・ローの特徴は、予め法律で定められていることにあり、「制定法主義」とも呼ばれています。

このようなコモン・ローとシビル・ローの最も大きな違いがでる場面が、「民法」(Civil Code)の有無です。

例えば、私たちが、知人に車を販売するとして、その知人が約束の期日にお金を払ってくれない場面を想定してください。日本ではたとえ契約書が作成されなかったとしても、民法が存在するため、民法419条・404条に基づき、法定利率3パーセントの遅延損害金を請求することができます。しかし、シンガポールにおいてはこの民法が存在しないため、遅延損害金を請求したくても、契約書に記載がない限り、請求することができない可能性があります。

つまり、日本における生活・ビジネスにおいては、契約書に書いていなくても、民法の定めにより様々な権利・義務を主張することができる一方、シンガポールにおける生活・ビジネスにおいては民法がないため、契約書に書いていないと、様々な権利・義務の主張ができないという全く逆の結果となる可能性があるのです。

このため、シンガポールにおいては、(民法がある日本とは異なり)契約書にきちんと権利・義務を記載しないと権利・義務が発生しにくく、契約書のボリュームがどうしても厚くなってしまうのです。皆さんもシンガポールで家を借りる際、非常に長いリース契約でびっくりされたことがあると思います。このため、日本の常識をシンガポールにそのままもちこんで、契約書なしで取引などを行おうとすると思わぬトラブルに巻き込まれることがありますので、注意が必要です。

One Asia Lawyers Group

One Asia Lawyers Groupは、アジア全域に展開する日本のクライアントにシームレスで包括的なリーガルアドバイスを提供するために設立された、独立した法律事務所のネットワークです。One Asia Lawyers Groupは、日本・ASEAN・南アジア・オセアニア各国にメンバーファームを有し、各国の法律のスペシャリストで構成され、これら各地域に根差したプラクティカルで、シームレスなリーガルサービスを提供しております。 この記事に関するお問い合わせは、ホームページまたは info@oneasia.legal までお願いします。

One Asia Lawyersグループ拠点・メンバーファーム 24拠点(2023年8月時点)
・ASEAN(シンガポール、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー)
・南アジア(インド、バングラデシュ、ネパール、パキスタン)
・オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)
・日本国内(東京、大阪、福岡、京都)
・中東(アラブ首長国連邦(UAE/ドバイ・アブダビ・アジュマン))
・その他(ロンドン、深圳(駐在員事務所))

・メンバー数(2023年8月時点)
全拠点:約400名(内日本法弁護士約40名)


栗田哲郎 Tetsuo Kurita

One Asia Lawyers Group / 弁護士法人 One Asia
代表弁護士(シンガポール法(FPE)・日本法・アメリカNY法)

tetsuo.kurita@oneasia.legal
+65 8183 5114

2004年より日本の大手法律事務所(森・濱田松本法律事務所)に勤務後、スイス・アメリカへの留学を経て、シンガポールの大手法律事務所(Rajah & Tann)にパートナー弁護士として勤務。その後、国際法律事務所(ベーカーマッケンジー法律事務所)においてアジアフォーカスチームのヘッドを務め、日本企業のアジア進出・M&A・紛争解決に従事する。

その後、2016年7月One Asia Lawyers Groupを創設(シンガポールのメンバーファームはFocus Law Asia LLC)し、シンガポールを中心にアジア全般のクロスボーダー法務(クロスボーダーM&A、国際商事仲裁等の紛争解決、国際労働法等)のアドバイスを提供している。

2009年よりシンガポールに拠点を移し、2014年日本法弁護士としては初めてシンガポール司法試験(Foreign Practitioner Certificate)に合格、日本法・アメリカNY州法に加えて、シンガポール法のアドバイスも提供している。


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