【~連載~FINANCIAL PLANNING シンガポールでおトクに賢く生きる】
第324回 2026年の香港・シンガポールにおけるファミリーオフィス政策の最新動向 ―誘致競争からエコシステム競争へ

1.アジアのファミリーオフィス市場に生じている変化
近年、アジアにおけるファミリーオフィス(Family Office:FO)の主要拠点として、シンガポールが大きな注目を集めてきた。
政治・社会の安定性、英語圏としての利便性、金融インフラ、13O・13Uをはじめとするファンド税制、VCC(Variable Capital Company)などを背景として、世界の富裕層が資産管理拠点を構える動きが加速したためである。
しかし2026年に入り、この構図には変化がみられる。特に注目されるのが、香港におけるシングル・ファミリーオフィス(Single Family Office:SFO)の増加である。
その一方、シンガポールでも2026年に入り、SFOに関する規制体系や13O・13U等の運用が見直されるとともに、人材誘致を含む新たな政策が示されている。
こうした動向を踏まえると、アジアのファミリーオフィス市場は、「シンガポール一強」とも評された局面から、香港とシンガポールがそれぞれの強みを生かして競争する新たな段階へ移行しつつあると考えられる。
2.香港のSFOは3,384拠点へ――2年間で約25%増加
この変化を象徴するのが、DeloitteがInvestHK(香港投資推進局)の委託を受けて実施し、2026年2月に公表した調査である。同調査によると、香港に所在するSFOは2025年末時点で3,384拠点と推計されている。2023年末の2,703拠点から、2年間で681拠点、約25%増加したことになる。
さらにDeloitteは、香港のSFOが直接雇用する専門人材は1万人超、オフィス賃料、人件費、専門家報酬、資産運用関連費用等を含む年間の運営支出は約126億香港ドルに達すると推計している。
この点からも、ファミリーオフィス誘致は単なる「富裕層の資産を呼び込む政策」にとどまらないことが分かる。
SFOが設立されれば、資産運用会社に加え、銀行、法律事務所、会計・税務専門家、信託会社、保険会社、不動産会社等、幅広い専門サービスへの需要が発生する。
したがって、ファミリーオフィス政策は、金融、人材、専門サービス、投資を包括する一種の産業政策としての性格を強めている。
3.香港で拡大しているのはSFOの「数」だけではない
Deloitteの調査で注目されるのは、SFOの絶対数の増加だけではない。調査対象となった香港のSFOのうち、60%が今後3年間で香港への投資配分を増加させると回答している。残る40%は現状維持であり、投資配分を減らすとの回答はなかった。
また、SFOの74%、MFO(Multi-Family Office)の94%が、香港での事業拡大を予定している。香港の競争力として挙げられた主な項目は、以下のとおりである。
| ▪税制の効率性・有利な税制:90% ▪成熟した資本市場:85% ▪中国本土へのアクセス:72% |
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プロフィール
花輪陽子

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。
「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演や講演経験も多数。 http://yokohanawa.com/
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