【シンガポールのビザ】シンガポールのEPビザ変更点などを徹底解説
2024年3月4日、タン・シーレン人材相はシンガポール人材開発省(以降MOM)の予算審議の中で、来年2025年1月1日よりEPビザ申請のための最低月額給与を5,600シンガポールドル(以降SGD)に引き上げることを発表しました。これまで、シンガポール政府はシンガポリアン・コア政策に基づきローカル人材の雇用を守る目的で外国人の就労ビザ取得要件の引き締めを行ってきました。
すでに実施が始まっているEPビザ取得のためのポイント制度「COMPASS制度」が、今年9月より新規申請分だけではなくいよいよ更新申請にも適用されることが決まっている中での今回の発表。ますます厳格化されるEPビザ取得要件ですが、早速内容を詳しく見ていきましょう。
シンガポールのEPビザ:2025年1月1日からの変更
今回、2025年1月1日より適用となるのはEPビザ新規申請のための最低月額給与額です。現在の5,000SGDより600SGD引き上げられ5,600SGDとなります。なお、金融セクターの場合はベース給与が他セクターよりも高いことを考慮し、現在の5,500SGDから6,200SGDへ引き上げられます。
2024年3月現在 | 2025年1月1日~ | |
金融部門を除くすべて | $5,000 | $5,600 |
金融部門 | $5,500 | $6,200 |
出典:シンガポール人材開発省(MOM)
なお、ビザの更新分については再来年2026年1月1日より適用となります。タン・シーレン人材相は、現在のEPの有効期間が新規申請で2年間、更新申請で3年間のため、本変更に完全に適応するためには最長2028年までの猶予があるとしました。
一方で、本最低月額給与は、年齢が上昇するにつれて必要となる月額給与も上がります。最高額の一例としては金融セクターでの40代半ばで18,000SGD(※2024年4月現在、日本円で約202万円)です。また、来年以降すべてのEP申請はCOMPASS制度が並行して適用されます。
Sパスについては今回の発表はありませんでしたが、以前の発表通り、現在の最低3,150SGD(※金融セクター:3,650SGD)が来年2025年9月1日からは3,300SGD(※金融セクター:3,800SGD)へ段階的に引き上げが予定されています。
シンガポールのEPビザ引き上げの背景
タン・シーレン人材相は、今回の引き上げについて「予め設定された給与額のベンチマークに基づき、定期的に見直しをすることで、ローカル人材にとって公平な競争条件が確保される」と述べており、COMPASS導入時と同じく、EP審査基準をクリアできる人材は本変更にも適応可能だとしています。
同時に、「シンガポールの経済成長のために優秀な人材を惹きつけ続けるとしても、各企業が公平にローカル人材の労働力を育成するためにワークパスの枠組みを強化する必要がある」と述べました。
政府が定めるEP申請者の最低月額給与はローカルPMET(専門職、管理職、経営幹部、技術者など)の給与の上位3分の1を基準としたものとしています。ビザ要件の見直しについては、今後も状況を見ながら引き続き行っていくとしています。
造船セクターでの外国人労働者税(levy)の引き上げ・DRCの引き下げ
併せて、造船セクターにおける外国人労働者税(levy)の引き上げとDRCの引き下げが発表されました。これらの変更は2026年1月1日から適用されます。
まず、外国人労働者税(levy)の引き上げに関してです。同セクターの基本技能労働許可証保持者に対する徴収額は現在400SGDですが、これが100SGD引き上げられて500SGDになります。また、高技能労働許可証保持者に対する徴収額は現行の300SGDから50SGD引き上げられ、350SGDとなります。
次にDRCの引き下げについてです。DRCとは、企業の総従業員に占める外国人労働者の割合の上限を指します。SパスおよびWP(ワークパーミット)保持者を対象にしたDRCは、現行の77.8%から75.0%に引き下げられます。この変更により、同セクターの企業が雇用できるSパス・WPパス保持者の数は、現在の3.5名から、ローカル従業員1名につき最大3名になります。
海外ネットワーク&エキスパート・パス(Overseas Networks & Expertise Pass)のアップデート
今回の審議では、海外ネットワーク&エキスパート・パス(通称ONEパス)についても触れられました。ONEパスは、最低月額給与3万シンガポールドル以上、または技術・芸術・学術・スポーツの分野で「優れた業績」がある場合に取得ができるビザです。アップデートがあったのは、現時点での本ビザの承認数です。
今年1月1日以降、シンガポールではすでに約4,200件のONEパス申請が承認されていることが明らかになりました。また、これらは金融や情報通信技術などの成長セクターに集中しているとのこと。タン・シーレン人材相は「人材不足が騒がれる昨今、企業が人材を追いかる時代だ」と述べました。
新たな取り組み:シンガポール人の海外就労経験獲得のための支援
このほか、シンガポール人を対象とした新たな取り組みについても発表がありました。新たに発表された取り組みは、「Global Business Leaders Programme(グローバル・ビジネス・リーダーズ・プログラム)」と「Overseas Market Immersion Programme(オーバーシーズ・マーケット・イマージョン・プログラム)」の2つです。これらは、海外で実務経験を積みたいシンガポール人数百人を対象としています。
グローバル・ビジネス・リーダーズ・プログラムでは、シンガポールの企業リーダーを育成するために政府が海外赴任やエグゼクティブ・マネジメント・プログラムなどの機会を支援します。一方、海外市場イマージョン・プログラムは、海外進出を目指す企業を支援する取り組みで、海外経験の少ない従業員を海外赴任やその他の研修に派遣します。
これらの取り組みは、シンガポール人が海外で経験を積んだ後にシンガポールに戻ることで、経済に良い影響をもたらすという考えを背景としており、海外での就労を前向きに支援する方針を示しています。
詳細は、今年の半ばに発表される予定です。
最後に
今回は、2024年3月4日に発表のあったEPビザ最低月額給与の引き上げ、そして新たな取り組みに関する内容をご紹介しました。ローカル人材の雇用を守り、育成へ繋げるためのさらなるテコ入れを図る一方で、ますます外国人が就労するためのハードルが上がるシンガポール。
今年9月からはCOMPASSによるEPビザ更新申請も適用開始され、新たな公正な雇用に関する新法律も施行予定、と多くの変更が予定されています。目まぐるしく状況が変化するシンガポールの人材市場、当地でビジネスをする企業も引き続き臨機応変な対応が求められることとなりそうです。
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直近では、経営やマーケティング、人事など各分野、業界における専門性の高い情報を求める企業に対し最適な人材を紹介し、直接相談ができる場を設けるエキスパートソリューションサービス「Brainsight(ブレインサイト)」を開始。ほかにも、韓国企業様と韓国語スピーカーの方とのマッチングを行う専門チームが発足し、ますますサービスの幅を広げています。
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