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第155回[スイス×シンガポール]
ビッグマック指数世界一のジュネーブに滞在。シンガポールと共通する強みとは

【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】
第155回[スイス×シンガポール]
ビッグマック指数世界一のジュネーブに滞在。シンガポールと共通する強みとは

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

今月は2週間ほどジュネーブに滞在している。物価比較でよく利用されるビッグマック指数をスイスは1位で8.17米ドル。現在の為替レートでは1,171円だ。日本は45位で3.04米ドルで435円。46位のベトナム3.01米ドルとほぼ同じ。このデータは「安いニッポン」の根拠としてもよく使われる。個人的にはビッグマック指数は、ある程度の妥当性はあるものの、購買力平価ベースである事、各国での販売戦略や原料価格などに注意しながら使う必要があると思っている。

ジュネーブでは短期留学する息子の大学寮に居候をして、料理を教えるために1日1回は共同キッチンで自炊をしている。シンガポールも物価は高めだが、それに慣れていて良かったと思えるのが今回のジュネーブ滞在。おそらく一番安いぐらいの価格帯であろう中華料理やインド料理の店で、一番安いランチ向けメニューでも10スイスフランプラスアルファからだ。1フランが168円のため、円で考えてしまうと2,000円以上からで、中心価格帯は2,500円から3,000円ほど。

一方で、COOPやMIGROSといったチェーンスーパーに行くと食材は意外と手頃だ。さすがと思えるのはパンやワインは良質なものがかなり手頃。クロワッサンは2フラン程度、ワインも10数フラン程度で地元ジュネーブやスイス各地のワインが売られている。野菜も種類によるが概ね手頃だ。ただ惣菜コーナーは高く、弁当の様なもので10数フランはする。加工のための手間賃が入った途端、値段が跳ね上がる印象だ。

日本より安いものと言えば大学の学費だ。国公立にあたる連邦大学系は、外国人でも日本円で年間30万円で収まる(日本の交換留学だと日本の学費の方が高くなってしまう)。ジュネーブ大学の寮は、個室でバス・トイレ・キッチン共同で9万円ほど。携帯電話もよく探せば20フラン以下でデータ上限なしというプランがある。自炊前提でトータルコストを考えれば、東京での一人暮らし生活とあまり変わらないかもしれない。

スイスという人口が880万人の小さな国が国際的な存在感があるのは、「永世中立国」というしたたかなポジションを貫いてきたことに加えて、世界中から人材があつまり、それと同時に情報と資金が集まることだろう。ジュネーブだけの人口に限れば州としては50万人に満たず、基礎自治体としてのジュネーブになると20万人弱と非常に小さな地域だ。人、情報、カネという視点はスイスに滞在しながらシンガポールと共通した強みを感じている。


ビッグマック指数(上位10か国、日本、東南アジア)

※注:同価格でも順位が異なる場合は小数点第3位以下での差がある。

*2024年9月10日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。

2023年にEYストラテジー・アンド・コンサルティングのインテリジェンスユニット・シニアマネージャーとしてビジネスインテリジェンスの強化を手がけた後、2024年4月よりITデバイス&SaaSの統合管理クラウドを提供する現所属にて情報発信を担当。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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