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第147回 [教育×アジア]QS大学ランキングが発表、マレーシア勢が10年間で大躍進

【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】
第147回 [教育×アジア]QS大学ランキングが発表、マレーシア勢が10年間で大躍進

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

毎年恒例のThe QS World University Rankings 2025が6月4日に発表された。東南アジアのトップは世界8位となったシンガポール国立大学(NUS)だ。NUSは2024年に続いて8位でトップ10入りを維持。NUSに次いでシンガポールの南洋工科大学(NTU)が15位となった。シンガポールの2校が世界トップクラスであることは想定通りで、もはや定着した感覚がある。

注目しておきたいのは、着実にランキングを上げてきているマレーシア勢だ。60位にマラヤ大学(UM)、138位にマレーシア国民大学(UKM)、146位にマレーシア理科大学、148位にマレーシアプトラ大学、181位にマレーシア工科大学とマレーシアの名門校が続く。ランキングの上昇幅も大きい。UMは2015年に151位、2020年に70位、そして今回は60位となっている。10年間で91ランクも上昇させた。他の大学の10年間も、100位以上のランクアップを遂げている。

QSランキングは上位校がかなりの高得点が付き、100位ぐらいになってくると60点を下回り、200位では50点を切り、団子状態になってくる。そうしたなか、UMが60位でスコアも70点を超えたことは、世界的にも上位校と言える。身近な日本の大学と比べると、UMに近いのは京都大学や東京工業大学、UKMに近いのは北海道大学というように、日本のトップクラス校と肩を並べている。

もちろん、QSランキングをはじめとした各種大学ランキングについては、それぞれの基準が異なり、どれが正しい、どれが良いという言い方は難しい。特に日本の大学の場合は、国際性や英語論文の発表や引用数についての評価が低くなりがちだ。一方でノーベル賞学者は多数輩出している。

ただ、マラヤ大学が自らホームページで説明しているように大学ランキングの評価にあわせた準備をしていくという点は、日本の大学も見習うところがあるように思える。また、日本の大学のランキングをみると国立大学は10年前に比べて下がり、私立大学はやや上昇している。

他国の人からすれば、大学ランキングは分かりやすい指標として使われる場面もあるだろう。また、日本の場合は少子高齢化を考えれば、外国人学生に来て欲しい事情もある。そのときに、ランキングで一定レベルに達しているという点は判断基準にもなりやすい。一概に無視すべきではないだろう。


QS大学ランキングトップ10校と日本・シンガポール・マレーシアの大学ランキング

出所)The QS World University Rankings 各年版より筆者作成

*2024年6月18日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。

2023年にEYストラテジー・アンド・コンサルティングのインテリジェンスユニット・シニアマネージャーとしてビジネスインテリジェンスの強化を手がけた後、2024年4月よりITデバイス&SaaSの統合管理クラウドを提供する現所属にて情報発信を担当。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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