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-第142回-[シンガポール×政治]5月15日に政権交代を迎えるシンガポール、51歳のウォン新首相が誕生するまで

【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】
-第142回-[シンガポール×政治]5月15日に政権交代を迎えるシンガポール、51歳のウォン新首相が誕生するまで

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

シンガポール首相府は4月15日、リー・シェンロン首相が5月15日に退任とし、ローレンス・ウォン副首相兼財務相が新首相に就任することを正式に表明した。予定通りの動きではあるが、筆者としては「ついに」という気持ちもある。バトンタッチのタイミングとしては、非常に良いだろう。

コロナ禍は過去のものとなり、インフレや米国の金利上昇などによる変動性の高い金融経済情勢もある程度の落ち着きを見せている。シンガポール経済も絶好調という訳ではないが、悪くはない。安定した船出のタイミングを探っていたのだろう。

元々、リー首相は70歳で引退すると表明していた。1952年生まれのため、本来の引退は2022年の予定であった。元々の後継候補と言われていたのはヘン・スイキャット氏だった。ヘン氏は「第4世代指導者」と言われるグループのひとりであった。リー首相の後継として2018年の時点で合意が取れており、与党人民行動党(PAP)ではリー首相に次ぐナンバーツーとなる書記長第一補佐に就任、そして、2019年に副首相兼財務相に任命された。

しかし、リー首相がコロナ禍対策のために当面は首相を続投する流れになり、ヘン氏は2021年4月に自ら首相候補は辞退すると発言をした。

ヘン氏は、首相候補からの辞退について、1961年生まれで首相就任後に長期に政策に従事する時間がなくなったと年齢要因を挙げ、また、「第4世代指導者」たちの間ではウォン氏の支持で固まっており問題ないという趣旨の説明をした。一部には2020年総選挙の結果が芳しくなかったことが原因ではないかという指摘もあるが、真相は不明だ。そして、ウォン氏は2022年の内閣改造で副首相に就任し、リー首相の後継が確定となった。

新首相となるウォン副首相は1972年生まれで現在は51歳、12月に52歳を迎える。一定程度の長期政権となることが予想されるが、10年後でも62歳である。50代前半の首相は「ちょうど良い」と言えるかもしれない。コロナ禍対策の実績で国民から政策手腕には信頼を得ており、気さくで親しみやすい人物評もある。

今後、政治経済面ではいくつかの課題がある。ある程度落ちついたとはいえ、不確実性の高い金融経済情勢や地政学リスク、そして、2025年までには総選挙が実施される。既に、選挙に向けたさや当ては始まっている。前回、PAPは得票率を下げ、重要な選挙区を落としている。ウォン新政権がどこまでPAPへの支持を回復させられるかが注目点であろう。

今後のシンガポールをどのように牽引していくのだろうか。まずは、首相就任時のスピーチや新政権発足後の動きを考察してみたいと思う。

シンガポール歴代首相

出所)各種資料より筆者作成

*2024年4月24日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。

2023年にEYストラテジー・アンド・コンサルティングのインテリジェンスユニット・シニアマネージャーとしてビジネスインテリジェンスの強化を手がけた後、2024年4月よりITデバイス&SaaSの統合管理クラウドを提供する現所属にて情報発信を担当。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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