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-第132回-[シンガポール×経済]コロナ禍の影響から脱するシンガポール経済、様々なリスク要因のなかで迎える2024年

【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】
-第132回-[シンガポール×経済]コロナ禍の影響から脱するシンガポール経済、様々なリスク要因のなかで迎える2024年

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

1月2日、シンガポールの2023年の経済成長率(実質GDP前年比伸び率)の速報値が発表された。前年比でプラス1.2%だった。今後、確定値が発表される予定であり、修正がありうる。

速報値をみる限りだが、筆者の感想としては、マクロデータを見るうえで、やっとコロナ禍の影響を排除して考察できる年を迎える、と感じた。メディア等の見出しを見渡すと、2022年のプラス3.6%から2023年はプラス1.2%へ減速という側面が強調されがちだ。ただ、筆者は、2024年特有の経済リスクはあるとしても、ヒストリカルなマクロトレンドとしては巡航軌道に戻ったと解釈している。

過去、シンガポールの経済成長率は、多少の上下はあったものの、平均的にみればコロナ禍前は概ね3%前後で推移してきていた。コロナ禍が襲った2020年はマイナス4.1%と大きく沈み込み、2021年はプラス7.6%となった。コロナ禍との闘いは続いていたが、景気対策が効いたり、一部の経済活動が正常に向かったりしたことが大きい。7.6%のプラスは、シンガポールのように先進国となった国では非常に大きな伸びだが、2020年が大幅マイナスだったため反動増という要素がある。

そして、2022年もコロナ禍から脱するための景気刺激策が継続したことと、民間経済が一段と回復したため、前年比プラス3.6%と好調な数字が出た。

2023年はポストコロナ禍を迎え、政府による景気刺激策は一服して民間経済の回復が主役となった。2021年と2022年のベースが高かったと考えると、2023年のプラス1.2%は問題視するほど低い数値ではないだろう。

2024年を迎えてGST(物品サービス税)が従来の8%から9%へと引き上げとなった。コロナ禍のために実施が後ずれしていたが、政府が実施に踏み切ったということはコロナ禍の影響がなくなり、経済が正常になったという認識の表れでもあろう。

今年は、金利とインフレといった金融情勢に加えて、ウクライナ情勢や米国大統領選、中国経済の行方といったグローバルに影響を与える論点が多い。シンガポール経済は外部環境の影響も受けやすいため、様々なリスク要因の多い年だ。コロナ禍の影響をほぼ拝して考察できる年を迎えて、シンガポール政府の諸政策や民間経済の成長がどうなっていくのか、重要な一年となりそうだ。


シンガポールの経済成長率(実質GDP前年比伸び率)の推移(2014年~2023年)

出所)世界銀行、UN Populationより筆者作成

*2024年1月10日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。2023年4月より現職、対外情報発信やビジネスインテリジェンスの強化等に従事。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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