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-第130回- [アジア×アカデミア]アカデミアの知見から、ビジネスインテリジェンスへの示唆を獲得する

【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】
-第130回- [アジア×アカデミア]アカデミアの知見から、ビジネスインテリジェンスへの示唆を獲得する

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

筆者は、アジア系を中心に、いくつかの学術系団体の会員である。こうした団体はアカデミックな知の探求が目的のため、今すぐにビジネスに役立つノウハウや知識の提供をするわけではない。ただ、中長期的で構造的な視座からアジアを理解するための知見を学ぶことができる。

筆者は11月には京都で行われたアジア政経学会の研究大会に参加し、普段使っている思考回路とは異なる部分が刺激され、これからのビジネスにも活用できそうな示唆もふんだんに得られた。

シンガポールでもシンガポール国立大学などで大小の研究会が頻繁に行われている。しかも、多くは無料である。開催情報は、各研究機関のホームページから登録できるニュースレターやSNSで告知されている。クーデター後のミャンマー情勢、各国の選挙に向けた動き、資源関連、サプライチェーン、貿易といったビジネスにも大いに関連するテーマも多く設定されている。ここから、中長期的な経営戦略やリスクマネジメントには参考とできる情報や視点も多いだろう。

ただ、残念ながら日本人の姿を見ることは希だ。一定数の日本人参加者を目にするのは、シンガポール国立大学ユソフ・イシャック研究所が年初に、中心部のホテルでホテルで行うASEAN Outlookなど大きな会合に限られている印象だ。

日本で行われる学会の良い点は、何と言っても日本語で抽象的な議論も深く理解できる点だ。もう一つの利点は、日本には世界レベルのアジア研究者がそろっていることだ。京都大学、東京大学、東京外国語大学、慶應大学、早稲田大学などは、在籍するアジア研究者の数も多く、研究ハブとしての機能も担っている。日本独特の示唆も得やすい。

筆者はマレーシアを起点にアジアに関わり始めたが、仕事上は、東南アジア全域について、個別具体的な知識や情報が求められるようになった。ぞれぞれの「この国のかたち」を理解することは容易ではない。そこで、アカデミアとの交流は多いに役に立った。学会ではトップクラスの研究者と直接議論し、若い研究者から斬新な視点を学び、各国の「ツボ」を理解することができた。

また、学会では懇親会への参加もおすすめしたい。こうした場では、アカデミックなフレームワークにとらわれない、各国でのフィールドワークでの経験や、構想段階のアイディアについて聞けるチャンスでもある。

*2023年12月13日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。2023年4月より現職、対外情報発信やビジネスインテリジェンスの強化等に従事。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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