HOMEコラム【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】-第125回-[中国×情報分析]再び現れる「中国崩壊論」に惑わされず、中国を冷静に見据えていく必要性

【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】-第125回-[中国×情報分析]再び現れる「中国崩壊論」に惑わされず、中国を冷静に見据えていく必要性

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

 10月2日、世界銀行が2023年の中国の経済成長率は4.4%になるとして、4月時点の予想から0.4%pt引き下げた。これにともない、東アジア太平洋地域全体の予想も4.8%から4.5%へと下方修正が施された。中国経済は、不動産業界の変調や民間債務問題などが顕在化し、今後の成長について懸念が広がっている。

また、中国をめぐっては、特に日本では地政学リスクの観点から警戒感がもたれており、政府や企業でも経済安全保障という名の下に、サプライチェーンなど様々な対応が検討されている。中国経済の将来についての評価や予測については、中国経済専門家に委ねるとして、日本での中国を取り巻く言説を踏まえると。筆者としていくつか心配していることがある。

まず、再び「中国崩壊論」が目立ち始めたことだ。筆者は、以前所属していたメディアで『中国崩壊論の「崩壊」』という連載を組んだことがある。動機としては、巷に中国崩壊論の本や論説があふれているが、実際には中国は崩壊していない。

日本語でのこうした論説は、1980年代ぐらいからあり、1990年代、2000年代に向けて増えていった。確かに、こうした論説の中で、中国の将来で懸念すべき点として頷けるような内容もあるものの、崩壊するという性急な結論に向かうには不十分な理由付けがほとんどだった。

こうした「中国崩壊論」の台頭をうけると、中国で発生している現在進行形かつ等身大の状況を正確に見据えることができなくなってしまうのではないだろうか。

中国で活躍している中国人、日本人、様々な国から来ている外国人といった人々から話しを聞くと、中国での独自のイノベーションが進んでいることも感じられる。しかし、少し前の「深圳ブーム」のあとからは、中国イノベーションに関する情報は一般的なメディアではあまりとりあげなくなり、中国のリスク面へとシフトした印象がある。

中国は確かに独自の国家と社会体制の国だ。そして、最近はインドが政治経済に渡り、存在感を増しつつある。そうしたなかで、中国を見る眼が変わってしまうことは危険だろう。極端な視点によらずに、中国という、依然として巨大で影響力の強い国の等身大を冷静に見据えていくことが大切だろう。  

*2023年10月4日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。2023年4月より現職、対外情報発信やビジネスインテリジェンスの強化等に従事。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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