HOMEコラム【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】 -第117回-[インバウンド×地方]シンガポール人に自宅に泊まってもらって分かったインバウンドの実情

【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】 -第117回-[インバウンド×地方]シンガポール人に自宅に泊まってもらって分かったインバウンドの実情

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

日本へのインバウンド観光が復活に向かいつつある。今年、1月に体験したシンガポールからのインバウンドの実態について書きたいと思う。

シンガポール人の知人は、福岡、広島を主な滞在先として、旅の仕上げは神奈川県の我が家に滞在した。日本のJRなどの割引を駆使して、福岡から九州各地を日帰りで巡り、広島に向かう途中も他の都市に立ち寄るアクティブさ。

そして、「安い日本」と言われてしまっている昨今だが、やはり爆買い。ただ、何でもかんでも買いまくるわけではない。買い物の様子をみていると、品質やデザインをしっかり検討した上で購入している。あるいは、すでにシンガポール人の間で、この製品は良いと言われている定番商品を購入している。

我が家の近所にある、ごく普通のドラッグストアやショッピングモールでもずいぶん買い込んだ。近年は、住宅街に近いエリアでも免税対応をしてくれる店が増えている。当然、荷物は増える。知人たちは空港に運ぶ心配をしたようだが、宅配業者が家に取りにきて、明日か明後日には空港に着いているという説明をすると安心して買い物ができたようだ。

帰国が近づいた日、予約した時間通りに宅配業者がやってきて、ドライバーがハキハキとした対応で1、2分もしないうちにスーツケースや段ボールをトラックに積み込んだ。知人は、その様子を見て驚いていた。

飲食や買い物の様子をみていると、ブランド力のあるものや全国チェーンだけでなく、各地域の産物のポテンシャルも感じた。どれを食べても美味しい、製品の工夫が楽しいと感想を話していた。その殆どは海外に知られていない。

ごく普通の民家である我が家の滞在も楽しんでもらえたようだ。シンガポールでは戸建て住宅に住む機会は殆ど無い。あまりに高すぎるからだ。また、我が家の近所は、湘南地域という特性か、それぞれの家の装飾に工夫を凝らしたり、念入りに花壇の手入れをしたりしている人たちが多く、そうした一般の住宅を興味深く見ながら歩いていた。

しばしば、日本の地方の可能性は言われることだが、実際に体験してみる、あるいは体験される側に経つと、概念的に話しているだけでは分からないようなことをずいぶん体感ができた。

*2023年7月5日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。2023年4月より現職、対外情報発信やビジネスインテリジェンスの強化等に従事。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
SNSリンクはこちら

バックナンバーはこちらから
【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】

チェックしたサービス0件を
まとめて請求 まとめて問い合わせ