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【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】 -第116回-【アジア×人口】東南アジアはどのように老いるのか。若さが続くインドネシアとフィリピン、老いるタイ

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

東南アジアの人口は若い、とよく言われる。そして、この若さが投資でも魅力として語られることが多い。データでみても、大雑把に言えば若いという表現を使っても違和感はない。

ここで、筆者がふと思うのは、老いは必ずやってくるという事だ。医療技術が発達するなかでは寿命は延びるため、全体の高齢化を食い止めるには、出産で子供が増えるか、移民で若い人たちが外国からやってきて定住するぐらいしかない。

マクロ経済では、生産年齢人口と従属人口という概念が大切になる。生産年齢人口は15歳から64歳までが該当し、その名の通り生産する立場の人たちだ。日常的な言葉で言い換えれば、働いて消費する現役世代だということになる。これに対して、従属人口は、14歳までの子供と65歳以上の高齢者と定義され、基本的には労働に従事しない。

日本もかつては生産年齢人口が多く若い国だった。その若さが高度経済成長の重要な源泉の一つともなっていた。今、東南アジアを含む新興国で言われる若い人口が多い、というのは、かつての日本と似たような状況にある。むろん、経済成長は技術革新や資本投下など様々な要素が影響する。それでもなお、人口の大きさが重要なことは、中国やインド、インドネシアといった人口大国の成長ぶりをみれば分かるだろう。

将来の東南アジアはどうなるのだろうか。国連が発表している世界各国の従属人口比率が示唆的だ。従属人口比率は、生産年齢人口が支えるべき子供と高齢者の割合である。数字が大きければ大きいほど、その国は老いているということになる(なお、かつて、例えば多くのアフリカ諸国のように乳幼児が多いため従属人口比率が多い、という時代があった)

2100年までの国連の人口推計(中位推計値)をみてみると、シンガポールが日本に近いことは意外ではないが、タイは日本に近いカーブを描くことになる。一方で、若さが続く国はインドネシアとフィリピンであり、中間的な国がマレーシアとベトナムである。

このほか、米国がなかなか老いないことも注目すべき点だ。米国が世界最大の経済規模かつテクノロジー大国となっても、人口という面からみれば、当面は経済的な超大国として立場を維持しそうであることも分かる。

日米中韓とASEAN主要6か国の
中央年齢

日米とASEAN主要6か国の従属年齢人口比の推移
(2022~2100年)

「The 2022 Revision of World Population Prospects 2022より筆者作成 」

*脱稿2023年6月28日

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。2023年4月より現職、対外情報発信やビジネスインテリジェンスの強化等に従事。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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