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【~連載~川端 隆史のアジア新機軸】 -第114回-[アジア×観光]完全復活目前、アジアからの日本インバウンド観光

元外交官 × エコノミスト 川端 隆史のアジア新機軸

東京の街を散策していると、明らかに外国人観光客が戻っていることが分かる。コロナ禍を経験して三年間の沈黙を打ち破るかのような賑わいが戻っている。去る3月31日に、日本政府は「観光立国推進基本計画」を発表した。

様々な注目点があるが、地方への観光客誘致と高付加価値化は特徴と言えるだろう。これまでも、一定程度は観察された傾向であるが、インバウンド観光の復活に向けて、新たな施策を開始するには絶好のタイミングだろう。では、どのぐらいインバウンドは回帰しているのだろうか。データで見てみたい。

日本政府観光局(JNTO)が発表した資料のうち、アジアに注目すると、2023年4月時点では、シンガポール、ベトナム、インドネシアがコロナ前の2019年比で100%を越えている。つまり、コロナ禍前の水準を完全に回復し、上回っている状況である。インドネシアは3月こそ、100%を若干下回ったが、2月は100%を上回った。3月はラマダン期間が影響して減った可能性が考えられる。

その他の国はまだコロナ禍前までは戻っていないものの、タイは100%に非常に近づいており、インドとマレーシアは約8割、タイも7割ほどまで回復している。東アジアも中国を除けば、韓国と香港は8割ほど、台湾は7割ほどまで戻してきている。完全復活までは、もう一歩だが、ほぼ回復という表現をしても差し支えないだろう。

2022年10月に、それまでの入国者5万の上限が撤廃されてからは、データが示すように回復カーブを描いてきた。コロナ禍の前までは、日本市場において未曾有とも言えるインバウンド観光ブームであった。これからはインバウンド2.0と言える状況を迎えるだろう。

冒頭に触れた「観光立国推進基本計画」で地方が挙げられている。再論するまでも無いが、日本の地方は人口減の傾向が続いており、空き家問題の深刻化もある。

筆者の視点からみると、日本の地方にはそれぞれの良さがある。コロナ前からもすでに見られた動きであるが、日本への観光客、特に、すでに定番の観光地を訪問済みのリピーターたちは、まだ見ぬ日本を求め、周囲の友人知人が行ったことのないところに行きたいという希望も強い。また、日本人自身が気付いていない価値も地方に沢山眠っているだろう。ここに日本の地方の潜在性があるかもしれない。

2022年5月〜2023年4月訪日外客推移(2019年同月⽐)

出所)JNTO発表資料より転載

※2019年7月以降、日韓情勢等により訪日韓国人旅行者数が減少傾向にあったため、2022年7月〜12月の2019年同月比を見る際に注意を要する。


*2023年6月6日脱稿

プロフィール

川端 隆史 かわばたたかし

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー/インテリジェンスユニット シニアマネージャー

外交官×エコノミストの経験を活かし、現地・現場主義にこだわった情報発信が特徴。主な研究テーマは東南アジアなど新興国マクロ政治経済、地政学、アジア財閥ビジネスの変容とグローバル化、イスラム経済、医療・ヘルスケア産業、スタートアップエコシステム、テロ対策・危機管理。

1999年に東京外国語大学東南アジア課程を卒業後、外務省で在マレーシア日本国大使館や国際情報統括官組織等に勤務し、東南アジア情勢の分析を中心に外交実務を担当。2010年、SMBC日興証券に転じ、金融経済調査部ASEAN担当シニアエコノミストとして国内外の機関投資家、事業会社への情報提供に従事。

2015年、ユーザベースグループのNewsPicks編集部に参画し、2016年からユーザベースのシンガポール拠点に出向、チーフアジアエコノミスト。2020年から2023年まで米国リスクコンサルティングファームのシンガポール支社Kroll Associates (S) Pte Ltdで地政学リスク評価、非財務・法務のビジネスデューデリジェンスを手がけた。2023年4月より現職、対外情報発信やビジネスインテリジェンスの強化等に従事。

共著書に「東南アジア文化事典」(2019年、丸善出版)、「ポスト・マハティール時代のマレーシア-政治と経済はどうかわったか」(2018年、アジア経済研究所)、「東南アジアのイスラーム」(2012年、東京外国語大学出版会)、「マハティール政権下のマレーシア-イスラーム先進国を目指した22年」(2006年、アジア経済研究所)。

栃木県足利市出身。NewsPicksプロピッカー、LinkedInトップボイス。
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