ChatGPTのビジネスシーンにおける活用方法
~【SPEEDA ASEAN主催】セミナーレポートをご紹介~
今や世界を揺り動かしているChatGPT。毎日著しく進化していくChatGPTをどのように業務や事業に活用していけばよいのか、疑問を持つことが多々あるでしょう。今回はSPEEDA ASEAN様主催のChatGPTセミナー開催レポートをご紹介。ChatGPTを実際に使用した感想やビジネスへ上手く活用する上でのコツ、制約、今後のルールについてお届けします。
ChatGPTの特徴
汎用性と利便性の高さ
ChatGPTの優れた点は、特定の領域だけでなく一般の人々が使えるツールとしてすでにさまざまな領域で利用されていることであり、ローンチから約1週間間に利用者は100万人を超え、2カ月で1億人突破と他のツールと比較しても驚異的なスピードで利用者数を伸ばしています。
関連するニュースは連日メディアでも取り上げられており、最近のニュースでも、ChatGPTで生成された論文が高評価を受けたことや、米国の医師資格問題で合格ラインの正答率を出したといった記事も見受けられるようになりました。
東京大学の松尾教授も、「これまでのほとんどのホワイトカラーの仕事に影響が出る可能性が高い」との見解を示しており、早速シンガポールや他の海外メディアでも、公務員や政府機関が、報告書やスピーチの作成にChatGPTを利用することに対して前向きな姿勢を見せていることが紹介されています。
APIの活用で利用範囲が拡大
現在、さまざまな企業でChatGPTのエクステンションツール開発が急ピッチで行われています。Glarity、MERLINのようなネット記事、Youtubeの要約サービスや、ChatGPT for googleのようにGoogle検索の同時遂行機能などのエクステンションが開発されています。
APIを使ったサービスは各社から多岐に登場しており、SPEEDAのニュース機能で”ChatGPT”に関連したニュースを検索すると、1日分のニュースを検索しただけでも、多くのプレスリリースが出てきます。
ChatGPTの活用方法
では実際にどのような方法でビジネスにChatGPTを取り入れることができるのでしょうか?
テキスト生成の領域においては、添削・校正、要約、ブレインストーミング、リサーチ・論点の洗い出し、アイディア出しといった利用事例が想定されており、その圧倒的な知識量(データ量・パラメーター数)と、コミュニケーション精度の高さから、過去の技術では実現できなかった高度な領域でも活躍が期待されています。
また、下記にご紹介するように、トレンドや社会の動向といったマーケティングに必要な情報収集においても、すでに活用され始めています。
登壇者の方々の活用事例
事業戦略の方向性を探る疑似ブレインストーミング
コワーキングスペースOne&Co SingaporeのGeneral Manager伊藤氏は、以前、戦略PR会社に勤務していたご経験も踏まえ、ブレインストーミングで活用する方法をご紹介いただきました。
そのひとつが、先入観にとらわれすぎず、「三方よし(買い手よし、売り手よし、世間よし)」な方向性を探るため、3人くらいの登場人物を設定し、彼らにブレインストーミングをしてもらう、という使い方です。
人物A|消費動向に詳しい専門家(買い手よし)
人物B|事業主・ブランドマネージャー(売り手よし)
人物C|世の中・社会の動向に詳しい者(世間よし)
各人物から意見を出してもらうため、それぞれの「キャラクター」や「議題」の設定、そして「(議題に対し)斬新なアイディアを、出来るだけ具体的に出してほしい」、「これまでに出たアイディアを組み合わせてほしい」といった指示をChatGPTに入力します。
・入力例
『大手日系企業の管理職者、コワーキングのマネージャー、ビジネス経済メディアの編集長の3人で、「日系企業が、シンガポールでイノベーション探索する際に必要な活動や取り組み、それに伴うワーキングスペースの活用方法を考えていきます。まず、それぞれの立場で考えられる斬新なアイディアを3つずつ、具体的に教えてください。』
すると、画面上にそれぞれの立場からの回答がずらずらと表示されるので、途中途中、キャラクター設定や議題を少しずつ調整しながら考えを深めつつ、新たな気づきやキーワードを得ているとのことでした。
特定分野の社会の理解度を把握
Toyo Seikan Groupの遠山氏は、事業開発の領域でChatGPTを活用しているとのことで、ChatGPTは、一般に出回っているSNSやウェブサイトの情報からデータを蓄積して文章化しているため、良い面と悪い面があると言います。
「自社にとっては新規開発領域であるものの既存の業界・市場」については、十分な情報の蓄積があるため学ぶのに有効ではあるが、変化の激しい新興産業では、一見正しい内容に見えても、不確かな情報や嘘が多く含まれた回答が返って来るという課題があるとのことです。
遠山氏が専門とする代替タンパク質・細胞性食品(いわゆる培養肉)の分野は、世界的にも販売承認されている企業が1社のみという状況でまだ市場が小さいため、世の中や消費者がその分野についてどれほど理解しているのか、何を間違えて理解しているのか、などの消費者の理解度を把握する調査として役立っているといいます。
情報収集からアウトプットまでのリサーチ業務
IGPIシンガポールの坂田氏からは、コンサルティング業の5つのフロー「①問いを立てる ②情報を収集する ③情報変換 ④アウトプット ⑤意思決定する」のうち、主にジュニアコンサルタントが担当している「②情報収集~④アウトプット」までは、今後AIがその役割を担う事ができるようになるだろうと予見しています。
その分、最初の「いかに正しい問い立てができるか」という、我々人間の「質問力」が重要になってくると言います。
文章のドラフト作成・アイディア出し作業
TMI Associates(Singapore)LLPで弁護士として勤務されている成本氏も、普段の業務のうち「型」がある文書や、レターのドラフトの作成などは活用の余地があるといいます。
また膨大な情報を素早く処理・整理するChatGPTでは、過去のデータをもとに、人間では気づくことができないような「想定されうるケースのアイディア出し」などに今後役立てられることに期待しているといいます。
ChatGPT現在のリサーチ精度と課題
UZABASEの内藤氏は、UZABASEが提供している業界分析・企業情報の収集において、現時点のChatGPTはどの程度有用なのかを説明しました。
日々リサーチ業務を行っているSPEEDA ASEANのアナリストチームが、実際にChatGPTに質問を投稿し、回答の正確さを検証したところ、まだまだ不正確な情報が本文中で見受けられることも多く、事実情報の収集や文章の執筆のために活用するのは難しいという結果になりました。
特にChatGPTが出すアウトプットには誤情報や出典が確認できない情報が非常に自然にまぎれこんでおり、正誤チェックに余計に時間がかかってしまうという問題点も上げられました。一方で、メンバーが集めてきた情報や文章をもとに、ChatGPTにその要約や整理を依頼する、キャッチ―なタイトル案を考えてもらう、といった点においては有効活用できそうとの検証結果でした。
このように、洞察や判断を必要とする分野においてはAIの知能はまだ未発達であり、人間が担当することが必要であると言えますが、今後、多様なビジネスシーンにおいてAIが役割を広げていくことが期待されています。
ChatGPT~今後の可能性~
冒頭で示したように、今回ChatGPTが圧倒的な速度で普及した背景として、自然な会話形式での回答が出てくること、情報の要約ができること、などが挙げられています。このユーザー体験の革命的な変化は、SPEEDAを含む既存のリサーチプラットフォーム事業者にも示唆を与えてくれています。
従来より、多くのオンサインサービスには、さまざまなチャットボットによるQ&A機能が組み込まれていましたが、ユーザーの満足度が高いものとは言い難い状況でした。
ChatGPTは、オンラインの膨大な情報を収集している結果なのか、リアルタイム性にかけているためなのか、正しくない情報がアウトプットされることが問題点になっています。
そのため、専門のコンテンツデータベースを持つ事業者が、正確性の保証された自社のコンテンツを出典ソースにして、自然な会話形式での情報提供や自社コンテンツの要約を提示することができれば、ユーザー体験が飛躍的に向上するものと思われます。
また、ChatGPTを活用した論点出しなどは、リサーチを始める準備段階で役に立つといえます。いずれにせよ、そう遠くない未来に、あらゆるリサーチツールが汎用的なAIモデルを組み込んでいくと思われます。
同じ理屈は、研究開発や特許が社内に蓄積された事業会社でのナレッジマネジメントにも応用できるかもしれません。いずれにせよ、蓄積されたナレッジを、生成AIを使って引き出すことができれば、より効率的な情報収集・企画立案ができるようになると言えそうです。
参考:SPEEDAと生成AIの使い分け
SPEEDAは、マーケットや企業リサーチに従事される皆様の情報収集に役立つ企業情報やマーケットレポートを格納したオンラインのプラットフォームです。
Private CompanyのFinancial DataやShareholder informationなどデータパートナーから提供された信用性の高いデータを集約しています。
閲覧できるレポートもニュースやデータを元に専門アナリストが執筆しており、ASEANを中心に市場のトレンドやマーケットの動向等のインサイトを数分間で収集できるようにまとめています。
企業情報やコンサルティングのためのマーケットリサーチにおいては、データの正確性が重要となり、SPEEDAはデータサプライヤーから信頼性の高いデータを集約・格納し、皆様のリサーチに併せてデータを管理・編集する事を実現する事を実現できるツールです。
一方、ここまで見たようにChatGPTは、事業開発の論点出しや市場規模を算定するためのアイディアをだしてくれます。それぞれの目的・使用用途に合わせて、SPEEDAとChatGPTをご活用ください。
SPEEDA | CHAT GPT | |
データソース | データパートナー(100社以上) | Website contents Open source dataset Reports, books, articles |
データの正確性 | 信頼できるリソースから提供されたデータのみを表示する。 | 大量のデータから自動生成された回答を表示しているため、情報の正確性には限界がある。 |
データの即時性 (リアルタイム性) | 日々のニュース情報がリアルタイムでプラットフォームに反映。 キーワードで検索可能 | 過去の蓄積されたデータから表示しているため、リアルタイムのデータはない。 (現時点では、GPT3.5もGPT4.0も2021年9月までのデータを利用) |
カバレッジ | SPEEDA上で取り扱っているトピックのみに対応 | データがある限り、さまざまな分野や問いに対応可能 |
データの提供方法 | 条件に合わせてフィルタや検索機能を用いて、リクエストに合わせた形でデータを表示する。 各種フォーマットでデータをダウンロード可能 | 対話方式で、質問への回答を文章にまとめて表示。 回答に対して、追加質問が可能。表形式のアウトプットにも対応している。 |
活用方法 | データに正確性が求められる リサーチのための情報収集に活用可能 | 要約などのテキスト生成・マーケティング・ブレインストーミングなどのアイディア出しに利用可能 |
ChatGPTを取り入れ事業進化を目指す
本セミナーではChatGPTを実際に使用し、ビジネスへの活用方法とChatGPTが持つ可能性についてご紹介しました。利用事例として、経済情報プラットホームであるSPEEDAとChatGPTを掛け合わせましたが、使用目的や用途に合わせて活用していくことがよいでしょう。今後も著しく進化していくChatGPTを追っていく必要があります。
UZABASE Asia Pacific Pte. Ltd.
ユーザベースは、2008年に日本で創業、2013年にシンガポール拠点を設立。ソーシャル経済メディアのNewsPicksや経済情報サービスのSPEEDAを運営し、東南アジア地域の日系企業、ローカル企業、外資系多国籍企業に向けて、SPEEDAのプラットフォームと個別ニーズに合わせたカスタマイズド調査サービスを提供しています。
「経済情報の力で誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」という目的をかかげ、9つの事業やサービスを展開中。数分で競合分析を可能にする経済情報プラットフォーム「SPEEDA」は自社で経済情報プラットフォームを持っていない企業のニーズに応えられることが強みです。
主な事業は下記の通りです。
・企業・業界情報プラットフォームの「SPEEDA」
・受注しやすい顧客がわかる営業DXソリューション「FORCAS」
・日本国内最大級のスタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」
・ソーシャル経済ニュースの「NewsPicks」
・企業変⾰を推進するコンサルティング・ソリューションカンパニー「Alpha Drive」
・エキスパートネットワークプラットフォーム「MIMIR」
・グローバル市場に特化した新興業界分析プラットフォーム「SPEEDA Edge」
・サブスクリプションビジネスに特化したベンチャーキャピタル「UB VENTURES」
・多種多様な経済情報の取得・整理を目的としたジョイントベンチャー「UB Datatech」
上記のようにコアアセットである経済情報(データ・コンテンツ・人の知見)の共同活用により、アジャイル経営の実現をサポートするSaaS、国内最大規模の経済ニュースメディアなど、複数の事業・サービスを展開しています。
現在では海外4カ国にオフィスがありSPEEDAの拠点にもなっています。
【企業情報】
Uzabase Asia Pacific Pte. Ltd
住所:Twenty Anson #11-01, 20 Anson Rd, S079912
最寄り駅: Tanjong Pagar駅
お問い合わせ:spasia_sales@uzabase.com
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