HOME最新記事シンガポールの医療費は企業負担?従業員の医療費・医療保険などを徹底解説

シンガポールの医療費は企業負担?従業員の医療費・医療保険などを徹底解説

シンガポールでは、雇用法で守られるすべてのローカル・外国人従業員に対して、雇用主の医療費負担義務があります。エンプロイメントパス(EP)保持者については、就労ビザの取得や発行に伴う保険加入の義務はないものの、ワークパーミット(WP)またはSパス保持者の場合は医療保険への加入が雇用主に義務づけられており、保険がない限り就労ビザの発行はできません。また先日、対象者への医療保険は今後段階的に強化されることが発表されています。

そこで今回は、シンガポールの雇用法に基づき、従業員の医療費について改めてご紹介するとともに、今年7月以降に段階的な強化が予定されているSパスおよびWP保持者への医療保険について詳しくご紹介します。

そもそもシンガポール雇用法とは?対象者の条件

シンガポールの雇用法(Employment Act)は1968年に制定された、雇用に関わるすべての事柄を網羅した法律です。その内容はシンガポールにおける労働基準や給与の支払い、そして解雇や労使間の権利義務など多岐に渡ります。

基本的には雇用主との雇用契約に基づくすべての従業員が対象ですが、例外として、休日や労働時間、その他の勤務条件についてを規定する第4項のみ、管理者および担当者レベルは対象外となります。対象範囲は外国人従業員ももちろん含まれており、雇用形態は正社員(フルタイム)に限らず、パートタイム、契約社員を網羅しています。

また、外国人従業員の場合は、別途外国人労働者雇用法(FMA)もカバーされます。船員や移民家事労働者、公務員等など一部対象外となる職種もありますが、基本的には雇用関係にあるすべての労働者がシンガポール雇用法によって守られています。

雇用主が医療費の負担義務を負う内容と条件について

それでは実際に、どのような場合に雇用主は医療費の負担義務を負うのでしょうか。企業または雇用主は、以下の条件を満たしている場合、従業員の医療費(診察料)の負担義務が発生します。

1.従業員が雇用開始から3カ月以上働いている場合 
2.従業員が1日以上の有給病気休暇(Medical Leave)を取得した場合
3.従業員が公的機関*の医師もしくは会社が指定した医療機関からMC(Medical Certificate)を発行された場合

なお、負担義務の対象は診察料(Consultation Fee)のみとなり、薬代やその他の処置費は含まれません。気をつけなければいけない点は、企業は診察料の支払い上限を定めてはならず、基本的に上記条件を満たす場合は全額企業負担であるということです。

*シンガポールの公的医療機関リストは以下の通りです。

・Admiralty Medical Centre
・Alexandra Hospital
・Ang Mo Kio – Thye Hua Kwan Hospital
・Bright Vision Hospital
・Changi General Hospital
・Institute of Mental Health/ Woodbridge Hospital
・Jurong Community Hospital
・Jurong Medical Centre
・KK Women’s and Children’s Hospital
・Khoo Teck Puat Hospital
・National Cancer Centre
・National Centre for Infectious Diseases
・National Dental Centre
・National Heart Centre
・National Neuroscience Institute
・National Skin Centre
・National University Hospital
・Ng Teng Fong General Hospital
・NHG Eye Institute
・Ren Ci Community Hospital
・Sengkang Community Hospital
・Sengkang General Hospital
・Singapore General Hospital
・Singapore National Eye Centre
・St. Andrew’s Community Hospital
・St. Luke’s Hospital
・Tan Tock Seng Hospital
・Yishun Community Hospital
・All polyclinics under NHG or Singhealth
・All polyclinics under the National University Health System

医療費の負担義務対象外の例

なお、以下に該当する場合は、企業に支払い義務がなく、医療費として従業員への払い戻しは対象外となります。

1.従業員が祝日、年次休暇、休息日、休業日に病気になった場合
2.従業員の美容処置のための医療診察

1に関しては、有給病気休暇に該当しないため、休みの間に罹った病気の受診料は対象外となります。2は、その診察が美容上の検査や処置を行うためのものであるかどうかの判断が必要です。医療費の負担義務は、あくまで健康上に関わるものだけにかかるため、対象外となります。

一方で、例外とされている条件でも、企業によっては全社員への医療保険加入やパネルドクターの配置、海外旅行保険付与などでカバーされているケースがよく見られます。

また福利厚生の一部として、美容上の診察および処置に関してもカバーされている企業もあり、これらは会社のポリシーによって異なります。

医療保険について現状のおさらい

それでは、実際の医療保険について現状はどのようになっているでしょうか。そもそも2023年7月以前は、SパスおよびWP枠で外国人を採用する際、企業は1年間に最低S$15,000まで保証可能な医療保険への加入義務がありました。これが今年7月以降、年間S$60,000までに変更されました。

医療保険でカバーされる対象は、日帰り手術や入院治療、業務上関係のないケガなども含まれます。就労ビザ発行時に保険の詳細をオンライン上で入力する項目があり、保険適用日付は発行日以前でなければなりません。

また、その保険料負担を従業員へ転嫁することは認められていません。DP保持者のWP就労の場合、もし既存の加入保険があり、かつその保険が必要条件を満たしている場合は、雇用主が追加で保険を購入する必要はありません。(ビザ発行の際に既存の保険詳細の入力が必要です。)

2023年7月開始の医療保険の強化とは

それではここからは今年7月に発表されたアップデートについてご説明します。冒頭で述べた通り、シンガポール人材省(MOM)はすべての新規および既存のSパス、およびWP労働許可保持者(移民家事労働者を含む)に対する医療保険の強化を2023年7月1日より実施しております。その背景には、以前の補償限度額(年間S$15,000)を超える医療費請が約5%以上も発生しており、雇用主を財政的負担に追い詰めている可能性があるということが挙げられています。今回の対応は、医療費の上昇に伴い、その割合が増加することを予測しての打開策となります。

具体的な今後の対応と導入スケジュールは以下の通りです。

開始日付(新規・更新共に適用)変更内容
2023年7月1日
(ステージ1)
年間請求限度額をS$60,000までとし、雇用主および保険会社向けの一部負担金の導入
2025年7月1日
(ステージ2)
・保険適用外事項の標準化
・年齢別保険料の導入(50歳未満、以上)
・請求内容に応じて、保険会社が病院へ直接払い戻しを行う

ステージ1のS$60,000の内、S$15,000を超える請求金額の負担割合については、75%が保険会社、25%が雇用主となります。現状、新制度に対して対応が可能な保険会社のリストはこちらから確認できます。また、DP保持者でWP就労の場合は現状と同じく、必要最低限の保険プランを満たしている場合は新規で加入の必要はありません。

自己負担契約について

最後に自己負担契約についてご説明します。

雇用主の医療保険への加入は必須となりますが、以下のすべてが満たされている場合のみ、WP保持者(移民家事労働者を含む)との医療費自己負担契約を結ぶことが可能です。

・自己負担額が合理的、かつ労働者の固定月額給与の10%を超えない場合
・自己負担期間が6カ月を超えない場合 (雇用2年毎)
・自己負担のオプションが雇用契約または労働契約に明示されており、労働者の完全な同意を得ている場合

なお、これらはあくまでも保証限度額を超えた場合の少額かつ短期的な医療費のみとなり、基本的には雇用主側に支払い義務がありますのでご留意ください。

詳細については、MOMのサイトをご確認ください。

最後に

今回はシンガポールの雇用法に基づく従業員の医療保険について、そして2023年7月から適用された、SパスおよびWP保持者向けの医療保険の変更についてご紹介しました。

今年7月から適用されている新措置は、政府の意向として外国人労働者を最大限守ること、また雇用主の突発的な財政負担を減らすことを目的としているそうです。

加入済みの保険、または新規で外国人雇用をお考えの際には、保険内容の見直しをする良い機会かと思いますので、今一度ご確認いただければと思います。

医療費の上昇によるコストを防ぐため、また従業員が安心して働ける環境を提供するためにも、医療費に対する制度構築が重要な鍵となるかもしれません。

ご不明な点や、人材採用やビザ申請に関してお困りの際には、リーラコーエンシンガポールまでお気軽にご連絡くださいませ。

リーラコーエン シンガポールについて

Reeracoenは、シンガポールを筆頭にアジア7カ国と地域12拠点で人材紹介サービスを展開をする日系の人材サービス会社です。

シンガポールでビジネスを展開している企業への人材紹介、シンガポールへの転職を考えている方への支援を行っています。専門スキルを持ったローカル人材、ローカル日本語スピーカー、現地採用の日本人の紹介に強みを持っています。

また、ビザ代行などのビジネス支援やエグゼクティブサーチ・人事コンサルティングを手掛け、経験豊富なコンサルタントが二人三脚でサポートを行っています。

直近では、経営やマーケティング、人事など各分野、業界における専門性の高い情報を求める企業に対し最適な人材を紹介し、直接相談ができる場を設けるエキスパートソリューションサービス「Brainsight(ブレインサイト)」を開始。ほかにも、韓国企業様と韓国語スピーカーの方とのマッチングを行う専門チームが発足し、ますますサービスの幅を広げています。

シンガポールでの人材採用・ビジネス支援にご興味をお持ちの方は、是非お気軽にご相談くださいませ。また、最新人材マーケット情報や生活に関する最新情報をブログInstagramにてお届けしています。こちらもお見逃しなく!

Reeracoen Singapore(リーラコーエン シンガポール)
EA Registration No:12C5051
住所:3 Anson Rd, #08-03 Springleaf Tower S079909
最寄り駅:Tanjong Pagar駅
営業時間:月~金 9:00-18:00
電話番号:6557 0135
WEBサイト

関連記事】
シンガポールのEPビザ取得~新ポイント制度「COMPASS」最新情報を解説(2023年9月から導入予定)~
シンガポールで新卒人材を採用するメリット~シンガポールの初任給推移もご紹介~

シンガポールのビジネス情報や最新記事、セミナー情報をLINE・YouTubeでお届けしています!
ぜひお友だち追加・チャンネル登録をお願い致します。

チェックしたサービス0件を
まとめて請求 まとめて問い合わせ