【~連載~FINANCIAL PLANNING シンガポールでおトクに賢く生きる】
第301回 富裕層が資産を次世代に上手に引き継ぐ方法

日本の大学院で「ファミリービジネスとファミリーオフィス」について学びましたが、特に印象的だったのが自分のファミリーアセットをどう守り、次世代へつないでいくかというテーマでした。
ファミリーアセットというと「お金」だけを思い浮かべがちですが、教育・健康・人脈・評判などもすべて立派な資産です。ファミリーオフィスではこうした非金融資産も含め、家族全体の資産を守る視点が重要になります。
■「当てる」より「整える」
来年どの資産が一番上がるか――これはプロの投資家でも当てるのが難しい課題です。だからこそ重要なのが、長期的にバランスを取ることです。株式、債券、不動産、現金などを組み合わせてリスクとリターンのバランスを最適化するのがアセットアロケーションの基本です。
ここで登場するのが、ハリー・マーコウィッツの「効率的フロンティア(Efficient Frontier)」です。これは縦軸に期待リターン、横軸にリスク(標準偏差)をとったリスク・リターン平面上で、
| ◆同じリスク水準で最も高いリターンを得る ◆同じリターン水準で最も低いリスクを実現する |
という最適なポートフォリオを線で結んだものです。
特徴として、曲線上のポートフォリオは効率的で、目標とするリターンを最小のリスクで達成できます。一方、曲線の下にあるポートフォリオは効率的とは言えず、同じリスクでより高いリターンを得られる曲線上のポートフォリオが存在します。
この考え方を応用すれば、投資家は自身の投資目標やリスク許容度に応じて、曲線上のどのポートフォリオを選ぶかを戦略的に決定できるのです。
■「リスク許容度」
アセットアロケーションを考える上で欠かせないのが、自分(または家族)がどのくらい資産の減少に耐えられるかを示す「リスク許容度」です。例えば、総資産が1,000万円あり、最悪の状況で400万円までの減少を許容できる場合、リスク許容度は40%となります。
通常、この許容範囲内で株式のような変動の大きい資産に投資し、残りは債券や現金などでリスクを抑えます。さらに、リスクを標準偏差で捉えることで、「2標準偏差までの下落を想定」してリスク許容度を設定することも可能です。
2標準偏差は、価格変動の約95%の範囲をカバーする目安です。これを基準に資産配分を決定することで、短期的な大きな下落にも耐えうる、無理のないポートフォリオを設計できます。
具体的なポートフォリオ例(リスク許容度40%、2標準偏差想定):
| * 株式(国内外):40% * 債券(国内外):30% * 不動産・オルタナティブ:20% * 現金:10% |
この配分であれば、最悪のシナリオでも40%までの下落に耐えつつ、効率的フロンティア上でリターンの最大化を目指すことが可能です。もちろん家族の価値観やライフステージに応じて調整が必要です。
株式、債券、金はそれぞれ値動きの仕組みや収益源が異なるため、アセットアロケーションを考える際には特性を理解することが重要です。
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プロフィール
花輪陽子

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。
「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演や講演経験も多数。 http://yokohanawa.com/
| Website Twitter:@yokohanawa |
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