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第285回 シンガポールはアジア1位 世界で健全な年金制度と評価されている国ランキング

【~連載~FINANCIAL PLANNING シンガポールでおトクに賢く生きる】
第285回 シンガポールはアジア1位 世界で健全な年金制度と評価されている国ランキング

日本では政府の年金制度改革法案が5月20日の衆院本会議で審議入りしました。短時間労働者に対する厚生年金の適用を拡大することなどが盛り込まれました。立憲民主党が指摘していますが、将来の国民年金を底上げするため、厚生年金の積立金を活用するなどはこれから議論されそうです。就職氷河期世代の低年金問題の改善策となるこの施作は、措置の発動は5年後以降になりそうです。

国民が安心できる年金制度とはなんでしょうか。世界の年金制度と日本の年金制度とを比較してみましょう。マーサー 「グローバル年金指数ランキング」(2024年度)によると、首位にオランダ、2位にアイスランド、3位はデンマーク、アジアではシンガポールが最も高く5位、日本は36位でした。十分性、持続性、健全性のサブ・インデックスの加重平均値を用いてランキング付けされています。

アジアで首位のシンガポールでは、賦課方式(その年度に必要な給付費をその年度の保険料収入で賄う仕組み)ではなく、積立方式です。自分の将来の年金を現役時代に強制天引きして老後に備えます。政府が高い利回りで運用をしてくれています。アプリで積立額を確認できるなど、透明性が高いのです。ただ、現役時代の強制積み立ての割合が高めです。55歳未満だと、労使折半で報酬の37%を強制積立します。年収800万円だとざっくりと300万円程度です。

日本では厚生年金保険料の上限額引き上げをめぐってネット上でも議論になっていますが、シンガポールでは上限額がどんどん引き上げられている傾向があります。皆が国の年金制度を信頼しているので、この制度で積み立てればそれ以外は使い切ってしまって貯金をしなくてもいいと思っている方が多く、消費にお金が回りやすいというメリットはあります。また、住宅、医療などのアカウントもあり、国民は住宅を外国人と比べると安価で取得することができるので、それは日本も見習うべきなのではないかと感じます。

また、積立方式だと、自分が積み立てた分しか受け取れないために金額を大きくすることは難しいです。専業主婦などで働いていなくて積み立てていない方は十分な年金を受け取ることもできません。それでもシンガポールは4-6%前後で運用をして将来のお金を増やしてくれるので、長期で積み立てれば資産は2倍以上に増えることが一般的です。

老後の安心を取るか、今の生活を取るか、悩ましいところですが、両方の制度のメリットデメリットがありそうです。

プロフィール

花輪陽子

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。
「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演や講演経験も多数。 http://yokohanawa.com/

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Twitter:@yokohanawa
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