【~連載~FINANCIAL PLANNING シンガポールでおトクに賢く生きる】
第274回 どうなる高額療養費制度 変わる日本の制度設計

日本では目まぐるしく制度設計が変わろうとしています。今回はシンガポール在住の方にも関係のある高額療養費制度についてお伝えします。
医療費が高額になった際に患者の負担を軽減するための高額療養費制度ですが、月ごとの限度を、2025年8月に所得区分ごとに2.7~15%引き上げる方向性です。更に26年8月と27年8月にも区分を原則3分割して上げる予定です。細分化後は年収770万円の方の場合、月ごとの限度額は現行の約8万円から約5万8,500円増の約13万8,600円となる可能性があります。高齢化で増え続ける社会保険料を削減して子ども子育て未来戦略に基づく財源確保策に充てるようです。
怪我や病気などになると、働けなくなり収入が減る上に医療費がかかります。ガンなどで闘病が長期に渡る方もいらっしゃいますし、扶養している配偶者が長期の治療が必要で、養育する子供も複数いる場合もあるでしょう。
先程の年収770万円の場合、月ごとの限度額は現行の約8万円から段階的に上がり、約13万8,600円となるものの、多数該当する場合(過去12か月以内に3 回以上、上限額に達した場合は、4回目から上限額が下がる)は月7万6.800円の負担です。
私がFPになった2010年頃は日本の公的医療保険は世界一で、病気になっても自己負担限度額は1割程度と言っていた時代もありました。しかし、現在は「払える方に負担してもらおう」というスタンスに変わってきています。収入区分によって負担割合が大きく変わるために収入が高い現役世代の負担が大きくなります。
他方で、住民税非課税世帯の中にもファイヤーをして金融資産で回して生活をしている方なども一部ですが含まれています。家庭の事情によっては「がん保険」等でリスクに備えることを検討してもよいかもしれません。公的医療保険や貯蓄で不足する部分は私的保険の活用が考えられるからです。
ところが、石破茂首相は4日の衆院予算委員会で、医療費が高額になった場合に患者負担を抑える「高額療養費制度」を巡り、負担上限額を引き上げる政府方針を再考する意向を示しました。
細分化後は月の負担限度額が年収によっては数万円の負担増という、いきなり負担が大きく増えるプランだったために心配をしていましたが、再度検討される可能性がありそうです。
日本の制度設計の変化に関しましてはYahoo!JAPANニュース等で発信しています。シンガポールにいながらキャッチアップしたい方や帰国予定のある方は是非ご覧ください。
プロフィール
花輪陽子

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。
「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演や講演経験も多数。 http://yokohanawa.com/
Website Twitter:@yokohanawa |
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