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【連載 人事のプロに聞くシンガポールの採用動向】第1回 シンガポールのビザ取得を取り巻く実例〜金融業界編〜

2020年から、シンガポールの専門職・管理職・経営者を対象としたEP(Employment Pass)ビザについて、3回ほど内容が更新されています。2020年に1回、そして2022年に2回ありましたが、大きな変化は最低給与の金額の上昇となっています。

そんな中一部の業界では、最低給与を満たしているのにリジェクションが起こるなど、実際に申請してみてさまざまなケースがみられます。

そんな昨今のビザ申請事情について、リクルートエージェントのRGF様にお話をお聞きしました。

近年最低給与が上昇している背景

シンガポールでは、現在外国人労働者が約26%となっておりますが、この割合を減らしていくことでローカルの就業機会を増やしていこうと言うのが政府の動きです。

そういった動きの中、「外国人は本当に必要なスキルをもつハイクラスの人材(=高所得者)のみを雇用していく」と言うのが、最低給与が上がっている背景となります。

日系企業の採用現場への影響

2023年年9月以降、EPビザの申請に必要な月額の給与が$5,000に上がります。3年前と比べると月給で$2,300、年間にすると約270万円上がった計算になります。これは、シンガポールのローカライズの政策に加えて、昨今世界中で起こっている物価高に合わせて企業側も賃金アップしていることからなっています。

2022年2月において、過去30年間の日本の平均賃金の上昇率は4.4%にとどまり、40%を超えているアメリカやイギリスとの差は大きくなっています。

つまり世界と比べると、日本の給与の割安感が目立っている状況なのです。日本の賃金が上がらないということもあり、日本では年収700〜800万円に対してシンガポールでの同業種をみると年収900万円~1,000万円でないとビザがおりない状態になっており、日本の賃金とシンガポールでの賃金で大きく差が出ているのです。

シンガポール企業に転職したいが、上記の最低給与の上昇によって、これが叶わない人が増加し、転職できる人の総数が減っているという事実もあります。

このように過去3年の間に3回のEPビザに関する条件が変わってきている中、最低給与の基準を満たしているにもかかわらず、申請を却下されるというケースが出てきています。

今回はシンガポールでポピュラーな業界の1つである、金融業界についてケーススタディを紹介します。

EP申請に対しての近年のケース

現在シンガポールの金融業界でのスペシャリストの場合、最低月額給与は$8~9,000と言われています。1つ事例をあげましょう。日本人30代後半の方が、$8,000台でEPを申請して1週間ほどで却下されました。その後$500あげて、また却下、最終的に3回目の申請では$9,000後半となり、当初と比べると$1,000以上高い月給申請でEPを取得できました。

金融業界でのEP申請で却下されるケースが近年の傾向になります。その方は金融畑の人で専門性が高く、新卒から日本で16〜7年ほど金融業界で働いてきた方でした。キャリア的には問題がなかったのですが、結局給与部分が原因となり、最終的に月給を$1,000以上あげることでEP取得ができました。

給与が高くなることで、仕事の成績をあげなくては、というプレッシャーはかかりますが、本人にとっては月給が上がるので嬉しい話となりました。その方はキャリアとしては申し分なく今回の却下された理由として、申請した会社の外国人比率が高かったことも関係しているのかもしれません。国にとっても税収を増やすため、なるべく高い給料を出してほしいという背景もあります。

もう1つの事例ですが、40代前半の方で、会社はプライベートバンクの専門職、$9,000~$10,000近くの月給にあげて2回目のEPの申請で通りました。金融業界に関しては却下の際に理由が明示されない場合が多く、明確な回答は得られないのですが、EPの審査はどれだけ国に貢献できるスキルを持っているか、その企業の外国人比率で判断されているようです。

ただEP申請に対して、1、2回却下されたから印象が悪くなるということはありません。金融業界ですと、一人当たりが生み出す利益も大きいので、$300〜$500ずつと大きく刻んで上乗せして再申請する企業が多いようです。どうしてもEPの金額を出すのが難しい場合は、最低賃金がより低いSpassで申請するという選択肢もあります。

※Spass:中技能熟練労働者のビザであり、金融セクターの最低給与は$3,500。

金融業界においてEP申請が却下される理由とは

シンガポールは、そもそもアジアの金融のハブとして栄えてきたことを、ご存知の方も多いかと思います。歴史的にトレーダーなどの専門職としての欧米人や、日本人を含めた、アジアの外国人が多かったのも事実です。

現在のシンガポールの外国人の比率は約26%、ここ数年のシンガポリアンコアの動きから、外国人の比率を下げようとしている傾向があります。金融系は歴史的に外国人が多い業界だったため、前述のシンガポリアンコアを背景として外国人比率を下げようとする傾向が強い業界と予想されます。

次回はまた新たなトピックで人事実例をお届けします。どうぞご期待ください。

監修:RGF Talent Solutions Singapore Pte. Ltd

RGF Talent Solutions Singapore は 2010 年に設立され、多国籍企業、日系企業、ローカル企業に選ばれる人材会社に成長しました。 シンガポールでは、2 つのブランド(RGF Professional Recruitment、RGF HR Agent)を展開しており、いずれも企業様の採用に関するソリューションを提供しています。

弊社ではそれぞれの業界ごとに担当コンサルタントがおります。例えばIT業界であればIT企業で、金融業界であれば金融系企業で勤務経験があるコンサルタントなど、それぞれの業界を熟知したコンサルタントを取り揃えております。そのため、求職者様のご経験にマッチングする求人のご紹介が可能です。

<企業情報>
RGF Talent Solutions Singapore Pte. Ltd.
(アール ジー エフ タレント ソリューションズ シンガポール)
住所: 120 Robinson Road #14-01 Singapore 068913
最寄り駅:Down Town駅、Tanjong Pagar駅、Telok Ayer駅
電話番号:6398 3260
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