HOME特集シンガポールの経理DX戦略と成功への道
~グローバルマーケットの人件費高騰と人材不足対策~

シンガポールの経理DX戦略と成功への道
~グローバルマーケットの人件費高騰と人材不足対策~

海外の複数の国・地域に事業展開を進める日系企業が増える中、大きな課題となるのが現地のバックオフィス運用。企業が「安定して運営を続けるために必要な部門」でありながら、昨今の世界的な物価の高騰などの影響を受け、組織運用の課題に直面している企業様も多いのではないでしょうか。

今回は株式会社マルチブック 代表取締役の渡部氏に、実際に直面しやすい管理部門の課題や事例、DX戦略による適切な体制づくりについてお話しいただきました。

海外拠点におけるバックオフィスの課題

シンガポールをはじめASEAN諸国には多くの日系企業が進出しており、今後もグローバル展開が加速すると見込まれています。それに伴い、企業の抱えるバックオフィス運用についても、悩みが膨大となる傾向にあります。海外子会社・支社または新たにASEANに進出を予定・検討している企業の経理・人事・労務の管理者など、「人材不足」や「人件費高騰」などの課題に頭を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

シンガポールでは就労ビザの改定により駐在員が減り、専門知識の少ない社員がバックオフィスを兼務するケースも多々あるようです。また、当地の離職率の高さや文化の相違から、バックオフィス業務に詳しいローカル人材の確保が非常に難しい面があり、適任者が不在のために各国の法務や税務に関しての業務が滞ることも。このような「人材不足」や「人件費の高騰」を起因として、情報漏洩や法律違反などといった大変なトラブルが発生することもあります。

この状況を打開すべく、最近ビジネスの現場やメディアで耳にすることの多いDXという観点から、特に経理業務領域でのDX(以下、経理DX)について渡部氏にお話しいただきました。

経理業務の世界的動向とアジア圏の現状

渡部氏によると、企業の経理業務BPO(ビジネスプロセスアウトソーシングサービス)領域に関する業務のマーケットの大きさは2030年に向けて約15兆円ととても大きな市場になると言われ、アジア・パシフィックの領域では約4,500億円ほどが見込まれています。このアウトソーシングサービスのマーケット規模の差は欧米企業が財務会計領域を積極的に外に出してコアとなる業務にリソースを投下する特徴があることを指摘します。

欧米企業は、経理業務領域のアウトソーシングがかなり活発とのことですが、一方でアジア企業は、この経理業務領域のアウトソーシングという仕組みを活用しきれていないというのが現状で、この点における差がマーケットの差と続けます。しかしこれも現在の人不足等を背景にした問題から変えていかざるを得ない状況であり、今後この市場規模は日本を含むアジア諸国が欧米にならった経営改革を進めていくことでもっと拡大すると予測しています。

そもそもDXとは

今回、課題解決の一歩として導入をご提案する「DX」とは、デジタル トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略のこと。経済産業省がその定義をしており、時代変化の中でも持続的な企業価値の向上を図っていくためには以下のようなことが必要だとしています。

① IT システムとビジネスを一体的に捉え、新たな価値創造に向けた戦略を描いていくこと

② デジタルの力を、効率化・省力化を目指したITによる既存ビジネスの改善にとどまらず、新たな収益につながる既存ビジネスの付加価値向上や新規デジタルビジネスの創出に振り向けること

③ ビジネスの持続性確保のため、IT システムについて技術的負債となることを防ぎ、計画的なパフォーマンス向上を図っていくこと

④ 必要な変革を行うため、IT 部門、DX 部門、事業部門、経営企画部門など組織横断的に取り組むことが重要である
出典:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0

 

経理DXの導入とポイント

経済産業省が定義するDXはシンプルなものですが、現状ではグローバルマーケットの「人材不足」と「人件費高騰」が障害となり、このプロセス改革・企業変革に苦労されている企業も多いのではないでしょうか。

そこで「まず、経理業務においてもスマイルカーブを意識して、中間工程部分の悩みを解決していきましょう」と渡部氏。経理業務の中間工程とは、いわゆる会計処理や決算業務などを指し、日本の企業や経理職の方々は、ここに時間と圧倒的な人手をかけ過ぎているので、この中間工程ポイントにDXを導入することで「人材不足」や「人件費高騰」といった企業の課題を解決できるのでは、というお話をいただきました。

「経理のDXという観点からいうと、中間工程と言われている経理業務をまるっと投げるという、一つのトレンドが日本企業にも来ているのかなと思います」と、渡部氏は分析します。DXを成功させたければ、細かな業務系SaaSなどをバラバラ導入して1時間、2時間の効率性という観点ではなく、中間工程のパートをアウトソーシングできないかという道を考えてみると、経理DXというのが加速して行くんじゃないかなと思いますし、そうすることで負荷が下がりコストも下がっていくのではないでしょうか、とお話しいただきました。

経理DXの導入事例

実際の経理DXの導入事例として、渡部氏率いる株式会社マルチブックが提供する経理のBPOサービスをご紹介します。マルチブックではクラウド上の国別テンプレートを活用して、大企業から中小企業まで、簡単に導入できるグローバルERP(Enterprise Resource Planning)を提供しています。

マルチブックのサービス導入によるDXのポイントとなるのは、①現地法人の経理組織を丸ごと代行できる ②日本本社と各海外拠点を繋ぐ統合経理業務ができる、という点です。

例えば、日本本社では海外の経理業務に精通しておらず、現地法人との経理事務や会計事務所や経理スタッフとの意思疎通に苦労している、あるいはガバナンス強化のため記帳代行では期待する水準の経営管理ができていないというような状況はないでしょうか。このような時にマルチブックの提供するBPOサービスの「海外クラウド経理部」を活用し、日本本社と海外現地法人を繋ぐという形で経理業務をマルチブックへアウトソーシングすると、海外拠点の責任者は販売や製造業務に集中できたり、アカウンティングやファイナンスといった管理会計部門の部分へ貴重な人材を割くことができるようになります。

人手と時間が必要な経理業務処理をマルチブックへアウトソーシングすることで結果的に人材不足を補うことができ、日本と現地法人で共通のプラットフォームを使用することでガバナンス強化にも繋がります。

人事編)人材争奪戦に勝つための人事DX

経理業務にDXを取り入れることで人材不足を補うように、人事面でも、グローバルにトレンドとなっているDX。社会的な背景としてグローバル全体でデジタル化が進んでいることもあり、クラウドを活用する、あるいはリモートテクノロジーを活用するのが当たり前になっている、とお話しいただいたのはDeel Japanの中島氏。

Deelは各国の法律・税制・通貨の違いを吸収し国境を超えたチームメンバーの雇用を容易に実現し、契約から給与の支払いまで一元的に管理するプラットフォームを提供しています。

世界的にデジタル化が進んでいく中、テクノロジーをいち早く海外展開や経営に活かしていく会社や国がどんどん増えている一方で、生産性の格差が顕著になってきて、テクノロジーを活用しきれていない会社・国というのが多いのかな、と中島氏は話します。

デジタル化進行に合わせてデジタル人材、高度人材といわれているようなエンジニアが不足し(2030年までに8,520万人のIT人材が不足と言われている)、グローバルレベルで人材を奪い合って給与が高騰しているという状況であるそう。DXという観点では、海外拠点の設立における人材確保、その先の給与計算や税金申告・労務管理などをアウトソーシングすることで、最低限のコストで海外人材を活用することも可能です、とアドバイスをいただきました。

ゲスト:株式会社マルチブック様のご紹介

株式会社マルチブック
代表取締役 / CEO 渡部 学

半導体商社株式会社マクニカにて経理・コーポレートIT等の責任者を経て、海外の買収先のPMIに従事。その後アジアパシフィックのコントローラーを担う。帰国後は独シーメンスのグループ企業においてCFOとしてグローバル企業のリーダー職に従事。

2019年、株式会社マルチブックにCFOとして参画しM&Aによる資金調達をリード。2021年CEO就任。20年以上のファイナンス分野での経験から、買収企業の制度/システム統合、グローバル資本再編による税務、クロスボーダーのオペレーションを得意とする。

DX戦略で、バックオフィス課題に挑む

海外の複数の国・地域で事業展開を進める日系企業が増える中、大きな課題となるのが現地のバックオフィス運用。日本と海外拠点での国境を越えたさまざまな課題を解決するため、いまトレンドとなっているのがDXです。このDXを業務に導入し、課題を解決、さらに企業の発展へ。株式会社マルチブックではクラウド上の国別テンプレートを活用して、大企業から中小企業まで、簡単に導入できるグローバルERP(Enterprise Resource Planning)を提供しています。バックオフィス運用においてお困りごとがあればぜひお問い合わせください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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