【~連載~FINANCIAL PLANNING シンガポールでおトクに賢く生きる】
第280回 関税ショックは大転換の序章に過ぎない?ジム・ロジャーズ氏が今おすすめする資産は

2025年4月2日にトランプ大統領が相互関税を発表して以来、世界のマーケットは彼の発言に一喜一憂し、連日大混乱に陥っています。
トランプ世界同時株安 NISA投資家はどう行動する?「世界の大転換期に注意すべきアセットアロケーション ヘッジファンドマネージャーとFPが語る」
9日午前0時1分にトランプ米政権は相互関税の第2弾を発動し、対抗姿勢を強める中国に対して高税率をかけました。中国もこれに対抗をして完全に貿易戦争となっています。米国は他の国に対しては90日間適用をストップすると表明しています。
世界経済に占める米国経済の割合が25%、中国と合わせると4割を超えます。このまま貿易戦争が長期化すれば、日本も含めた他国も間接的な影響を受けることが予想されます。
「低迷している覇権国と活気に溢れている覇権国が衝突する際には、戦争を免れなかったケースが歴史的に幾度となくあった。(中略)国の情勢が悪化すれば、外国人が責任を負わされ、銃撃戦の戦争が勃発しがちだ。」ジム・ロジャーズ『大転換の時代』(プレジデント社)
現在は昔のように銃撃戦ではなく、経済という新しい形での戦争が始まってしまっています。株式市場は各国市場で全面安、安全と言われる米国債に関してもいったん買われていましたが、一転して売られる局面がありました。長期金利の指標の10年物米国債利回りは、先週末には一時3.9%を下回りましたが、流れが一転して一時4.4%と急上昇し、リスクオフ局面では予想しなかった現象が起きました。これはなぜでしょう?
海外勢の米国債保有額のうち、日本に次いで第2位の中国が米国債を売却しているという憶測やヘッジファンドのトレジャリー ベーシス取引(国債の現物と先物との価格差に着目した裁定取引の一種)の解消による無差別な売りも一因となった可能性があると言われています。このベーシス取引の規模は現在、US$5,000億からUS$1兆と推定されています。
商品市場は景気後退懸念から原油などは安くなっており、安全資産の金はいったん売られたものの買い戻される局面も見られました。ハイテクやビットコインなどトランプ銘柄は大きく下げ、その後、戻しました。
関税の影響などを考慮して、日本政府は国民に現金5万円を給付することを検討するということです。今回は金融危機ではなく、トランプ大統領の政策によるマーケットの混乱です。トランプ大統領の支持率は下がっており、各地でデモも起きているものの、依然として43%と半数以上の米国民が支持しています。しかし、中間選挙で大敗すれば、法案などは成立しにくくなるために、今後の支持率の推移には注目されます。
世界三大投資家のジム・ロジャーズ氏は「関税は常にインフレにつながる」と断言しています。また、アメリカが中国に対して高関税をかけたところで中国は他の貿易相手を見つけるだけだと常日頃から言っています。
プロフィール
花輪陽子

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。
「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演や講演経験も多数。 http://yokohanawa.com/
Website Twitter:@yokohanawa |
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