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シンガポール チャンギ空港のAI活用8選~完全無人の出入国審査・生体認証・AI搭載の保安検査など~

シンガポールのチャンギ空港は、世界的に高い評価を受けている空港として知られています。近年、チャンギ空港では空港業務に最先端技術を導入することで、あらゆるプロセスが自動化され、出入国と搭乗がスムーズに行えるようになっています。ここでは、AIや自動化技術を活用したその革新的なシステムについて、ビジネスマンの視点から詳しく紹介します。

シンガポール チャンギ空港のシステム自動化事情

シンガポールのチャンギ空港(Changi Airport)では、人工知能(AI)や機械学習(ML)、CTスキャン、バイオメトリクス(生体認証)などを使った最新システムを導入するという画期的な試みが行われています。特に第3ターミナルと第4ターミナルでは、限りなく実際の運用に近い形でその試みが進められており、その効率性と利便性の高さには驚かされます。また、今後2年以内に第5ターミナルの開発も始まる見込みです。

あらゆる変革が進むなかで搭乗ゲート、セキュリティチェック、入国審査などがどのように変わっていくのか、空港施設 や駐機場(エプロン)にはどのように最新技術が取り入れられているのか大変興味深いですね。現在のチャンギ空港のシステム自動化事情について、公式での発表を基に紹介していきます。

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自動チェックインシステム

チャンギ空港の第4ターミナルでは、自動チェックインシステムが導入されています。入国時に通る自動入国ゲート(Automated Boarding Gate-AIG)と、出発時に通る自動搭乗ゲート(Automated Boarding Gate-ABG)があり、パスポートと生体認証などを利用した安全かつ迅速なチェックインができるようになっています。

🔶AIG
生体認証技術を使用してパスポートと搭乗券からデータを取得し、次の入国審査で本人確認を行います。この入国審査は指紋認証で通過できますが、空港到着時にシンガポール入国管理局(ICA)で指紋を登録しておけば、出国時に自動搭乗ゲートを一度だけ利用することができます。

上記の事前登録をしたシンガポール国民、シンガポール永住者、長期ビザ保持者、旅行者がこのシステムを利用できます。第1ターミナルから第4ターミナルでAIGが使用可能です。

ご利用方法:
1.パスポートをスキャナーに挿入(帽子やメガネなどは外す)
2.案内が表示されたらパスポートを取り出す
3.搭乗券をスキャナーでスキャンする
4.ゲートのレーンに入る
5.親指をスキャナーに置く
6.レーンを通過して退出する

注意)
6歳未満の子どもや車いすの方など、サポートが必要な方はセキュリティスタッフが常駐する入国審査カウンターにお進みください。

🔶ABG
シンガポール出国予定時刻の24時間以内にAIGを利用した場合、出発時にABGを利用することができます。 ABGは、第4ターミナルの全ゲートに備え付けられています。

ご利用方法:
1.搭乗券をスキャナーにかざす
2.写真を撮影する
3.レーンを通過して退出する

チャンギ空港当局によると、こうした一連のシステム導入による業務効率化によって、他の自動化していない空港に比べて、将来的に職員の数を相当数抑えられる見込みです。

完全無人の出入国審査

第4ターミナルでは、完全無人の出入国審査も実現されています。生体認証技術を駆使したシステムで、パスポート・虹彩・指紋を認証すれば、ゲートが開くという画期的な仕組みになっています。

出典:ICA

チャンギ空港にて到着・出発する旅行者(6歳以上)は、国際民間航空機関(ICAO)準拠のパスポートを所持していれば、誰でもこの自動ゲートを利用できるようになりました。手続きなしで自動ゲートを利用するには、シンガポールのチェックポイントでの入国審査において、自動入国審査イニシアチブ(ACI)の要件を満たす必要があります。

自動ゲートご利用のための要件はコチラから、ACIの要件や対象国の確認についてはICAのコチラからご確認ください。

パスポートなしの入国審査

ICAのデジタル政策によって、2024年8月からパスポートなしの入国審査が段階的に実施されるようになりました。パスポート不要のシステム導入によって便利で迅速な入国が可能になります。シンガポール在住者と要件を満たす旅行者が対象で、空港と海路ではトークンレス(生体情報使用)を、陸路ではQRコードをパスポート代わりとして利用できるようになります。

ICAによると、これまで約150万人の旅行者がこのシステムを利用し、1人あたりの平均通過時間が25秒から10秒(60%)まで短縮されたとのことです。

入国前はSGアライバルカードが必須

シンガポールに入国するには、事前に到着日を含めた3日以内にSGアライバルカード(SGAC)の提出が義務付けられています。これは全ての旅行者が対象で、記入と提出はオンラインで可能です。WEB版とアプリの両方がありますので、入国前にどちらか一方で提出を済ませておきましょう。

🔶WEB版:ICAの公式サイト
🔶アプリ:

AIを搭載した保安検査

出典:Changi Journeys

チャンギ空港では、AIを活用した保安検査システムの試験が進行中です。このシステムは、CTスキャンを用いて綿密な2D・3D画像を生成し、手荷物検査時間を最大50%短縮することを目指しています。

試験段階とはいえ、ML機能も導入しており、さまざまなケースのデータを蓄積させることによって、検査の速度と精度の向上にも努めています。第3ターミナルでは機内持ち込み禁止品目を自動で検出するシステムAPIDSを導入しており、AIとMLのアルゴリズムを駆使することで、荷物のスクリーニング精度を高めています。

特筆すべきは、CTスキャンで生成される3D画像によって荷物を多角的に調べることができるため、従来の検査のようにノートパソコンなどの電子機器をカバンから取り出す必要がなくなったことでしょう。

現在の使用は限定的なものの、いずれは空港全体にAPIDSを適用させることも検討中の模様です。

空港内カート管理システム

チャンギ空港では、自動カート管理システム(ATMS)が導入されています。従来ではカートの在庫の確認、適切な配置などが全て人力によるものでしたが、この管理システムが導入されてからは、空港のフライトデータシステムに接続されているiPadを通じてリアルタイムでカートの在庫状況を把握できるようになり、各フライトデータに基づいて、効率的かつ適切にカートを配置できるようになりました。

昨年、3つのターミナルに段階的に導入された後、労働時間が25%削減され、顧客の利便性も大いに向上しています。

国際航空ラボの設置

チャンギ空港では、航空機や乗客、手荷物を効率的に取り扱う技術の開発を通して、世界中の空港運営の革新的なソリューションを実現するため、国際航空ラボの設置が計画されています。

これはチャンギ空港グループ(CAG)のほか、シンガポール民間航空局(CAAS)、国際航空イノベーションセンター(ICAI)、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)などの名だたる機関と共同で行う初のプロジェクトとなります。これにより、航空技術の研究開発が進められ、空港の競争力がさらに高まることが期待されています。

技術開発に最新テクノロジーを有効に活用することで、各業務プロセスの自動化や搭乗ブリッジのリモートコントロール、航空機の自動プッシュバックなどが実現し、空港業界にイノベーションを巻き起こすとみられます。

ボーディングブリッジの自動装着

チャンギ空港では、航空機とターミナルビルを接続する可動式の通路、パッセンジャー ボーディング ブリッジ(PBB)の自動装着システムも搭載されています。

このシステムが導入されたことによって操作が簡易的になっただけでなく、遠隔での同時操作もできるようになったため、航空機到着時における属人化の解消と工数の低減に役立っています。AI搭載によってドアの形状や模様などを画像認識で判別でき、航空機ドアまでほぼ誤差なく自動で到達できるという驚異的な進展ぶりです。

第5ターミナルの建設

2025年に、チャンギ空港第5ターミナルの建設が開始される予定です。この新しいターミナルはCAG、ICA、シンガポール運輸省(MOT)が三位一体で手がけるプロジェクトで、2030年半ばまでにチャンギ空港の大幅な航空路線増加と飛行場の運用効率向上、顧客の利便性アップなどを目指すものです。

完成すればチャンギ空港の規模は今よりさらに大きなものになり、現在の年間旅客収容数が9,000万人から5,000万人増えて、1億4,000万人に達すると予想されています。他のターミナルと接続されることで、新規建造物や流通の拡大を伴うため、新たな雇用の創出も期待できます。

世界空港ランキング上位

チャンギ空港は、世界空港ランキングで常に上位に位置しています。その理由は、先進的な技術を活用した効率的な運営と、顧客体験の向上にあります。

英国ロンドンの航空サービスリサーチ会社スカイトラックス(Skytrax)によると、チャンギ空港は2024年の「ワールド・ベスト・エアポート(世界最高の空港)」部門で第2位にランクインしました。特に、自動化技術やAIの導入は世界中の有識者やユーザーから高評価を得ています。

次回の国際空港評価「ワールド エアポート アワード2025」は今年の4月に発表予定です。第5ターミナルの建設やさまざまな研究開発が一層進むチャンギ空港が、今回どこまで評価されるか期待が高まります。

進化し続けるチャンギ空港

チャンギ空港は、常に進化し続けています。上記に挙げた以外にも3本の滑走路システム建設、貨物センターのスマート化などが計画されており、そこで構築された多様なネットワークを駆使して収容能力や貨物の処理時間短縮をさらに進めていくでしょう。

もちろん生産性や効率性だけではなく、顧客満足度に重点を置いている点も世界的な高評価の一因です。新しい技術の導入やインフラの拡充、カスタマーファースト精神の強化により、将来も世界トップクラスの空港としての地位を維持することが期待されています。

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シンガポールはIT業界全体の成長が著しく、AIの進歩やデジタル化の進展により、エンジニアの需要が高まっています。航空業界も例外ではなく、むしろ空港運営のイノベーションを起こすうえで航空関連のITエンジニアの需要は今後増加する可能性が高いといえるでしょう。

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シンガポールのチャンギ空港で近未来的体験を

シンガポールのチャンギ空港は、最先端テクノロジーを活用して、効率性と顧客体験を向上させ続けています。ビジネスマンにとって、チャンギ空港はアジア太平洋のビジネス拠点として注目されていますが、スマートな出入国と各施設での利便性向上などを通じて、チャンギ空港はさらに成長を続けるでしょう。今後チャンギ空港をご利用になられるときは、ぜひその近未来的な雰囲気を堪能してみてください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


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