AI世界ランキングTOP50〜AI世界ランキングでシンガポールは何位?~【最新】

AI技術の急速な発展に伴い、各国のAI能力を評価する指標として注目を集めているのが「グローバルAIインデックス」(Global AI Index)です。本記事では、最新の2024年版ランキングを基に、シンガポールを中心とした各国のAI競争力を分析し、今後のグローバルAI市場の展望を探ります。
AI世界ランキングとは?
世界各国のAI競争力を評価するランキングに「グローバルAIインデックス」(Global AI Index)があります。このインデックスは、英国のメディア企業Tortoise Mediaが毎年発表しているもので、AIへの投資に力を入れている83か国のさまざまな状況を理解しようという意図で作成されたものです。
今回で5回目となる2024年版ランキングでは、各国におけるAI分野の能力を「実装」「イノベーション」「投資」の3つの尺度で評価し、さらに細分化された指標を用いて総合的なスコアを算出しています。
評価の対象となる指標は以下の7つが挙げられます。これらの多角的な評価により、各国のAI競争力を包括的に分析することが可能となっています。
実装 ▪ AI人材の可用性(Talent) ▪ インフラの信頼性や整備状況(Infrastructure) ▪ AIの成長と発展を支えるための基盤となる運用環境(Operating Environment) イノベーション ▪ 研究開発の成果(Research & Development) 投資 ▪ 政府のAIに関する戦略と投資額(Government Strategy) ▪ 民間のAI関連イニシアティブと投資額など(Commercial) |
AI世界ランキングTOP50
2024年9月19日に公開されたグローバルAIインデックスのTOP50を見ると、AI技術の最前線に立つ国々の顔ぶれが浮かび上がってきます。
各国のAI分野がどれほど進歩しているのかを総合的に表すスコアを基にランク付けされており、1位は米国で、2位は中国が続きます。3位にはシンガポールがランクインし、アジアの中でも特に高い評価を得ています。以下、英国、フランス、韓国、ドイツ、カナダ、イスラエル、インド…と続きます。
ランク | 国 | スコア |
1 | 米国 | 100.00 |
2 | 中国 | 53.88 |
3 | シンガポール | 32.33 |
4 | 英国 | 29.85 |
5 | フランス | 28.09 |
6 | 韓国 | 27.26 |
7 | ドイツ | 26.65 |
8 | カナダ | 26.39 |
9 | イスラエル | 25.52 |
10 | インド | 23.82 |
11 | 日本 | 20.31 |
12 | スイス | 20.12 |
13 | オランダ | 19.98 |
14 | サウジアラビア | 19.91 |
15 | フィンランド | 19.25 |
16 | 香港 | 18.72 |
17 | オーストラリア | 18.50 |
18 | スペイン | 17.74 |
19 | ルクセンブルク | 17.28 |
20 | アラブ首長国連邦 | 16.99 |
21 | 台湾 | 16.39 |
22 | デンマーク | 15.92 |
23 | アイルランド | 15.88 |
24 | イタリア | 15.81 |
25 | スウェーデン | 15.61 |
26 | ノルウェー | 15.54 |
27 | ベルギー | 13.50 |
28 | オーストリア | 13.30 |
29 | ポルトガル | 12.63 |
30 | ブラジル | 12.40 |
31 | ロシア | 12.07 |
32 | エストニア | 11.74 |
33 | マルタ | 11.70 |
34 | トルコ | 11.39 |
35 | チェコ | 11.22 |
36 | ポーランド | 11.09 |
37 | スロベニア | 10.79 |
38 | チリ | 10.68 |
39 | マレーシア | 9.86 |
40 | アイスランド | 9.61 |
41 | ハンガリー | 9.54 |
42 | ギリシャ | 9.24 |
43 | タイ | 9.04 |
44 | クロアチア | 8.95 |
45 | メキシコ | 8.77 |
46 | リトアニア | 8.76 |
47 | アルゼンチン | 8.73 |
48 | ニュージーランド | 8.71 |
49 | インドネシア | 8.61 |
50 | ルーマニア | 8.32 |
日本は11位にランクインしており、アジアの中では中国、シンガポール、韓国に次ぐ位置につけています。
AI世界ランキングを分析

AI能力が高いとされる上位ランクの国々はどのような取り組みをしているのか、テーブルやデータから読み取れる情報を基に分析していきます。
シンガポール
シンガポールは、昨年と変わらず3位にとどまっており、米中に次ぐAIリーディング国と評価されています。2021年の時点で6位と上位だったものの、その後大きな飛躍を遂げて2023年に3位にまで急上昇しました。特に評価項目のInfrastructureが突出して高く、デジタルインフラの整備が進んでいることが伺い知れます。
特筆すべきは、シンガポールのAI人材育成への注力です。国家AI戦略2.0の一環として、AI教育プログラムの拡充や海外人材の誘致に力を入れています。また、AI Singapore(AISG)というプログラムを通じて、官民一体のAI研究開発を推進しており、実用的なAIソリューションの創出に成功しています。
さらに、シンガポールは「スマートネーション」構想の下、AIを活用した都市インフラの最適化や公共サービスの効率化にも取り組んでおり、これらの総合的な施策がランキング上昇につながったと考えられます。
アメリカ
アメリカは引き続き1位の座を維持しており、 3つの尺度すべてで1位となっています。特に「投資」分野のCommercialで他国を大きく引き離していますが、これは民間主導による積極的な商用投資で新興企業が活発化したことが理由であるとみられます。シリコンバレーを中心とした強力なテクノロジー企業群と、世界トップクラスの研究機関の存在が、アメリカのAI競争力の源泉となっています。
なかでもGoogleやMicrosoft、OpenAIなどの企業が開発する最先端のAIモデルは、世界のAI技術の方向性を左右する影響力を持っています。2位の中国と比べても、スコアで100対53と大きな差をつけており、その存在感は圧倒的です。
中国
中国は前回と変わらず2位を維持し、ほぼすべての分野で高いスコアを記録しています。中国政府の「次世代AI発展計画」に基づく戦略的な投資と、巨大なデータ資源を活用したAI技術の実用化が、中国の強みとなっています。
AI研究への積極投資と盛んなテクノロジーエコシステムによって生み出された顔認識技術や自然言語処理など、特定の分野では世界をリードする技術力を有しており、ディープラーニングの拡張によってAIの社会実装においても先進的な取り組みを見せています。一方で、中国は2030年までに世界一のAI大国となることを目指しているものの、国際的な技術協力や人材交流の面では課題も指摘されています。
日本
日本は11位にランクインしており、前回の12位からワンランクアップしました。日本の強みは「実装」分野にあり、製造業を中心としたAI技術の産業応用で高い評価を得ています。なかでもトヨタ、東芝、キャノン各社はAI特許出願数で世界上位にあり、積極的にAI導入を進めているのは特筆すべき点でしょう。Infrastructureの半導体項目が高く評価されているのも、これまでの経緯で納得の行く話です。
一方で、「イノベーション」と「投資」の分野では他の先進国に後れを取っている状況です。特に、AI人材の育成や海外からの人材誘致、政府の積極的投資、スタートアップへの投資環境の整備などが課題として挙げられています。
イギリス
イギリスは4位にランクインし、ヨーロッパでトップの評価を得ています。ロンドンを中心としたAIスタートアップエコシステムの活況や、DeepMindに代表される世界的なAI企業の存在が、イギリスの競争力を支えています。また、政府のAI戦略「AI Sector Deal」に基づく積極的な投資や、倫理的AIの開発に向けた取り組みも高く評価されています。
フランス
フランスは前回の13位から5位に急上昇しました。オープンソースのLLM開発やAI研究の質の高さがその理由とされています。パリを中心に、AI研究所の設立や国際的な研究者の誘致に力を入れており、基礎研究から応用研究まで幅広い分野でAI技術の発展に貢献しています。
ドイツ
ドイツは7位にランクインしています。前回の8位からワンランクアップしており、イスラエルとカナダを抜いています。全体的に評価対象の3柱を満遍なく実施している様子ですが、「実装」のTalent項目のDevelopers scoreが英国とフランスを抜いており、AI開発における人材力が欧州の中でも高いことがうかがえます。
ドイツは2023年に「AIアクションプラン2023」を立ち上げ、大学や各科学研究機関と連携してAI発展に必要な分野に投資しており、今後もさらにその動きを加速させる見込みです。かの有名なDeepL翻訳のサービスを提供しているDeepL SEもドイツのケルンに本社を置いています。
韓国
韓国は前回の7位から6位に上昇し、アジアでは中国、シンガポールに次ぐ高評価を得ています。韓国政府の「AI国家戦略」に基づく積極的な投資と、サムスンやLGなどの大手企業によるAI技術の実用化が、韓国の競争力を支えています。
特に、半導体技術とAIの融合や、5G技術を活用したAIサービスの展開など、韓国の強みを活かした独自のAI戦略が功を奏しています。ガバナンス体制やリスクマネジメントの強化、AIの信頼基盤造成、専門の人材育成など、必要な対策を包括的に実施しているところも高ポイントでしょう。「実装」分野がアジアのなかでも秀でていることからもそれが見て取れます。
インド
インドは10位にランクインし、急速な成長を見せています。豊富なIT人材と、政府の「Digital India」イニシアチブによるデジタル化の推進によって世界に誇れるAIエコシステムが出来上がりつつあり、インドのAI競争力向上の原動力となっています。
特に、AIを活用したソフトウェア開発やITサービスの分野で強みを発揮しており、グローバル企業のAI開発拠点としての役割も果たしています。
AI世界ランキングから見える未来

グローバルAIインデックス2024年版の分析から、AI技術の発展が適切な評価対象の基で進んでいることが浮き彫りになりました。各国がAI技術の開発と実装に力を入れる中、シンガポールの躍進は特筆すべき成果といえるでしょう。
今後のAI技術の発展においては、各国の強みを活かしつつ、国際的な協力体制を構築することが重要になるでしょう。技術開発の競争にとどまらず、AIの社会実装と倫理的な利用についての国際的な対話と協力が、今後ますます重要になっていくはずです。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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